第4章
およそ一月という期間を経て何とか続きを書き終えました。これってきっと〆切とかあった場合、守れてないパターンですよね。
遅めの昼食をとり終えた三人は、もう一度先ほどのパン屋へと足を運んだ。まだ、あのサンドウィッチは置いてあったので、司たちはそれを一切れ買うと、もういちど国内を散策することにした。
間もなくして、約束の時間が近づいてきたので、司たちはまた、軽トラックを停めた広場へと戻った。そしてトラックの前まで行くと、既にキョースケと響が帰ってきていた。
すると、キョースケと響はこちらに気付いて、声をかけてくる。
「おいーっす」
軽く手を上げながらこちらに近づいてくる。
「よ、キョースケ」
「うっす、司。……まだ時間まであるってのに、結構早く来たな」
「それはこっちのセリフだよ。何、もしかして二人とも疲れたとかで早く戻ってきたの?」
「まあ、似たようなもんだよ」
司とキョースケは、顔を合わせると挨拶もそこそこに、話始める。
「似たようなモノってなんだよ」
「あとで教えてやるよ」
ぽんぽん、と司の頭を軽くたたくと、キョースケは御剣の方に話しかける。
「なにかハルのオヤジさんについての情報とかはあったか? ……いや、見た限りなさそうだな」
「残念ながらというか案の定というか、めぼしい情報は何も手に入らなかったよ」
肩をすくめて溜め息交じりに苦笑を浮かべて答える御剣。響が横合いからやってきてヤレヤレと言いたげに首を振る。
「だよねぇ、やっぱ。……ところで、話は変わるけど、そこなハルが持っている妙に長い紙袋の中身は何ぞや?」
ハルの方へと目線を向けながらそう質問を投げかける。
「これはですね……お二人へのお土産! のような物です!」
言い終えると、ムッフー、と自慢げに鼻で息を吐くハル。
「お土産ぇ? おいおいおいおいおいおい。お前らもしかして、ダラダラと観光だけをしていたのかよ?」
響がそんなハルをみて軽く落胆する。
「いやまあ、もともとこの小国にはあまり期待していなかったし、御剣さんがない、っていうのなら本当になかったんだろうけどさぁ。コッチだけ仕事して、なんか不平等じゃね?」
肩を落としたまま、ぐだぐだと不満を漏らす響。
「あー、はいはい。わかったから。後でいくらでも愚痴きいてあげるから、とりあえず黙っといてくれるか、響」
後ろから響の肩に手を置きながら、キョースケが子供をあやすようにそう言った。
「この二人の立場関係がよく分からないよ……」
「まあ、気にするな。すぐに慣れる」
何とも言えない表情を浮かべながら呟く司と、こめかみに手を当てながら答える御剣。
「?」
一人訳が分からず頭上に疑問符を浮かべながら首を傾げるハル。
「そんなことより! これですよ、これ! とっっっっても美味しいんですよっ? お二人も食べてみてくださいっ」
そう言って紙の包みを取り、中身のモノを響とキョースケに見せる。
「うわー、すごーい。おっきいサンドウィッチだぁ」
それを見て、木の抜けた声を上げるキョースケ。隣にいる響はそれに見向きもせず、溜め息を吐いている。
「え? あれ?」
二人の反応をみて(響に至っては反応すらしていないのだが)ハルはおかしいな、と思い、もう一度首をかしげる。
「まあいいわ。それで? その長いの、オレ達二人で食べろって?」
半眼でサンドウィッチを睨みつけながら、キョースケは訊ねる。
「え、ええ。はい。そうです、よ」
これまで以上に雑な対応をしてくるキョースケに戸惑いつつ、ハルは首肯する。するとキョースケは、どこか値踏みするようにハルとパンを交互に見る。そして、響の方へ目線を向ける。
「おい響」
「あん?」
キョースケに話しかけられ、不機嫌そうに返事をする。
「ほら、ハルの言ってたのはアレだ。オレたちがちゃんと頑張った事への労いとしてパンを買ってきてくれたってだけだ。機嫌直して食っちまおうや」
「あん? パン?」
言われ、胡乱気にハルの方に目を向ける響。果たしてハルが大事そうに抱えていたそれは、野菜やベーコンを挟んだ長い棒状のパン――サンドウィッチだった。
「んだよ。それならそうと先に言えっての。ほら、食っちゃうから頂戴な」
あっさりと機嫌を直した。
そんな姿に、ハルは半ば茫然自失としている。しかし響は、お構いなく彼女の手からパンをかっさらった。
「んじゃ、いただきまーす」
「ちょっと待て。なに全部一人で食おうとしてんだコラ! 俺の分もあるんだよっ。半分に分けろ!」
さっさと食べようとする響を押さえつけて怒鳴るキョースケ。
「……ちっ。わーったよ、分けりゃいいんだろ分けりゃ」
不承不承といった感じに舌を鳴らし、半分に千切ろうとする響。
「うぉ! なんだこれ、めっちゃ固いぞ?」
