5/巻き込まれる人
私達はこれから、遥さんと、ともに中央都市マグに向かいながらアスーラの情報を集める」
クラムさんの口から出た今後の予定はシンプルかつ、当てのない行動予定だ。
それにしてもマグという町に行くということは、その町に何かがあるのだろう。
「何だ…?空気が変わった」
一真が口を開いてわけのわからないことを口にする。
確かに今一瞬のうちに空気の流れが変わったとでも言おうか……。
何かが来る。そんな直感が僕の体を振動のように頭から、足の指先まで流れる。
ブゥゥウン…そんな音が頭上から聞こえてくる。
これは僕達がこの世界に来るときに使用した、魔方陣が発動したときと同じ音だ。
やはり何かが来るのだろうか…。
「みんな!離れろ!」
僕はみんなに向かって叫ぶ。そしてみんなが同時に部屋の真ん中から飛びのく。
真ん中のテーブルの頭上で空間がゆがむ。中から誰かが…
「……ユメ?ううぁぁ…」
ドスンンン。部屋全体が揺れる。どうやら空間を越えて誰かが出てきたみたいだ…。
僕達がここに来たときと同じように、ということは誰かが時空を超えてきたということか?
一瞬うちの妹が見えたような気がしたけど、僕も疲れが出たかな。
煙が晴れて皆の姿と見覚えのある人間のシルエットが…あ!
「お前、ユメか!?」
そのシルエットがうちの妹だとわかって問いかける…。
「ユメ、お前どうやってここまで来たんだ。何でこんなとこまで来たんだよ?」
言ってから、しまったと思う。質問はひとつずつじゃないと…。
「質問はひとつずつにしてもらわなければと困ります、兄さん」
やっぱりつっこまれた…妹は厳しいなぁ。
クラムさんは状況が把握できず、遥さんはいったって冷静沈着だ。
「ちょっと待っていろ、ユメ。皆にお前を紹介する。すべてはその後だ…」
クラムさんと遥さんに説明を入れなければ話が進まない。
一真は知っている筈だが面識はないはずだ…
「コイツは覇蛾 ユメ。僕の妹だ。年は僕の一つ下、見てのとおり何故ここにいるのか僕にもわからない」
僕達がいた世界には次元を超えるすべはないはず。なのに、どうして……。
あ…まさかアスーラの一手なのか?
しかしそれでは説明がつかないところがいくらかある。これがもしアスーラの方ならまた何か企んでいるという事になる。
「私は、誰かから言われて来たの。知らない女の人に…」
アスーラは男のはずだ…て、ことはこっちの次元に来るように手助けしたのはだれだ?
「どんなに力を持った魔術師でも別の次元に行くように手引きするはずがない」
クラムさんが僕の想像する事を読んで言葉をつむぐ。
しかしクラムさんのこの発言の自信はどこから来るのだろうか。
僕がクラムさんに聞こうとした前に一真が口を開いた。
「何故そんな自信があるんだ?ダレン」
素朴にして簡潔な質問。ただそれは完璧に的を射ていた…。
ユメは未だに話の筋が見えていない。後で説明してやらなければ、な。
「白の魔術師は、デスフォウルを封印するときに力をすべて使い果たして、命を落としているといっただろう。あれは別次元に干渉した影響があるんだ」
どういうことだろうと考えていると。
「ダレン、それくらいにしておけ。空間の話はあまりするものではない」
とシドが止めに入った
白の魔術師は死んでいる以上。デスフォウルの封印が解けたとして再び封印することが出来ないという事だ…。
封印するだけでも命をかけないといけない相手。それが『デスフォウル』
「死んだといっても魔力を使い果たして肉体が死滅してしまっただけで、精神は未だに存在し続けている。そのおかげでここに君たちがいるんだろう?」
おそらく頭の中に直接、話しかけてきた人は白の魔術師だろう。しかし、ここの世界につれてきたにはアスーラのはずだ。
ということは他の次元に渡る方法をもっている人物はアスーラだけではないようだな。
もう暗い話はやめだ。それよりこれからの僕たちのことの方が、重要であろう。
「で、これから僕たちはどうするんだ?いつまでもこの町にいたって、アスーラに関する事には進展がないだろう。それに猟の妹はどうするんだ。連れて行くのか、おいていくのか」
