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1話「4月7日、102HR」


ーどこまで巻き戻せばいい?ー

その答えを探して、今日も俺は青を記す。



新しい制服に袖を通し、ブレザーの胸元が意外と空くことに少し驚く。

いってきます、と高らかに宣言して玄関を出る。

今日から電車通学。駅まではチャリで5分。

まあ途中で寄る所があるのだが。

「うーっす、遅えぞ陽也(はるや)

(るい)が早すぎるんだわ」

この河内(かわうち)陽也とは小中、そしてこれから高校も同じ仲である。

こいつの性格的に駅で集合しても会えないだろうなと考えた俺は、毎朝陽也の家に迎えに行くことを勝手に決定事項にした。

「なー陽也、電車空いてると思うか?」

「なんなら座れるでしょ田舎だし」

などと地元の私鉄を舐めた発言をして駅に入り、ホームの人の多さに2人で顔をしかめた。

高校までは乗り換え含めて約40分。まあ苦じゃないね、と威勢が良かったのも最初だけ。

最寄りの駅に着くころにはだいぶ人に酔っていた。

駅から少し歩き、向かう先は県立明陵(めいりょう)高校。県内でも有数の進学校でいわゆるトップ校の部類に入る。

校門をくぐって式場の体育館に入ると、クラス分けの掲示が。

「おー俺102だって!陽也は?」

「俺108だったわ。だいぶ離れたな。」

「他の同中のメンツはどんな感じ?」

クラス名簿をもう一度見直してみる。俺と陽也の中学からは6人が明陵に進学した。過去最高の実績だったらしい。

他にも塾が同じだったとかで名前を知ってる人がちらほら。

「待って俺知り合いいないかも…」

「なー琉?お前の2つ下の番号見てみ?」

「2つ下?えーっと西…峰?西峰!?」

「琉どんまーい!いいことあるよ~」

西峰(はやて)。同中で最も一緒になりたくなかった相手。その理由は”変人だから”に尽きる。

中学の時の彼は言動と行動を含めとてつもなく浮いた存在で周りも近寄らなかった。その西峰と、同じクラス。陽也に煽られないわけがない。

「俺もう高校生活終了したわ…」

「まあ頑張って、応援してるわ。」

と他人事の陽也と別れ、自分の指定された座席へ移動する。

体育館には吹奏楽部の演奏が響き渡っている。明陵の部活事情はあまり知らないが吹部は確か結構名門だったはずだ。

102の座席に辿り着くと、まだ4,5人しか座っていなかった。とりあえず隣の席の人が来たら話しかけよう、と思い前を向いたその刹那ー


一瞬で目を奪われるほどの、イケメンが先頭に座っていた。


あの人モテるんだろうなー、今年俺絶対モテないわ終わったー、と率直な感想を抱きつつ、あの男子と仲良くなれたら勝ち組だろうな、と思った。

陽キャ、という言葉が頭に浮かぶ。その言葉が、俺が新クラスでどう振る舞うかを考えさせる。

俺は周りから見たらコミュ力と信頼度抜群の陽キャらしいが、自分からそうと言えるほどの自信はなかった。

なぜなら人が自然と集まってくるカリスマ性のようなものがないと自負していたからである。

室長や学年代表を務めていた経験はあるが、自分ではそれはカリスマ性ではないと思っている。自己肯定感が低いとか言われるが大抵は聞き流す。

俺は、カリスマ性とは”こいつといるとおもしろいから集まる”みたいな、そういう人を惹きつける魅力のことを指すのだと思っている。

先頭の彼にはそれがあるように見えた。そんな思考にふけっていると、隣に人が近づいてくる。背が少し低めの男子だった。

「よろしくねー!名前なんて言うの?」

「竹原柊弥(しゅうや)!そっちは?」

「俺は東條琉(とうじょうるい)。1年間よろしくね!」

「うん!よろしく~」

とテンプレのような会話をこなして終了する。そうして入学式が始まった。

校長がめっちゃ若かったのと校歌を披露した音楽科の方々がレべチだったという記憶のみを残して式は終わった。

教室に移動して頭頂部がだいぶハゲてきた担任の自己紹介と明日からの予定の事務連絡を聞く。あれで49歳かよ、びっくりするわ。

クラス名簿の載った学級通信が配られ、すかさず俺はさっきの先頭の彼の名前を確認する。

相川叶多(かなた)か…。名前までイケメンじゃねえか。

こうしてHRホームルームが終わり、多くの人が席の近い人とLINEを交換しだす。

俺と柊弥もLINEを交換しておいた。俺が思うに柊弥は人付き合いがあまり得意じゃない雰囲気だ。

本当は他の男子とも(特に相川)とLINEを交換しようと思っていたのだが、

居心地悪そうな柊弥についていってその日は帰ることにした。

地下鉄の駅に到着し、逆方面だった柊弥と別れを告げ、帰路に就く。

やっぱLINEもっと交換しとけばよかった…と後悔を抱きながら、明日への希望を描いた。



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