第2章
色々と問題が続いたせいで投稿に時間がかかりました(土下座)
今度はもっと早く出せるよう、努力します。
一日前
「それでは、いきますよ」
そう言って、ハルは『夢玉』の力を使う。司は、ギュウッと目をきつく閉じ、何が起きても良いように身構える。
「――あれ?」
どれだけ経っても視界は開けることなく、何か、意識が夢に移ったと思える感覚もない為、司はゆっくりと目を開けて不思議そうにそう呟く。
「何も……起きない?」
ハルが目を見張りながら呟く。
「え? えぇ!? あれっ、どういう事!?」
司は、何がどうなって居るのか分からないで、慌てふためく。
「おいおい、故障か?」
一人驚愕する少女の手にある『夢玉』を見ながら、キョースケは呟く。
「……もしくは、ソイツが偽者の『夢商人』だったりとか」
響は愉快そうに笑みを浮かべ、そう呟きながら、殺気を露わにする。
「そそ、そんな事ありませんって! それに、昨日使った時はちゃんと発動したじゃないですかっ。ねぇ、キョースケさん!?」
誤解だ、何かの間違えだ、と必死になりながら訴えるハル。
「まあ確かに、昨日オレがやった時はちゃんとモノスンゲー悪夢を視たわけだし」
偽者って線は無いよな。とキョースケは頷く。
「……なら、やはり故障か?」
「そんな訳ないです。ちゃんと正常に『夢玉』が発動した感覚はありました」
響の疑問を、首を横に振り、あっさりと否定をする。
「そうか……。おいハル。今度は俺に夢を見せてみろ。それで故障かどうか確かめる」
上から目線でそういう響。
「……分りましたけど、何か釈然としませんね」
ムゥ、と頬を膨らませながらハルは了承する。
「実はただ単に夢を観たかっただけだったりして」
「うん。そうだけど?」
響は、だから何だ? とでも言いたげにキョースケの発言に対し、あっさりと首肯する。
「……」
ハルは黙ったまま、響に白い目を向ける。
「……そうですか。では、何か視てみたい夢なんてのはありますか?」
気を取り直すように問いかけるハル。響は腕を組んでうーん、と唸る。
「まぁ、ここは無難に悪夢を観てみたい、て言いたいわけだが、どうせコレが先にその選択をしただろ?」
何が無難なのか、そう言いながら自分に酷似した容姿の少年をアゴで指す。
「人をコレ呼ばわりすんな。……まあ、それをチョイスしたのは事実だけど」
文句と返答を同時にやるキョースケ。
「という訳で、今回は普通に誰でも見そうなやつで頼む」
「一番選択しにくい奴を頼んで来ましたね。……まあ、どうせ試しにやるだけですし、適当に選んで良いですよね」
「いいけど、疑問形じゃないのはどういうことだ」
「五月蝿いですね。じゃあ行きますよ」
了承も得ずに、ハルは新たに取り出した『夢玉』を少年の前に差し出し、発動させた。
響は、瞠目したかと思うと、そのままゆっくりと目を閉じ、眠りについた。
それから数分後。
「FREEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEZE!!!!!!!!」
カッ! と目を見開くと、耳を劈くほどの音量で発狂する。寝起きにこんな言葉を発するような夢が誰でも見そうなものなのだろうか、と響を見て首を傾げる司。
「どうやら、正常ですね」
「なんらおかしなとこは無いよな」
「でもそしたら、何でボクの時だけならなかったんだろ?」
響の異常な目覚め方を完璧に無視して、三人は話を進める。
「では、もう一度司さんに試してみましょう」
「じゃ、やってみっか」
「うん」
ハルの言葉に、キョースケと司が同意をする。
そして再度試してみる。が、やはり結果は先程と同じく失敗に終わった。