一真がこれからのことに対する質問を、まとめてクラムさんに聞く。まぁクラムさんとてこのままこの町にいるつもりはないだろう。
遥さんにしても、ユメにしても、僕たちにしても元凶はアスーラ、もといデスフォウルにあるのだから…。
「私達はこれからクイーストという町を経由して中央の大都市マグに向かう。あそこにはすべての都市の情報が集まるからな。色々と解ることもあるだろう。猟の妹のことは任せる」
妹は行く気満々のようだから、これからの道のりは何が起こるのかわからないんだぞ、と言い聞かせたが断固として行く気のようだ。
まぁ僕や一真と同じく武術はやっていたから、自分の身は守るだろうし。
それにしてもうちの家系は、女の身であるユメにまで武器を持たせるなんて異常な家系だな。
「やはりついてくるようだ。じゃあ早速出発と行きますか。時間がたっぷりあるわけではないのでな、のんびりはしていられない」
僕たちが荷物をまとめているときに、遥さんが口を開く。
「私は別行動をとらせてもらうわ。気になることがあって。じゃあマグで」
とだけ言い残して出て行った。止めるものはなく。風の如く去っていた。
バタンと大きな音をたてて、扉が閉まる。
「まいったな。あの人何も食べないで行ったな。せっかく朝ごはんを用意したのに…」
「あのー私でよければ、いただきますけど」
オドオドした口調とは裏腹に、ピンと伸びた背筋で優しく、クラムさんに声をかけた。
「そうだね。君に食べてもらえると、食長も喜ぶよ」
上品食べている妹を横目にコナーフを食べながら、荷物をまとめた。
僕たちはものの五分ほどで準備をし、この町をあとにした。
クラムさんの話だと徒歩でマグまで一ヶ月ぐらいかかるらしいが、クイーストからマグまでの列車が走っているらしい。
クイーストまで歩きで三時間半ほど。その先々でアスーラの情報を集めることにした…。
町を出て二時間ほどの沈黙を破ったのは意外にもクラムさんの肩に乗ったシドだった。
「ダレン。儂のことを話すのを忘れてないか?」
シドは自分のことを話すように、クラムさんに言ったことを忘れていたらしい。
忘れていた当事者は、ポカンとしている。こういうところが天然なんだよな。
僕の隣で黙々と歩いている、一真は全く興味が無いと言わんばかりに口を閉ざしてしまっている。
「クラムさん今からでもいいから話してくれるかな。シド、いやシグルドのことを、鬼谷の洞穴のときから気になっていたんだ」
僕が口にした問いかけは今、現在の段階で一番しっかりした情報が揃っていて、なおかつ僕たちの知らないことだからだ。
クラムさんは少し間をおいてから話し始めた…。
時間は一億年前にさかのぼる。世界を巨大な生物が支配していたときのこと、すべての生物を統治下に置いていた。五匹の怪物がいたそうだ。怪物といっても世界のバランスを保っていた、神的な存在だったらしい。
まぁ僕達のいた世界で言う『恐竜』に当たる生物なんだろう。
「この時代のことを『神代』という。その名のとおり神が、時代を征服していたんだ。その神々の本
能。いや衝動のようなもの。それが『起源』混沌に渦巻く衝動、つまりは混沌衝動と呼ばれるものを受け継いだ現代の生物。それが『五大神獣』。神獣たちは皆それぞれ特別な魔力を持っている」
あぁこの話もまだだったかな、と続けて今度は魔力について話し始めた。
聞く側のこっちにしてみれば、できるだけ簡単に説明してほしいものなのだが…。
今度は話は何億年前といった話ではなく。ここ最近発見された『錬金術』に関係する話だった。
「私やこの国で生まれた人の大半は魔力を持って生まれてくるんだ。その魔力のことは『常魔力』と呼ばれ主に『錬金術』に間接的に関わってきてるらしい。簡単に言えば走るときに体力を使うように、錬金術では『常魔力』を使用する。ただ使ったなら減るのも道理。使いすぎるとしばらく使えなくなるんだ。ようするに魔力も消耗品って訳だ。その上限は人によって異なり、生まれつき持たないものもいたり、『獣魔力』と呼ばれる神獣がもつ強大かつ膨大な魔力に匹敵するものもいるそうだ。ついでだから言っておくが、獣魔力は常魔力と違い間接的ではなく、魔力をそのまま具現化することができる」
