122. S と王さま
ジーマさんに話を伝えた後、ディアン様やカナル団長などを交え、食事をとりながら今後の話をする。
「先ほど、私の弟のフィルソンから言俐が来たのですが、子族の領の地下に地底国があるそうです。多分地底人達の国かと……」
「あぁ、ならば奥さんと娘さんはそちらに向かったのかも!」
嬉しそうにマリア嬢が言う。
「えぇ、多分。ただ、何かトラブルがあったらしく、弟達は西に向かうと言っておりました。タイミングがタイミングだけに、トラブルがなんなのか一度調べた方が良いかもしれません。それと……ディアン様の心配事も解決しましたし、我々は当初の目的通り、丑領の奴隷狩りの調査に向かおうと思います。」
「そうだよ! イチカ探さなきゃ!!」
思い出したようにファジールが叫ぶと、なんだなんだとカナル団長らが話を聞いてきた。ちょうど良いので、団長にもイチカの捜索を内密に依頼する。嬉しいことに、ディアン様だけでなく、カナル団長も快く引き受けてくれた。
そのまま明日からの予定を話し合い、各々与えられた部屋に戻りベッドに入ると、疲れていたからかあっという間に眠りに落ちた。
◇◇◇◇
鼻がムズムズする。思わず手で鼻を擦ると指先に柔らかい毛が当たった。ゆっくりと目を開ければ、鼻の上に茶色い毛玉が乗っかっていた。
「ダン、おはよう。起こしてくれたのか?」
小さな体をつまみ上げ、起き上がって腹の上にのせれば、クイクイと扉の方へ腕を伸ばしている。
「セレネス様、お目覚めになりました?」
遠慮がちにマリア嬢が声をかけてきた。起きたことを伝えると、夕べ、プロデューサー神様からご神託があったと聞かされた。驚いたことに、昨日会ったばかりのジーマさんとその奥さんの話をされたそうだ。
「えぇ? って事は、ジーマさんは地底人達の国の王様になる方だと仰られたのですか? うーーん、でも、今は護衛もつけずに表に出て、捕らえられて怪我までしてる。次期王になるような方であるなら、あり得ないことです。なぜこんなことになっているのでしょう?? ハッ!! これがフィル達が言っていたトラブルでしょうか?」
「あぁ!! そうかもしれませんね!」
「神は他に何か仰ってませんでしたか? 」
「確か、奥さまは末裔と証明出来る短剣を持っていて、ノームの国に居る執事さんに合えば王族だと分かる筈だと仰ってました。」
「それは、あくまで末裔である奥さまが一緒に居る場合の話ですよね……やはり奥さまの行き先が分からないと……。」
「取りあえず、ジーマさんにご神託の話をしてみたらいかがでしょう? 地底国に行くにしても、ご本人の意思もありますし。」
そういうわけで、カナル団長にジーマさんと話す許可をもらい、ジーマさん用の朝食と我々の分の朝食を、ジーマさんの部屋に運んでもらった。
「おはようございます。朝から失礼します。」
ジーマさんは既に起きていて、ボンヤリ窓の外を見ていたようだ。顔色は昨日よりだいぶ良くなっている。
私とマリア嬢、ジーマさんで朝食をとりながら体調の話をした後、本題に入る。
「昨日はお会いになってませんよね? 彼女は勇者マリア嬢です。」
ジーマさんは勇者……と小さく呟き、改めて自己紹介をした。
「私はジーマと申します。あるお屋敷で庭師として使えていたのですが、夫人のご不興を買ってしまい、夫婦共々お屋敷からおいとまさせて頂きました。あの人買いには、港町を出てすぐに捕まってしまいまして……」
「何処に向かう予定だったのですか?」
「丑のスタイン領まで……お気づきかと思いますが、私はノームです。ノームは魔法があまり得意では無いのですが、私は土魔法だけはちょっとしたものでして……旦那様が丑の首領様に話をしてくださいまして、農家を紹介したくださったので、そちらに身を寄せるつもりでした。」
「え、えーと……地底国へ向かっていたのでは?」
「地底国? は随分昔の……大戦の頃に滅びたと聞いていますが……。」
どうやら何も知らないらしい。本当にこの人が神が言っていたジーマさんなのか? 別のジーマさんってことは無いのか? マリア嬢も少し不安になったのか、
「1つ確認をさせて下さい。奥さまが短剣を持っているのを御存じですか?」
「! なぜそれを!? 妻が見つかったのですか? それとも、短剣が見つかったのですか??」
あ、やはり持っているんだ……
「失礼ですが、どういった短剣ですか?」
「……私も一度しか見たことがないのですが、確か鞘の表にエメラルド、裏にルビーなどの宝石がちりばめられていた物だったと……剣としては使い勝手が悪そうだと思ったのを覚えています。」
マリア嬢が私を見て頷く。どうやら神託のあったジーマで間違い無いらしい。私は深呼吸をしてから神託について話した。すると、ジーマさんは物凄く驚いて話し始めた。
「私も結婚してから知ったのですが、妻は滅びた地底国マッカナーの王族の末裔で、代々ある方が保護していたそうです。
妻の一族は居候は申し訳ないと、何代か前からメイドやフットマンとして仕えていたそうなのですが、この度、旦那様が留守の間に、奥さまの不興を買ってしまい、私が罰を受けました。
それを知った旦那様が酷くお怒りになられて、奥さまとは離縁。私には術師の治療と多額の慰謝料を下さいました。屋敷にいると嫌な事を思い出すだろうからと、新たな仕事場まで紹介して下さって……」
だいぶいいようにとっているが、旦那様の行動は保身に走ったとしか思えない……
「ただ、旦那様がお帰りになるまで、奥さまが私の治療を許さず、屋敷では手当てが出来なかったので、もぐりの医者に見せようと、妻がお金の工面のために短剣を売りに出してしまったそうなんです。なので先程短剣の話を聞いて、見つかったのかと……」
なんと!! 末裔の証明の短剣が無いだと!? はぁ。頭が痛くなってきた……。まあ、ここでごちゃごちゃ考えても始まらない。今出来ることはフィルに詳しく話を聞くこと位か……。
神託についてはマリア嬢に任せ、私は言俐を飛ばす為にファジールの部屋に向かった。
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