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再び出会った男

コラーロ・デスメフシス 転生した異世界で課せられたルール。最後の一人が決まるまでにしていけないこと。『人殺し、死、自殺』


カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称


事前に準備するのは大切だ。

グランじいちゃんからも散々言われてきた。


『結局段取りが全てだぞ』


その言葉のおかげか、厳しい冬の中でも、困ることはなく。

カーネの出産も、このような劣悪な環境でも無事行うことができた。


命懸けで新しい命が生まれる神聖な行為。


その神聖な行為で利益をあげようとしていた奴らがいたと考えると、今でも気分が悪くなる。


だが、今はあまり考えないでおくことにしている。

俺にとって初めてできた妹。


その子の後ろにそんなドス黒い背景を想像するのは、なんだか申し訳ないと思ったから。


妹の名前は『ソラ』と名付けられた。


理由はマットとカーネがよく二人で空を眺めていたかららしい。


冬の透き通った深い青空。

とても美しくて、この世界の大きさを感じる。

そこに浮かぶ白い雲のような髪の毛と、その名前がすごく似合っていると思った。


カニスの成長は人間よりも早い。

ついこの間まで何もできないお人形のようだったソラの口には、すでに乳歯が生えているのが確認できた。


まだ生まれてから一ヶ月も経っていないはずなのに…。

だがそれは俺もこの体で経験したことか…。


俺がこの世界に転生して六年目になろうとしている。

俺の体は、すでに中学生の平均くらいまで成長している。


この厳しい状況下でいつまでも子供の姿でいるよりかは、早く成長し、できることが増える方が嬉しいが…逆に言えば老いるのも人間の倍の速度で迎えることになる。


マットとカーネと、そして新しいソラと過ごせる時間は通常の半分しかないということだ。


ならば、この森を抜ける算段を早めに立てておいた方がいい。

結局段取りが全てだぞという言葉はこんな場面でも生きてくる。


だが、現実は厳しいものだ。


俺たちは、人間に捕まらないようにするために、森の奥に進みすぎた。


山の頂上から見下ろしてもあたり一面に広がるのは森の海。

進むべき先も、戻るルートもわからなくなっている。


本来、俺たちカニスなら、歩んだ道の残香を辿ることでどんな森でも歩き回れるのだが。


俺たちはここに長く滞在しすぎた。

プリムス村からここまでのルートの残香はすでに途絶えている。


当てもなく森を進むのは自殺行為。

今回のように、周囲に凶暴な魔獣がいない安全な拠点など、そう簡単に見つかるわけがない。


しかも俺たちは子供を連れている状態。


簡単には動けない。


そんなことを考えている間に冬は終わりを告げ、春が訪れようとしている。


この地を去るのであれば絶好な季節。

だが、動けないことにヤキモキしている時、遠くの山から異様な光景を見つけた。


山に黒い影が迫っているのかと錯覚するほどの鳥の大群。

まるで、この山々にいる全ての鳥が飛び去ってしまったのかと思わせるような数。

それが“何か”の前兆だったと知るのは、その数日後だった。


この木が生い茂った森の海には似合わない、黒と赤。


そこにいたのは、どう考えてもこの森を歩くのに適していない黒く大きな馬と、派手な刺繍を施された紅の着物を纏った男。


「ああ、君会うたことあるなぁ?」


あの夜に俺たちを助けてくれた謎の男。

リオンという男が何故か目の前に現れた。


俺はこの男のことを覚えている。

当たり前だ。

これほど強烈なインパクトを残す人など、そうそう出会うことはないだろう。

だが、なぜ俺のことを覚えている?

会話もしていないし、俺はあの時よりも大きくなっているはずだ。


それなのに何故、開口一言めが『会ったことあるなぁ?』なんだ?


やはりこの男はこの世界の者ではないのか?

そう混乱している俺を見て、彼はお腹を抱えて笑った。


「あははっ!動揺しすぎやろ!いや、まぁこの状況なら動揺するかぁ?にしても目が泳ぎすぎやで、きみ!」


まるで久々に会った同級生のように話しかけてくる。

それがかえって不気味で怪しさを増す。


「きみ…転生者なんやろ?」


相変わらず、ヒーヒー笑ってはいる。

だが、その視線は冷たく、俺の反応を探っているような…笑っていない目をしていた。


あれ…?そういえばこの人の目ってこんなに赤かったっけ…?