「あ、あれ?」
「また失敗か。じゃあ次はオレがやるー」
困惑するハルと、挙手するキョースケ。
――三十分後。あれから何度か試してみたものの、結果は司に『夢玉』を使おうとした時だけ失敗した。
「「「ゼー、ハー、ゼー、ハー」」」
司、キョースケ、ハルの三人は、うな垂れて肩で息をしている。
「なんだテメーら。だらしねぇな」
響は一人悠々とちゃぶ台に腰掛けながらそう言った。
「そりゃアンタは最初の一回だけで後は何もやってないからな」
キョースケは、響の方を見ずにそう文句を言う。
「いやだって飽きたし」
それに対し、一切悪びれる風もなくそう答えると、コートの袖から何故かキンキンに冷えた缶コーヒーを取り出すと、一気に飲み干す。
「いや手伝えよ。飽きたとか理由になんねぇから」
キョースケはそう訴えるが、ツコッムところが違う気がする。
「さて、お前らを見ていて、一つの結論が出てきたわけだが」
響は、空になった缶をちゃぶ台の上に置く。
「無視すんな」
ゲシッ。
文句を言ったキョースケは、容赦なく蹴られた。
「その結論ってのは、こんなガラクタじゃ、この司の夢を視れない『呪い』に勝てないって訳じゃね?」
そう簡潔に言う。
「……呪い?」
訝しく思い、首を傾げながら司はオウム返しをする。
「ま、『呪い』としか言い様はねーわな。夢が観れない、なんて」
悠然とした態度でそう答える。
「つーわけで、解散! ……ん?」
「ちょっとまて。何が解散だコノヤロウ!」
先ほどのお返しも兼ねて、スタスタと帰ろうとする響の腰を後ろからホールドして、そのままブリッジの体勢をとるキョースケ。
「ズゴォォォオオオオオオオ!?」
綺麗にジャーマンスープレックスを決められて、奇声を上げる響。
「勝手に帰ろうとしてんじゃねえよ」
技を決め終え、立ち上がりながらキョースケは吐き捨てる。
「で、だ。多分、響の言ってることは大体あってるだろうとおもう。だからここで一つ提案があるんだが……」
キョースケが作ったような口調でそういうと二人は、提案? と同時に首を傾げる。
「そう! 提案だ。それは、ハルのオヤジさんとコンタクトを取る事!!」
こぶしを高らかと振り上げ、そう叫ぶキョースケ。
「じゃ、頑張ってね~」
仰向けにキョースケを見上げながら、軽やかな笑みを浮かべてフリフリと手を振る響。
「アンタも行くんだよ」
足元で他人事同然に行ってくる男を睨む。
「それで、どうしてそういう提案が出るんですか?」
ハルは、自分の父親が話に上がったことに驚きながら訊ねる。
「うむ。それはだな……。」
一度、そこで言葉を区切る。それは? と興味津々に身を乗り出す司とハル。
「ハルは、正確には『夢玉屋』じゃなくて『夢玉屋』見習い。なんだろ?」
したり顔でそういうキョースケ。
そう訪ねてきたキョースケに真意が分からず、ハルは眉根をハの字に寄せる。
「えっと、それはそうですけど。……あっ!」
何かに気付いたように声を上げる。
「え、なに、なに? どうしたの?」
一人理解が出来ていない司は、二人の顔を交互に見る。
「ハルのオヤジさんなら、司のソレに対して、何らかの解決方法を知っている可能性があるってこった」
最初から話についてこれていない司に嘆息しながら、キョースケは説明をする。
「確かに、父なら何らかの解決方法は知っているかも知れませんけど……」
苦虫を噛み潰したような顔をして、言いよどむハル。
「だろ? そうと決まれば後は会うのみ! 明日の朝、出立という事で」
しかし、そんな少女の態度を気にもせず、これは決定事項だとでも言いたげにキョースケは席を立ち、風呂を沸かしに行く。
「……」
ハルはその背中を、どこか申し訳なさそうな顔で見送る。
