121. K と嵐
……あーーーー、イライラする!! 辰の領土にあるカメレオン洞窟に来たのはいいが、未属の攻略者、ディアンのミニゲームにかなり苦戦中。
なぜなら、俺の一番嫌いなリズムゲーム。いや、今は音ゲーと言うのか? なんにせよ、リズムに合わせて指示通りにコントローラーのボタンを押すものだ。
いつだったか、歓送迎会の2次会会場に向かう途中で、ゲームセンターの入り口付近にあった太鼓を叩くゲームを同僚達とワイワイ騒いでやったことがある。皮の張られた面と、縁を叩くだけなのだが、『かんたん』でギリギリクリア、『ふつう』で惨敗、と散々な結果に終わった。
そう、おれはリズム感が無いらしい……しかも! 太鼓と違い、押さなければならないボタンが幾つもある。画面の右上にライフゲージを表すハートが5つ並んでいるが、失敗しても減らない上に、画面がミニゲームから変わらない所を見るとクリアするまで先へは絶対進めないのだろう。
「はぁー、いまのゲームはスゴいねぇ。いやいや、で、お兄ちゃんはどう? 進んだ?」
イチカの主治医だったウザさMAXの荻先生が、今までのゲームの詳細を聞き終わったのか、後ろに立ち話しかけてくる。
「今はミニゲームに苦戦してます。」
「ミニゲーム? ……あぁ、リス追っかけたりなんだりするやつか!! あれちょっと面白そうだよな! やってみたいぞ!!」
子供か! 先生は目を輝かせながら俺のとなりに椅子を引きずってきた。仕方なくコントローラーを渡し、簡単に説明する。と、
「オーケー、オーケー。やってみるのが1番!! 何回も出来るんだよね?」
「いやぁ、確か5回までじゃなかたかな?」
ハルさんが機材を整理しながら言う。
「それが、ライフゲージがあるんですが、減らないんです。」
「……減らない? 5回失敗すればミッション失敗でチョイスが不利になるけど、物語上先に進めるはずなんだけど……」
「クリアするまで進めなさそうです……」
「うわぁ……じゃあ僕、先には進めないわ……」
苦笑いで言う。プロデューサーも苦手らしく、
「そのゲーム、イージー、ノーマル、ハードでいうと、ノーマルレベルの音ゲーなの。苦手な人にはかなり難しく感じると思う。イージーで!! って提言したのに、担当がどーしても、って言ってそのレベル。私もクリア出来ないわ。」
開発側の裏事情だな、とちょっと楽しく聞いていたが、横でカチカチと音がする。先生がノリノリでボタンを連打。何回目のチャレンジか知らないが、画面に『perfect』の文字が踊っている。
「……凄いですね……」
思わず呟く。画面に見入っていたらほぼノーミスでクリアした。人生において、全くと言っていいくらい役には立たない技術だが、ちょっと尊敬する。
「見た? 見た?? ねぇ、見た??」
俺とハルさんとプロデューサーを順番にみると、物凄く嬉しそうに『excellent』と表示された画面に目を戻す。
「ふふ、ディアンは連れて歩いてるからね。ミニゲームは確実にクリアしなきゃいけなかったのかもね。」
「あぁ、確かに。そういうことかも知れないですね。なんか納得出来ました。」
プロデューサーと話してる横で、ハルさんに教わりながら、先生が洞窟のダンジョンを攻略している。
「なんだ、あの綺麗な絵が出てくる訳じゃ無いのか?………あれ? こいつさっきも出てきたぞ?」
先生はRPGをやったことが無いのか、何でそんなことを? と思うことまで疑問を持つようで、なかなか聞いてて面白い。
ハルさんとギャーギャー騒ぎながらもなんとか攻略。洞窟の中で飼われていた魔物を討伐すると攻略完了らしい。そして、1人の男を助け出したようだ。
そのまま、辰の私兵団の寮まで戻る。物語を進めると、男がジーマと名乗った。すると、プロデューサーが食いついてきた
「うそ! クリア後のボーナスステージの話まで出てくるの!?」
「え、ボーナスステージ??」
プロデューサーがクリア後に始まるボーナスステージについて簡単に説明してくれる。
そこにピロンッと電子音。画面の隅に鳥マークの手紙。しかも、2という文字も書かれている。どうやら2通届いているようだ。
先生がどうすればいい? と騒ぎながらも開封する。
1通目
『子領に地底国あり。調査に入る。』
2通目
『地底国でトラブルあり。解決に向け動く。西に向かう。』
あれ? 内容からして、1通目はだいぶ前に届いてたのかも……気づかなかった……
「地底国……うーん、フィル達のトラブルと関係あるかどうか分からないけど……さっきのジーマって男が地底国の王様になるのね。」
「え?」
「っていうか、あの人はただの地底人なんだけど、奥さんが地底国の王族の末裔なの。子供も一緒にいるはずなんだけど……」
あっさりボーナスゲームのネタばらしをした。
「え、えーと。フィル達からの手紙のトラブルは関係ありそう何ですか?」
「うーーん、何とも言えないけど……このタイミングってことはやっぱり関係あるのかなぁ……」
ここで、プロデューサーから地底国に関するストーリーを聞いた。要は、偽物が王位を次ぐ前に、本物の末裔であるジーマの奥さんと子供を連れて地底国に向かわなければいけないらしい。
「と、なると……奥さんと子供を探さなきゃいけませんね。馬車で連れていかれたって言ってたので、洞窟の周りに街か村があるのかな?」
「どうなのかしら……そもそも、この話は西の国で起こるはずのイベントだから…… 」
「あぁ、それでフィル達は西へ行くんですね! って、ならフィル達を止めないと!!」
黙って様子を見ていた先生がカラカラと笑う。
「いいねぇ、ハマってるねぇ。……よし、俺も手伝う!! 面白そうだし。妹ちゃんは手が離れちゃったけど、岡本ちゃんの本体は任せとけ! 責任もって状態維持させとく。で、俺もチョコチョコ遊びに来ていいか?」
「お前が来ると騒がしい……」
ハルさんが迷惑そうな顔をするも、明後日非番だから明日来るなぁー と返事も聞かず帰って行った。嵐のような人だ……
その後、また手元に戻ったコントローラーを操作し、一通り寮内と街の人たちの話を聞いてから、マリアをベッドに誘導する。
通信はプロデューサーに任せる。一華に加え、ノームの末裔探しも平行してやらなければいけなくなりそうである。
俺が中に入れたら、何を置いても一華を探しに行くのに……そう思いながら、すっかり友達のようになったプロデューサーとマリアのやり取りを見つめていた。
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