幸いなことに、今は俺しかいない。

というか、俺しかいないからその質問をしてきたようにも感じる。


まだ会話もまともにしていないのに、核心をズバズバと突いてくる。

俺はこの男にペースを乱されてばかり…たじろぐことしかできなかった。


「あっはは〜!いや、そない動揺しとったら、いつかバレるで〜? あの夜からわかりやすかったけど、よう今まで周りにバレんとやってこれたなぁ?あかんで?そんなん、ちょっと揺さぶっただけで全部顔に出とるやん!」


もうわけがわからない。

俺たち転生者は、極力相手と接触を取らないようにしつつ、相手が脱落するのを待つのが一番の攻略法なはず。

なのに、俺のことを助けたり、正体を当てたりと。

まるで神の作ったルールに反する行動ばかりとっているように見える。


「お、なんや?“自認女神”たちから聞いた話と違わへんか?って、頭ぐるぐるになっとる感じやな?」


リオンはケラケラと笑う。


「違わへんよ? ただ、僕には関係あらへんだけで」


リオンはそのままニヤニヤしたまま続けて答える。


「…あ、けど僕は君とは違って転移者やけど」


自認女神?関係ない?

あれは女神ではないということか?それに人によってはコラーロ・デスメフシスは適用されないなんて例外があるのか…?

それに転生者だけじゃなく、転移者も…?

だから年齢に差があるのか?


「ああ、そういや…名前なんやっけ?シ…シオン…?」

こっちが混乱している最中だというのに、男は気にせず名前を尋ねてくる。


「シアンです…」

答えを聞くと男はおでこをペチンと叩くわかりやすいリアクションをした。


「あ〜あ!せやった!せやった!覚えやすいけど間違えやすい名前やったわ。シアンくんな。オッケー覚えたわ。多分間違えるけど」

それは覚えていないのでは?まあいい。

「あの…」

自分から質問をしようとした。

だけど何を聞けばいいか、自分でもわからなかった。

俺はこの世界のことを知らなすぎる。

だから、聞きたいことは多いのに…何から聞けばいいか整理できなかった。


「なんであの夜助けてくれたんですか…?」


だから最も単純なことを聞くことにする。

女神のことを知っていて、同じ転生者であるのであれば、あの場は見過ごすのが得策なはず。

その答えだけは、聞いておきたかった。


「なんでやろうな〜?多分な〜」

リオンは空を仰ぎながら、言葉を選ぶ。

それほど重大な理由があるのかと思った。


「気分」

……だが、返ってきた答えはあまりにも適当なものだった。


「そんないい加減な答えで納得すると思います?」


少しでも真相が知りたかった。だから普段ならしない深掘りをいつの間にかしていた。


「自分はどうなん?あの時、助けることができる力があったとしたら見過ごすん?」


それは…助ける力があるのであれば、助けてあげたい。

だけど俺たちには制限がある…。

そう簡単に決断なんてできないはずだ…。


「ああ、ええよ?答えんでも。なんとなく君なら何するかわかるわ」


なんだそれは…?俺のことを何も知らないくせに、何故そう思う?


「だって、あの夜、子供の真似をやめて、みんなが助かる道を示したやろ?多分君はそういう子や」


またよくわからない曖昧な答えで俺のことを決めつけてきた。

あの場で、たった一言…みんなに助言をしただけで、俺がどういう子だかわかった?それはいくらなんでも短絡的な答えじゃないのか?


「なぁ〜なぁ〜?それよりも、家族は無事なん?食糧分けてくれへん?」


こっちが混乱しているのを気にもせず、自分のペースで話を進めようとしてくる。


食糧を分けるのは別に構わない。

だけど、あの夜見せたみんなのリアクションや、お互いの秘密を抱えてる身としては…洞穴に連れていくのは気が引ける。


「ああ、君が考えてる心配事は、今日は大丈夫だから安心してええよ」


また俺にはよくわからない回答をしてくる。


このヘンテコなのか運命的なのかよくわからない再会の中で、一つだけわかったことがある。


俺は性格上、この唯我独尊な男が少し苦手だということだ…。

物語のテンポを整えた結果

旧版に比べてソラの年齢が幼くなりました。


たびたび年齢に変動があって申し訳ありません。

今回の年齢で確定なので現在は生まれたての赤ちゃんです。

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