こうして司に夢をみせる事は失敗した。そして、ハルの父親に会えば、という可能性をもとに、キョースケ達は旅に出ることにした。
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「おはようさん」
キョースケが布団の中から出、居間兼食卓へ行くと、すでに響も起きていた。
「……おっす」
眠たそうに目をこすりながら、空いている手を適当に上げて返事をするキョースケ。昨夜は色々と準備をしていたせいもあって、結局日が昇り始めた頃に就寝していた。
「朝から元気ねぇな。そんな体たらくじゃあ、この先持たないだろ」
「むしろ、アンタは何でそんなに元気なんだよ。就寝時間はオレとあんま変わらなかったはずだろう?」
寝起きで機嫌が悪いのか、響の言葉に剣呑な態度で答えるキョースケ。
「それより、早く食べましょう! お腹ペコペコです!」
二人の間に生まれている一触即発な空気を一切気にした様子もなく、ハルは眼前のテーブルに並べられている、およそ家庭料理とは思えないほど豪勢な品揃えを見て涎を垂らしながら早く食べようと促す。
「んあー。コレ、誰が作ったん? ヒビキちゃん?」
キョースケは、響を見ながら呟く。
――バゴッ!
キョースケの腹に、見事な左フックが決まった。
「誰がヒビキちゃんだ。殴るぞ」
響は、今しがた振るったばかりの拳をかざしながら一言。それに対しキョースケは体をくの字に折り曲げ、患部を抑えながら、苦しそうに顔を歪める。
「い、いや、殴ってから言う――じ、自重します……」
抗議を主張しようとするも、問答無用と言いたげに響が睨み、黙殺する。
「それじゃあ、皆席に着いた事ですし、頂きまーす」
言うが早いか、早速料理に手を付けるハル。
「いただきます」
続いて司。
「応、くえくえ。――んじゃ、俺もいただきます、と」
響も、自分の席に着き、箸をとる。
皆が朝食を摂っている間、一人、キョースケだけが腹を抱えて悶絶していた。
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食事を終えた司たちは、出発の準備をしていた。
「うぅ……。食べ過ぎました……うっぷ」
そう言って、苦しそうに口元を抑えるハル。
「そりゃあ、あんだけ食えばな」
皆より遅れて朝食を摂り終えたキョースケは、今にも吐きそうなハルの背中をさすってやりながらそういう。
「まぁ、メチャクチャおいしかったからねー。朝から食べすぎるのもしょうがないよ。
……ってあれ、響は―?」
苦笑を浮かべながらハルのフォローをする司は、ふと気が付いたように訊ねる。
「あー、アイツ? 確か、オレ等がメシ食ってる間に下に行ったけど。そろそろ足を用意できた頃だと思うが?」
「じゃあ、ボクも先に下に行って待ってて良い?」
司は、鉄扉のドアノブに手を掛ける。
「んー? あー。アイツも一人じゃ寂しいだろうし、行ってやればー」
司の方へ顔も剥けず、気持ち悪そうにしているハルの背中をさすりながら、適当に相槌を打つキョースケ。司はそれを、面白くなさそうな顔をする。
拗ねたように唇を尖らせ、八つ当たり気味にドアを乱暴に閉める。
キョースケの部屋を出てすぐ目の前には向かいの部屋の金属製のドアが、無言のまま、重く聳えていた。そして左手には無骨な階段が虚しそうに下と上へと伸びていた。どこか異様な雰囲気を醸し出すこの空間。司はそれを気にせず、力強く階段を踏みしめながら、下りて行く。
(あぁもうっ! なんだかむしゃくしゃするっ)
司は、自分でも理解できない憤りを抱いていた。別に、あの二人が仲良くしようがどうでも良い話だ。別に自分とキョースケは恋人同士と言う訳でもないのだから。