とにかく話が長い。あぁそうだと、思い出したかのように、君たちや僕、一般の人にも『起源』はあるんだぞと付け足した。
僕たちの頭の中はそれこそ色んなものが渦巻いていて、ちっともまとまらない。その中で、「そうか」と納得した人物が一人。
紛れも無くそれはうちの妹であり。何を納得したのか、皆には理解できない。
「何がそうか、なんだ?ユメちゃん」
口を開きユメに話しかけたのは意外にも一真だった。
ていうかいい加減ユメを『ユメちゃん』って呼ぶのを辞めてほしい。
「私が…白の魔術師でしたっけ。その人に言われたんです。『私と同じ起源。言語を持つものよ』って」
話は、実にシンプルで、先ほど聞いた話で白の魔術師の言っていたことが理解できたらしい。
自分と同じ起源か。やっぱり妹のユメにもあるということは、僕や一真にも起源はあるのだろう。
ダレンはさらに、起源は当事者が自覚しないと覚醒しないと付け加えた。
どれだけ話が長いんだ。それにいつの間にやら、目の前に町が広がっていたし。当たり前のように見覚えは無く、クラムさんたちがいた町『ロックシティ』とはかなり違って、かなりワイルドな造りである。何しろロックシティが石の彫刻物だったのに対して、今度の町は大半が木造建築で、町の周囲には木で城壁が作ってあった。
「今日の目的地だった、『フーロンの里』だ。ここ二、三日ガーディアンの目撃情報が多発している町だ」
といいながら僕たちは城門をくぐる。中は意外に広くロックシティを軽く二倍はあるぐらいの広さだった。
僕たちは度々、住民に情報を仕入れながら、更なる目的地へと足を運ぶ。
「そうなんだよ。あのボトラール遺跡の周りでよく見かけるな」
「あいつら見境が無いんだ。だからあたしらをはじめだれも近づいちゃいないよ。何をされるかわかったもんじゃない…」
などという、不安を感じさせられる、情報が耳に染み付く。
住民は口を揃えて『ボトラール遺跡』で見たという。説明のひとつも聞かされていない僕たちには『ボトラール遺跡』が何なのかという疑問で首をかしげているのに、クラムさんはやっぱりそうかとシドと内緒話だ。
いいかげん秘密を作るのは辞めてほしい。振り回されるこっちの身にもなって欲しい。
「ダレンさん。ボトラール遺跡って何なんですか?私たち今はじめて聞いたんですけど…」
僕たちの疑問をクラムさんにぶつけたのは、うちの妹だった。
クラムさんとシドは、しまったと言わんばかりに口をあんぐりと開けた。
まったく、説明してから行動に移してほしい。いつ以来だろうかこんなに時の流れが、楽しいと思ったことは…
「この町、フーロンの里の中央にある地下遺跡。それが『ボトラール遺跡』だ。そこの周辺、主に遺跡内部に大量のガーディアンが目撃されているらしい。それを聞きつけた私達が、討伐かつアスーラの居場所の情報を集めるために、ここにいるわけだ。おっ早速相手のお出ましだな」
指差した先に広がっていたのは背後の町とは、まるで違っていた風景だった。隕石が落ちたクレーターようにあいた大穴の真ん中は、鍾乳洞のようにポッカリと入り口が口をあけている。
鍾乳洞の入り口は地獄の閻魔の間に続くように果てしない闇に覆われている。その洞窟の在り方は異世界のそれに近い…。
異世界への入り口ではせわしなく、ヒトガタが動き回っている。
イメージは『蟻』忙しく物資を運ぶ。
僕たちはもうすぐあの場所に行く。今まで何体と見てきたが、一切慣れるものは無く。ただ不気味さに肩をかくかくと震わせるだけだ。
「覇蛾君それは、気の迷いだ。あれはすでにこの世のもではなく、人ならざるニンギョウ。死体にもヒトにもなれぬ。ただの、操り人形だよ…」
クラムさんに僕の気分の悪さを察知され、フォローに入る。まったく。こういうときには頼りになるんだから…。
それでユメはというと。僕と同じく戸惑いを隠せないが、ニンギョウを見るその目は、すでにヒトを見る目ではなかった。そう。妹はアレをすでにヒトとしてみていない。
わが妹ながら残酷な妹だ…
