123. F の脱出
心臓に悪い。タイラ様は、あの叫びぐせを治して頂かないと、こちらの身が持たない。とはいえ、滅びたとはいえ、王族の真名を知ってるとは……。
受け継がれる名があるとは聞いたことがあるが、それを知っているのは本当に極一部の者。側近であるオヤジ殿等は知っているだろうが、余程の事がない限り、真名があること事態墓場まで持っていく極秘事項。だからこそ執事の協力を得られたのかも知れないが、我々も真名を聞いてしまった。いいのだろうか……?
王家の末裔が生き延びていることを知り、号泣していた執事だが、一通り話終えるとサッと表情を戻し、少々お待ちを。と言って出ていった。
執事が用意してくれたお茶を頂きながら、今後の話をしていると、ふくよかで分厚いレンズのメガネをかけたメイドが入ってきた。ハナと申しますと自己紹介をすると、メイド服の中から袋を取り出した。
「着替えです。夜中、お迎えに上がります。晩餐の後休むふりをして、着替えてお待ち下さい。」
小声で我々に伝えると、リベルを晩餐用の着替えに連れていった。預かった着替えは黒く、シンプルな物で動きやすそうだ。
しばらく時間を潰し、晩餐用に用意された貴族服を着てテーブルに着く。出会った時から思っていたが、この母娘、鼻がおかしいのではないかと思う程、香水臭い。お陰で食事を味わうどころではない。今夜もなんだかんだと話しかけてくるが、適応に返事をしてやり過ごした。
夜、言われた通りに着替えてからベッドで待つ。タイラ様とノリアスは別部屋だが大丈夫だろうかと心配していたら、床下からノックの音がする。驚いて部屋の端によれば床板がパコッと外れ、メガネを外し、愛嬌のある顔をした、メイドのハナが顔を出した。
「お待たせしました。狭いですがここから出て頂きます。」
そう言ったハナの手には大きな爪が。どうやらモグラの半獣のようだ。お礼をいい、床下の通路に降りる。中は結構広いが、直立出来る程高さは無い。なので中腰でハルの後を追う。
いい加減腰が痛くなってきた所でリベル達と合流出来た。
「ここからはこの者が案内致します。」
紹介されたのはノリアスと大きさがそう変わらない、大きなモグラだった。
「会話は出来ませんが、言葉は分かりますので。それで、どちらに向かいますか?」
「西へ向かうために港に行きたい。グッドル領に1番近い出口に案内してもらえるか?」
モグラとハルが同時に頷く。タイラ様がその様子を見てモグラの頭を撫でながら賢いねぇ! とニコニコしている。が、獣人にそれはタブーなのだ。タイラ様に後で色々と言って聞かせなければ……
モグラとハナの機嫌を若干損ねたようだが、取りあえず時間がない。申し訳ないと謝って案内を頼む。モグラはヒミズと言う名で、ハナの弟なんだそうだ。
「どうかよろしくお願い致します。後、これは執事からです。」
と、ペンダントを預かった。そのままヒズミに付いて歩く。結構な距離を移動した所で、地下の更に地下から、地下に上がる。それと同時に案内役が変わった。ヒズミに礼をいい、今度はノームの元貴族の末裔の案内で馬車で移動。車内で用意された軽食を食べ、少し休む。そして、また次の協力者へと、日が差さない地下空洞では何日たったかは分からないが、最後は徒歩で、岩の裂け目のような所に案内された。
「我々が案内できるのはここまでです。ここを登れば、ウリーボ領の西の端の方、少し進んで頂ければすぐ戌の領地に入れる筈です。ここを出たら、月に向かい直進して下さい街道に着くはずです。」
お礼をいい、ノリアスから順に登り始める。
「他国の……全く関係の無いあなた方に頼むことではないのでしょうが、どうか……どうか本物の王家の末裔をよろしくお願い致します!」
そう言って見送られ、岩の隙間から地上に出た。すると、正面に綺麗な満月が目に飛び込んできた。まず、オヤジ殿とセスに現状報告をするため、言俐を飛ばす。
「すぐ戌の領地って言ってたけど、どの辺りかしら……」
「名前は分からないけど、あっちに村か町があるみたい。」
右手で前方左を指差し、足元を見ながらリベルの問いにタイラ様が答える。そんなことまで分かるとは驚きだが、出会った時に迷子だった事を考えると、その話が本当かどうか若干不安である。
宛もないので、まっすぐ月に向かって歩き、街道に出てから左に向かった。タイラ様が言うように小さな村がある。ヤシノという村のようだ。
村に入り宿を探すが、大きな街に挟まれた村らしく、めったに旅人が寄らないらしい。なので宿がないと言う。仕方なく、時間と場所を確認し、しばらく先にあると言う大きな街に向かった。
夜通し歩き、日が登り始めた頃街に付いた。昼夜関係なく、移動と睡眠を繰り返していたが、、時間が分かるようになると一晩歩いたと言う事実だけで体の疲れが倍増したように感じる。
宿を探し、部屋を取るも2人部屋が2部屋空いているのみだと言う。結構大きな宿だが、そこまで人が居るとは何かあるのだろうか……。疑問に思うも、まずは体を休ませようと、俺とリベル、タイラ様とノリアスでそれぞれ部屋に別れて休んだ。
宿の者に頼んで昼に起こしてもらい、昼食をとる。その時に聞いた話によれば、西の国に魔王レベルの魔物が現れると言う情報があり、西への玄関口である港街の方から、内陸へ人が移動しているのだそう。
明日には、中央からも対魔物部隊の人獣部隊が何隊か派遣されるらしい。
「西にそんな噂があって、船は出るの?」
ノリアスが宿の者に聞く。そうか、船が出ていない可能性を考えていなかった……宿の者が言うには、ノリアスの言うとおり、民間での船は出ていないそう。行くならば、商隊の船に頼むか、騎士隊に頼むかしか無いらしい。
どちらにしろ、金を出せば乗れるという訳ではないので、港に向かおうと直ぐ様移動を開始する。
中央の騎士隊の人獣部隊と言えば、辰のドラド様が総隊長だったはず。無理を承知で頼んでみるか……と先を急いだ。
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