それにしても、と司は内心で呟く。キョースケが自分以外の同年代の少女を構うというのは、多分彼女以外では初めてだと司は思った。まあまず、基本的に他人には淡泊な態度を取るあの少年がそうそうそんな事をするはずはないのだが。
やり場のない怒りを抱えながら、司は階段を下りきる。
「あん? お嬢ちゃん一人かよ。残り二人はまだか?」
階段を下りきりると、直ぐにマンションを出る形になり、直後に横合いからそんな問いが投げかけられた。
声がした方へ顔を向けると、ゆらりと煙が立っている煙草を口に咥え、壁に背中を付けているキョースケがいた。否、彼はキョースケではない。容姿こそキョースケと酷似しているが、髪や瞳の色が違う。キョースケが茶色がかった赤色の髪と瞳に対し、こちらの少年は血のように紅い頭髪をしており、その黒い瞳は混沌を思わせるほどに何の光も感情も映し出されていない。
「うん。もう少ししたら来ると思うけど」
そうか、と呟いて煙を吐く響。
「響、お前何歳だよ。外じゃどうか知らないけど、降峰は二十歳未満の喫煙は法律で認められてないよ」
「……チッ。わーったよ、郷に入っては郷に従え、だ。ここを出るまでは吸わねえよ」
司に言われ、忌々しげに舌打ちをすると、手にした煙草を地面に捨て、靴底で火を消すように踏みにじる。
「タバコのポイ捨ては迷惑行為」
指摘され、だあああああ! と声を荒げて先ほど投げ捨てたそれを右手で拾い上げ、握り潰す。響の拳から、ジュッという水気のある有機物が焼ける音を上げる。
それを目にした司はギョッとする。が、響は一切動じることなく握った拳を開く。その手のひらを見て司はさらに驚く。
「――ない」
何もなかった。煙草の吸い殻も、その熱によってできているはずの手のひらの火傷も、まるで最初から煙草なんてなかったかのように。
「いっつまぁじぃーっく」
響が、そんな司に向かって棒読み加減で呟く。
「イヤ、どう見てもマジックじゃないだろソレ!?」
「うっせえな。俺がそう言ったんだからそうなんだよ」
あからさまに舌打ちをしながら響は答える。ひらひらと見せびらかすように右手を振る。
無茶苦茶だ。この少年には常識が通じないのだろうか。
(キョースケと似ている事といい、昨日の件といい、何者なんだよ、コイツ)
司は半ば睨みつけるように響を見ながら、内心で呟く。
「そう言えば響」
「あんだよ」
「お前、車か何かを用意しているんじゃないのかよ。どこにも見当たらないけど」
そう言って辺りを見渡すゼスチャーをする司。実際、マンションを出てすぐにある駐車場の中には、車一台ありはしなかった。キョースケを除いて誰一人入居者のいない子のマンション。もうその時点で最後の入居者を別の所へと追いやり、取り壊しが行われてもいいはずなのだが、まあ、そんな事は置いておくとしよう。
閑話休題して、響はまたも舌を鳴らす。
「俺自体が持ってくるわけじゃねえよ。人に頼んで持ってきてもらってるところだ」
ふうん、と彼の言葉を聞いて淡泊な反応をする司。
「それで、頼んだ人ってのは誰さ? そういう仕事の人?」
司が、完全に興味本位だけで訊ねる。響は、意地の悪い笑みを浮かべて一言。
「教えない」
とだけ言った。なんだよそれー! という司の叫びが、この廃墟じみた空間に鳴り響いた。
>>>>
しばらく司と響の問答が続いていると、手持ちの鞄を持ったキョースケと大荷物を背負ったハルがやって来た。
「短い間に随分と仲良くなったな、お前ら」
肩を並べて壁に背中を付けて話していた二人に向かって、キョースケは茶化すように言い放つ。
「イヤ、別にそういう訳じゃないだろう。ただ時間つぶしに話をしていただけだし」
