2話「4月9日、室長選挙」
ー翌日、
例のごとく陽也を迎えに行き、明陵へ。電車の中でそれぞれにあった出来事を共有。
校門を抜けると、102の俺と108の陽也は別の校舎へ向かう。現在、明陵高校は新校舎の工事中で、1年生は本校舎の101~105と少し離れた仮校舎の106~108に二分される。
本校舎3階にある102の教室に入ると、10人くらいがすでに着席していた。
昨日喋った柊弥も俺の1つ前の席に座っていたのでうーっす、と声をかけておく。
西峰は俺の2つ後ろの席である。なんとなく目で牽制。
今日は始業式と英数のみのテストがあるらしい。勉強している人もちらほら。さすが明陵。
8時20分の始業のチャイムが鳴り、STが始まる。朝の会や帰りの会をSTと呼ぶらしいが、慣れない。
担任から体育館へ移動の指示があり、ぞろぞろと席を立って移動する。
階段を降りる途中、隣に男子がいたので声をかけてみる。
「ねね、名前なんて言うん?」
「俺久津田昌也。マサでいいよ。そっちは?」
「俺東條琉。琉でいいよ。」
「おっけー、よろしくな。」
丸眼鏡をかけていて背は俺と同じくらいか。ちなみに俺は169㎝である。今年中には170行きたい。
当たり障りのない会話をしていると柊弥も近づいてきて3人で体育館へ。
始業式で若い校長の話を聞き、爆睡をかまし、式は終了。
その後、テストを受けて初めての昼食。昌也は俺の1つ斜め右の席だった。ごめん全く気付かんかった。3人で机を移動させていると、俺の右隣の男子が声をかけてきた。
「俺も一緒に昼食べていい?」
「いいよ~!」
と全員で一致。どこか話しかけづらい雰囲気があったので声をかけてくれてありがたかった。
名前は小柴一成、と言うらしい。住んでいる場所が俺の地元の近くでびっくり。
校舎は違うが同じ塾だったそうで、成績優秀者の掲示でよく俺の名前を見かけたらしい。やったぜ。
こうしてこの4人でグループを形成。昨日の遅れを取り戻せたか。
教室を見渡してみると、男子は相川たちのグループと、後ろの方の男子のグループ、そして俺たちのグループの3つくらいが大きな集まりを形成している。このクラスは番号順で男子が固まりすぎなんだよな。西峰も一応喋ってくれる人がいるらしく、意外だった。今後どうなるかなと懸念しているのは俺だけだろうな。
昼食を終えると新入生歓迎会があった。4人で集まって楽しんだ。部活紹介が中心だったが、俺は小中とバスケをやってきたのでバスケ部に入るのをほぼ決めている。明日から仮入部があるらしいし、行ってみるか。
新歓が終わると帰りのST。明日クラスの役職決めがあるとの連絡。即ち、室長選挙である。
新クラス、特に1年生の時は室長になっておく重要性が一番高いと思っている。室長になると人と関わりが自然と増えて交友関係が広がりやすい。スピーチの原稿でも考えながら帰ろう、と駅に向かうと、
「おう、東條」
西峰に出くわした。
「西峰。」
「どう?新クラスは」
「ぼちぼちかな。お前、LINE交換とかしたか?」
「まー6人か7人は」
まじかよ。人数西峰に負けてるやん。何ならしてないとか思ってたわ。
「みんな普通に接してくれてるよな、お前に」
「そうだね」
と適当に流されたところで、1つの妙案を思いつく。
「なあ、西峰。102ってまだクラスLINEないよな?」
「ないと思うよ?」
「お前が作っちゃえばいいやん」
「え?俺が?」
現段階の西峰は交友関係が広いといえる立ち位置にいる。ならば今はこの西峰を拒絶するのではなく、近づいて行った方が俺にとって好都合なのではないか。クラスLINEを作ったやつの近くにいればまた俺の交友関係は広がりを見せるだろう。
「そう。作っちゃいなよ。俺も協力する」
こうして102のクラスLINEが誕生した。いや、俺が誕生させたというべきか。
人間関係が打算に溢れていることは俺の中ではよくある話である。いかに上手に振る舞うか。それこそが新クラスでの至上命題なのだから。
ー翌日、室長選挙。
室長に立候補したのは俺、一成、相川と山田海の4人だった。山田海だけは知らない人だった。(相川も一方的に知っているだけだが)俺は密かにどうせ相川が勝つんだろうな、なんて思っていたが、相川は意外と適当なスピーチで俺のイメージを覆した。そして、全てを持って行ったのは、
ー山田海だった。
圧巻のスピーチだった。納得の敗北。兄が明陵だったらしく、兄に憧れて…なんて言われたら俺に対抗する術など残っていない。
こうして俺は室長にはなれず、会計職に落ち着いた。定員2人だったので昌也も会計に。
室長になれなかった不安と悔しさを抱きながら、今日から始まる仮入部に足を運ぶと、
そこに山田海がいた。
「あっ、室長!」
思わず声をかけた。
「おー、確か室長選挙出てたよね」
「そうそう。スピーチすごかったよ本当に」
「ほんと?ありがと!」
「俺、東條琉って言います。よろしくね」
「俺山田海です。琉、バスケ部入る?」
「うん、その予定。海も?」
「うん!楽しみだね」
バスケ部は先輩の雰囲気がとても良く、一発で入部を決めた。
部活が終わり、地下鉄の駅が同じだった東門京二と一緒に帰路に就く。
俺は基本的に下の名前を呼び捨てするのだが、東門の響きが良すぎてとうもん、と呼ぶことにした。
東門と別れ、電車を乗り換え、最寄りへ向かう私鉄に乗る。夕焼けに染まる車窓の景色が綺麗だった。