「私たちは今からあの、鍾乳洞の中に入る。おそらく今までの数以上の、ガーディアンとの戦闘になるだろう。それでも相手は、たかだかガーディアンだ、恐れることはないだろう。戦闘になったら自分のみは自分で守るようになる。ユメさんは、大丈夫ですか?」
クラムさんはユメが危険にさらされることになるだろうと思い、どうするのかと聞く。
まぁユメの性格上、着いていかない。などと根性のないことは言わない。あいつはどんな危険があっても、ついてくるだろう。
「私は兄が行く所に同行する。それなりの危険があろうとも、誰がなんと言おうとも、私はついていく」
やっぱり、うちの妹は、頑固だ。僕の事がかかわってくることには特に…。
そういう妹を持ってあれこれ十年近い付き合いだからな。
あれこれ思い出話を思い出している間に僕の足は、鍾乳洞、もといボトラール遺跡の入り口に足跡つける。
何故かさっきまでいたはずの、働き蟻の姿は無い。遺跡の奥深くの、隠れ家にでも隠れたのだろうか…。
「覇蛾君、砕萩君、気づいたか?」
唐突にクラムさんはポツリと言葉を漏らす。だが一体何に気がつくのだろうか。
そう考えたとたん、脳に直接この先五十mの情報がたたきつけられる。否。それはただの目眩に他ならない。
めまい
クラリと目眩のあとに、その異常の意味を知る。
それは決して間違いではなく、紛れも無く事実であった。僕が見た、五十m先にあったものは、腐敗し骨だけになった、人の死骸であった。無論それはヒトという皮をかぶった人形ではない、紛れも無くこの世にごまんといる、本物の人間なのだから 。
その映像が僕の脳に焼きついたほんの五分後。僕たち五人は映像どうりの、現場に到着する。
「これは、この剣の柄の紋様。マグの管理官の印だ。ということはマグの、管理責任者もこの遺跡に目をつけていたということか…。あぁすまない、また一人だけで考えていたようだ」
クラムさんに言わせて見るとこの剣の柄の紋様は僕たちの目的地である、マグの管理官という、僕たちの世界で言う警官のようなものの、証なのだという。おそらく、マグの管理者も僕たちと同じ考えを起こしたらしい。
僕たちと違う点は一つ。僕たちはまだこの世界に留まっている。つまり生きている。この管理官たちのように、肉体は、腐敗していなくて、この奥にあるものをこの目で確かめられるということ。
死体の横を通り過ぎ、さらに奥に進んでいく。この奥には必ず何かある。何も無ければクラムさんの横っ面を思いっきり殴ってやる。
「何か来る。おおよそ人ではあるまい。皆、おそらく奴等とここで一戦交えるぞ」
クラムさんが静かにかつ、低い声で指示を出す。シドはさっきからクラムさんの肩で、眠りについている。
この先十mに何かがいる。暗闇から同じ黒い塊が姿を見せる。それは今まで見た中でも、一段と黒い。
今まで戦ってきたガーディアンははぐれモノだったのだろう。おそらく、実験体のようなもの、要するに未完成。だがこっちは違う。圧倒的に放っている殺気の大きさが違う。こちらは実験体で得た情報を完成させた、閑全体なのだろう。だけど、それでも覇蛾の屋敷で刀を交えた、ガーディアンとはまだ何か違う。
それは今までの人形とは違い、野性的に飛び掛って来る様な行為には出なかった。じりじりと間合いを詰める。その脚の裏を擦って歩く歩法は日本の剣道に似ている。だがこちらはその剣道を十数年続けてきた者だ。対処法ぐらいは知っている。
「……入った。ハッ!」
ガーディアンの体が間合いに入ったと同時に、僕の必殺の居合い切りが炸裂する。
相手が自ら近づいてくるのならば、狙って刀を振り下ろすだけ。この考えでいけば、距離を詰めていた者は、気づかない間に腹部に深い切り傷を負うことだろう。だか。それを許すほど、人形は弱くは無かった。
腹部に近づく銀色の軌道を人形の黒い刃が停止させる。
カタナ
いつの間に抜いたのか、その手には黒々とした一振りの獲物が握られている
カチャリと音が鳴る。それは、ガーディアンが柄を握りなおした音。つまり、攻撃の一歩前だ。
一瞬のうちに目の前に黒い刃が現れる。反射的に、左側に回る。