「まあ険悪な関係にはなってないってだけだから安心しろ」
司と響の二人は順番に言い返す。
「さいですか。……それで、現状を見るにあの人はまだ来てないのかよ」
「そうだな。関所の手続きに手間取ってるのか、もしくはなんかの手違いで待ち合わせ場所を間違えているのか……」
響はキョースケに相槌を打ちながら、あごに手を当てて思案する。
「関所の手続き? それは、入国手続きの事ですか? 自分が降峰に入るときはそこまで時間はかからなかったはずですが……」
ハルが口をはさむ。
「ん? そうか。ならそっち方面での問題ではないってこったな。ふむ……」
大荷物の少女の言葉に軽く相槌を打って響は別の理由を模索する。
「キョースケ、お前まさか」
「いやそれは絶対にないから。その手の奴は全部昨晩の内に回収したから!」
響に妙な疑いをかけられ、同じ顔の少年は慌てて否定する。
そんな二人を見ながら、司はまるで双子の兄弟がじゃれているようだ、と思った。彼ら曰く、血の関係などは一切ないとのことだが、どうにも信じがたい。
「?」
そう思っていると、遠くからエンジン音が聞こえてきた。その音は段々とこちらへと近づいてきており、それに伴って音も微かな物からけたたましく鳴り響く爆音へと変わった。
そして、荷台に屋根のように幌が付いた軽トラックが目の前にやってきて、停車した。
「「「「……」」」」
四人は茫然とそのトラックを注視していた。少しすると、運転席側のドアが開き、長身の青年が現れた。司たちと同じ東洋系なのだろう髪と瞳の色は黒く、肌の色素も少し色素が薄いが、白人とまではいかない。細い目の中にある黒玉石を思わせる暗い瞳は何も映していないように見える。肩口まである長めの髪は後ろ手に結わえられている。
「みっつるっぎっさぁーーーーん!」
青年が出てくるなり、大声を出して駆け出すキョースケ。
トラックから降りてきた青年は、助走をつけて跳び込んでくるキョースケを動じることなく数歩歩いて飛んでくる進行方向から外れる。
青年に無情にも避けられたキョースケは、完全に受け止めてもらう体制だった為に、受け身も取れずに地面へとダイブする。
「グエッ!」
鼻っ面からアスファルトの上に落下したキョースケは短い悲鳴を上げる。
「な、何で避けるのさ、御剣さん……」
鼻を押さえながらよろよろと起き上る。
「いきなり飛び込んでくれば避けるだろう」
御剣と呼ばれた青年は淡泊にそう答える。
「うう、酷い……」
がっくりとうなだれるキョースケ。
「ンなこた、どうでもいいんだよタコ」
響は、撃沈しているキョースケに追い打ちをかけるように言い放つ。
「それよりも、だ。御剣さん、約束の時刻から随分と遅れてるんだけど、これは一体全体どういうことなんだ。なんか理由でもあるのか?」
響の言葉に、御剣は彼の方に振り向いて、そのことなんだが、と答える。
「どうやら先日、上空から人がこの都市に不法に侵入したらしくてな。一時的に入出国の手続きが厳しくなっていた。そのせいで少し入国に手間取ってな」
お前たちは何か心当たりはないか? と訊ねてくる。
「いや、オレたち三人は昨日、いろいろと忙しかったから知らなかったよ」
キョースケが答えると、御剣はそうか、と頷く。
「では響、お前は?」
「ぎくぅ!」
御剣に話をふられ、響は大きく肩を跳ね上がらせる。
「い、いや。俺もななにっ、なにも知らないけど」
目を逸らしながら答える響は、動揺しすぎてどもりまくっている。
それを見て司は思った。ああ、犯人はコイツだなと。
「そうか、お前も知らないのか。なら良いんだが」
しかし御剣は、そんな怪しさマックスな響の態度を意に介さず、あっさりと信じてしまった。