パンを千切るのに悪戦苦闘をし始める。何度かパンを捻ったりするも、なかなか千切れない。なんども右に左に捻りながら引っ張っていく。そして、
――ブッツン! という音を発しながら、遂にパンは千切れた。
「よっしゃ!」
漸く二つになったサンドウィッチを見て、響は歓喜の声を上げる。
「それじゃ、オレはこっちをもらうからな」
そう言って短い方のパンをかすめ取るキョースケ。どうやら長い方を選んで響ともめることを避けようとしている。
「あん? なんだお前、そっちで良いのか」
響は機嫌がよく、早速サンドウィッチを齧っている。
「うっはぁ! これは旨いな。食材の一つ一つが凄く良質だ。うんうんこれは良い」
さらに機嫌を良くし、響は残りを全て平らげる。相好を崩している響とは対極に、キョースケは黙々とそれを食べていた。
「ふぅ、ごちそうさん」
食べ終わり、一息ついて水筒のふたを開け、お茶を飲もうとするキョースケ。それを奪い取り、響は水筒の中身を飲み干す。
「さて、じゃあそろそろどこかの宿に入ろう。日が暮れてからとかマジで簡便だからな」
飲み終えた響はそう言って軽トラックを指さす。
「それにさしあたって、コイツはここに置いて行くかどうかも考えよう」
「……」
そんな事を言う響を横に、キョースケは溜め息を吐いて御剣に、彼の分の水筒を貰い、ソレでのどを潤していた。
「無視かよっ!」
二人の反応を心外に思ったらしく、抗議の声を上げる。
「五月蝿ぇな。宿なら既に適当なのを見繕ってるだろうが」
「何を考えているのかは知らんが、お前の遊びに一々付き合う気はないぞ」
キョースケと御剣が、蔑むような覚めた眼差しで響を見据えながら答える。
「お、おおぅ……」
そんな二人に威圧されて、響は言葉を詰まらせる。そして、目を逸らしながら小さく、スンマセンと呟く。
司とハルの二人は、男共三人の阿呆なやり取りを見ていて、司は何故か機嫌を損ねており、眉尻を吊り上げ、ハルは呆れてか、苦笑を浮かべていた。
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その後、司たちは軽トラックに乗って、キョースケと響が見つけたという良さ気な宿へと向かった。
数分ほどして宿に着く。
建物はレンガ造りの者で、どこかおとぎの国を思わせる雰囲気だった。近くの駐車場に軽トラックを停めると、宿の中に入る。内装は小綺麗な感じで、レトロチックなものだった。
御剣は、すぐさま受付に歩を進めると、司、ハルの二人部屋と、キョースケ、響、御剣の三人部屋の二部屋を借りた。
司たちはそのままキョースケ達と別れて、自分たちの部屋に入り、一息ついた。
「はあ……。生きている間に、この国に来れて幸せだよ」
司は、二つある寝台のうち、窓側の方に腰を下ろすと、恍惚とした表情を浮かべながら、満足そうに溜め息を吐く。
「充実した。すごく充実した一日だった」
満ち足りた顔をしながら、うわ言のように一人ごちる。その顔は、とても幸せそうに口元を緩ませ、目を細めていた。
「そんなに、この国が気に入りましたか?」
ハルが、そんなだらしない表情を浮かべている司に苦笑を交えながら訊ねる。
司は緩みきった顔をしたまま答える。
「んー、まあねぇ。元々、ここには来たかった、って思っていたし」
それに、と言葉を付け足すと、背中から寝台へと倒れ込む。
ぼふんっ、と司の上半身がのし掛かった拍子に寝台が空気が抜ける音をたてた。
「それに、何です?」
ハルが首をかしげながらオウム返しをする。
「うん、それにキョースケのことで新しい発見ができたからね」
「新しい発見、ですか。キョースケさんの」
仰向けのまま、ハルの言葉に頷く司。
「ケンカ以外で、あんな生き生きした姿を見たのは久しぶりだよ」
それだけでも新しい発見だね、と嘯く。そして、寝返りを打つ。足を寝台からおろしているので、必然的にハルにお尻を向ける状態になっている。
同性とはいえ、ハルは目のやり場に困り、顔をそむける。
「ハルは今日一日、楽しくなかった?」
え、とハルは司の方にもう一度顔を向ける。一瞬、なんて言われたのか理解できなかった。
「だから。ハルは、今日一日僕たちとこの国を回って、たのしくなかったの、って訊いたんだよ」
お尻をこちらに向けたままの耐性で、司はハルの方に顔を向けながら再度問いかける。
「えっと。あの、その……」
突然の質問に言葉が出ないで戸惑ってしまう。じ、っとこちらを見つめて答えを待っている司の瞳は、無邪気な子供のそれと同じ色をしていた。
「う、ううっ」
そんな眼で見られては落ち着けない、とハルはもう一度、今度は別の理由で目を逸らす。
司は、そんなハルの行動を疑問に思い、小さく首をかしげていた。
夢玉をいつ使用するか。誰に使用するか。悩んでます。