横に振るわれる黒い一閃。それを身をかがませて避ける。そのまま体をばねにして、鎧の継ぎ目を狙い、爽雷を突き刺す。ぶすりと、生々しい音を立てて、鎧の内部の肉に突き刺さる。それと同時にガーディアンが崩れ落ちる。
ここまでの動作にかかった時間はおよそ十秒。ほとんど勘で動いている。
チラリと周囲の状況を見る。もちろんのことだが、僕が一体倒している間に、一真は二体。クラムさんはすでに三体ものガーディアンを蹴散らしていた。
僕とは比べ物にならないほどの速さで行動し、敵を殺していく。ほとんど一撃必殺である。
無論僕とて死が怖くてスピードが鈍っているわけではない。これは純粋に技量の問題。こいつらには既に死んだ身。二度目の生など、すでに意味は無い。
「きゃぁぁ」
すぐ後ろから悲鳴が上がる。今まで後ろに敵を抜けさした覚えは無い。周りに気を配りながら、振り返る。
僕の背後にいるユメよりさらに背後に、黒い影がいる。僕たちが後ろに敵を抜けさしたわけではなく、はじめから後ろ、つまり入り口側にいたんだろう。
全員がその場から離れてユメの方向に走る。だけど、それよりもガーディアンの方が早い。
その中で走り始めなかった人物がいた…。
クラムJダレンその人である。僕は走りながら、「何故」と呟く。
呟いたその瞬間に僕と一真の間を冷たい冷気の塊が飛んでいく。
塊はユメを通り越して背後にいる人形の頭を消し飛ばし消え去った。
物体の結合を開始。全行程終了。目標物に対し粉砕作業を開始せよ。
「An objective combination is started. The end of a complete process cycle. Start pulverization work to an object.」
と僕たちの背後で言葉が聞こえる。以前聞いたことがある呪文。
振り返る。其処にいたのは、青い服を着た長身の青年が立っていた。濃い青色の髪をたなびかせてそこに悠然と立っていた。
「シグルド。ありがとう助かった」
僕と一真が声を揃えて感謝の気持ちをシグルドに伝える
シグルドは耳を赤くして、当然のことをしただけだ。お前たちも背後には気をつけろ。出ないと寝首をかかれるぞ。などと皮肉を言う始末だ。
今気がついたが、このフロアには既にガーディアンの姿はない。ユメを助けている間に巣に戻ってしまったのか、さっきの奴が最後の一人かは定かではないがとりあえず先に進もう。
全員がその考えを頭に描いたらしい。その証拠に同時に全員がさらに奥へと続く道に足を進ませたのである。僕としても今は今後出てくる恐れのあるガーディアンとの戦闘に備えて少しでも多くの体力を残していたい。
カツカツカツ。刻一刻と時間がたっていく。その間僕たちがしたことは、ただ純粋に奥地に向けて足を動かしていただけなのだ。
無言のまま時間がたっていく。いつまでも続く道。時々足に絡まる植物の蔓。
鬱陶しく振りほどく。その動作さえも面倒くさくなる。僕とて短気な方ではないが、何時間もただ永遠と歩かされたら、誰だってイライラするはずだ。その証拠に…
「あーやってられねぇ。いつまで歩かせるんだよ。ダレン。いい加減やる気がなくなってきた」
比較的短気な方の一真が根を上げた。無論僕の足もパンパンにはっていてこれ以上歩くと動かなくなるというところまできていた。
クラムさんはどうしようかと慌てふためいているし、シグルドはいつの間にかシドに戻っている。
「皆さんこの辺で休憩しませんか。私も疲れましたし、戦闘のあとの皆さんはもっと疲れてらっしゃるでしょう。それにこの奥でまた戦いになった時にしんどいじゃお話にならないでしょう」
ユメは相変わらず冷静な判断で個々の肉体状況を知って休憩を提案する。
勿論その心遣いはうれしいんだが、それを言われると兄としての威厳が…。
「そうだな。ここらで休憩を取ろう。まったくこんな常識的なことに気付かないなんて。僕もまだまだな。皆すまないな」
自分を責めるのは辞めてほしいな。まるでこちらが集団でクラムさんをいじめているようじゃないか。僕はそこ等にあった岩に腰掛ける。一真は空虚を腰から抜き地べたにあぐらを掻く。
クラムさんとユメは壁にもたれかかる。