「お、おう。まあ、そういう理由ならまあ仕方ないんじゃねえの? じゃあ、そろそろ行こうぜ。時は金なり、だ.」
そう言ってさっさと話しを切り上げようとしている。が、キョースケが待ったをかける。
「なあ、この軽トラって座席が三人分しかないんだけど。これでどうやって全員乗るんだよ?」
「ああ、確かにそうだな。文句は聞かないよ。なにせいきなりの呼び出しだ。こちらも用意をする時間がなかったのでな。とりあえず手元にある中ですぐに出せるこれで来させてもらったよ」
頷いてそう皮肉を言いうと、御剣は肩をすくめながら苦笑する。
「どうすんだよ、御剣さん?」
キョースケの問いに御剣は、顎に手を当てて思案する。
「そうだな。それじゃあ響、キョースケ。お前たち二人は後ろの荷台にでも乗っていろ。そっちにいる二人を助手席に置く」
「はぁ!? ちょっと待てよ御剣さん。この阿呆ならともかくとして、なんで俺が荷台に行かないとならないんだ!」
キョースケを指さしながら響は怒鳴るように問いただす。傍らでキョースケが不服そうに、
「俺ならともかくってどういうことだよ。むしろお前の方が適任だろうが」
と呟く。
「あん?」
「べっつにぃ」
睨みつけてくるる響にキョースケは目を逸らしながら素っ気なく答える。そのまま御剣の方へと顔を向ける。
「でもまあ、確かに疑問ではあるな。御剣さん、何でオレたちが荷台なんだ? まあ、なんとなく理由は分かるけど」
そう問われ、御剣は軽く頷いて答える。
「響は渦潮丸があるから、深海にでも行かない限りは死にはしない。お前は……まあ、色的に」
「色的にってどういことだよっ? アレか、髪の色か? お前ゴキブリみたいな髪の色しているからちょっとやそっとの環境じゃ死なないよな、って事かよ!」
その言葉にキョースケは御剣に食って掛かる。
凄い言いがかりを考えるなと、癇癪を起すキョースケを見ながら司は思う。
「いや、別にそういう訳じゃないが。それに、あくまでホストは我々だ。ゲストを第一に考えるべきだろう。それとも、顧客を悪環境に追いやるというのか、お前たちは?」
腕を組みながらそう答える。
「む、言われれば確かに……」
ぐ、と言い返せなくなり、素直に受け入れる響。もともとキョースケは承知だったのだろう、軽く首肯するだけだった。
そして、運転席側から御剣、司、ハルの三人が車内へと入る。そして、残り二人が荷台へと乗るのを確認すると、御剣はギアをチェンジさせ、アクセルを踏むと、激しいエンジン音を轟かせながらトラックを走らせた。
司たちを乗せた軽トラックは、キョースケの住んでいたマンションの最も近くにあるこの都市と外界とをつなぐ出入口、城門へと向かい、手続きを済ませて外の世界へと旅立った。
――出国の手続きの際、響のせいで一悶着があったのは、また別のお話で。
人生ってままならないことだらけですよねぇ。
それはそれとして、なんというか夏が目の前になりましたね。血涙が絶えません。汗も絶えませんけど。クーラーが必須になってしまえば私は外出を怠るようになってしまう。それは困る。頗る困る。なので年がら年中春まっしぐらでいいです。
話しは変わりますが、今回の話は旅立ちということで、一話終章の続きを書きました。なんでこんなに時間がかかったのかが我ながら謎です。
司は短髪で可愛いし、ハルも短髪で可愛いし、キョースケはチャバネゴキブリみたいでイラ尽く(誤字ではない)し、響はムカつくし、御剣さんはカッコいいし。もう頭が混乱する。
そんなこんなで今回の話しはいかがでしたか? 面白ければ之幸いです。ではでは、次回はもっと早く出す予定なので、こうご期待です。切に。




