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4/求めるもの

私は覇蛾の家の門をあけ玄関に向かう。

何で、だろう。兄が帰ってきてるはずなのに、家が暗いな…

「兄さん?帰ってきてるの?」

返事はない。どうやら、出かけているそうだ。にしてもこんな時間まで出かけているなんて、兄さんらしくない。

もう時計の針は十二を指している。

「おっかしいな。いつもならもう帰ってきてる時間なのに」

と呟きながら、兄の部屋の戸を開ける。

そこには、兄の携帯電話が転がっていた。

そして開きっぱなしの道場。

何かただならぬことがあったのではないだろうか。いつも肌身離さず持っているものがここに転がっていて、いつも道場にあるはずの家宝の刀がなくなっている。

私は父の書斎に向かう。母に言われていたことだが、兄の身に何かあったときには、父の書斎にいけと言われていたからである。

ギィィィ。

長年使われていなかったからだろうドアや窓、机などにもどっさりと埃がたまっている。

私は迷わず机の引き出しを開ける。父はよくこの引き出しに、物を入れていたからだ。

そのものの中から、黒いシミがついている、手帳を発見した。

どうやら手帳をメモ帳として使用しているらしく、表紙には、『Requiem』と書かれていた。

名前を書く欄には、なにやら名前が書いてあったみたいだが、黒い染みで読み取れない。

私はそれを手にとってパラパラとページをめくる。

「これは、英語かな。いや違うな、読めない。いや、これだけ読める。デス…フォウルって読むのかな?これ」

中にはぎっしりと、なんて書いてあるか解らない文字で書き記されていた。その中に『デスフォウル』という単語だけ読み取れた。                        

なぜ読めるのだろう、こんな蚯蚓が這ったような字なのに…。

その次のページには日本語でこう書いてあった。

「遥かなる別の次元。二つの眼を手に入れた魔物が目覚めたとき、世界そのものが崩壊する」

何だ。これは。別の次元とは何だ?



キィィィン……

頭に何かが入ってくる感触。

ただ物理的なものではなく、電気信号がショートした感じ。

「気づかれましたか。私と同じ起源。『言語』を持つものよ」

頭に直接声が響く。こんな澄み切った声は今まで聞いたことはない。

「あなたは誰ですか。」

そう頭に強く描く。そうすることで会話が成立するような気がした。

「私は貴方達がいる世界とはまた違う世界にいる人間です」

やはりこの世界の人間ではないか。それならばこんな人間離れした能力を持っていても不思議でない。

しかし普通は別の世界のことに干渉してはいけない筈ではないのだろうか。だって、それは次元を超えた『禁忌』なのだから

「なぜこの世界に干渉するのですか」

私は質問する。それっきり声は黙りきってしまった。

「質問を変えましょう。あなたは私の兄。覇蛾猟のことを何か知っていますか?」

声が止まる。まさか知らないのだろうか。私の兄のことを。

しかしやはり声の主は兄のこと知っていたらしい。

「私と同じ世界にいて目的を果たそうとしているわ」

目的。兄には次元を超えてでも果たさなければいけない、目的があるのだろうか。

では兄さんは目的を果たして、私の元に返ってくるのだろうか?

もしや帰ってこないとか言わないよね…。                             

「大丈夫です。あなたはすでに次元を渡る術を持っている」

私の思っていることが読まれた。

ずばりそうである。心配なのである。私の知らないところで命を絶つようなことはして欲しくないし、させない。

「その気持ちさえあればあなたは、何でもできるはずですよ。あなたは『私』なのだから…覇蛾 猟の妹である、覇蛾 ユメ」

なぜ私の名を、と頭に思い浮かべた瞬間に現実に引きずり戻されたのであった。





見覚えのある机。棚、そして蚯蚓が這った様な文字が書いてある手帳。

「戻ってきたのかな。私は…でもいいや。かなりの手がかりが手の入ったから」

しかしどうやったら、いいのかな。兄さんのところに行くには。

                              空間    接続 

「心に強く思って、願って自分の思いを。そして叫べばいい。『Spatial connection 』と…」

さっきと同じように頭に直接流れ込んでくる。しかしさっきとは違う声だ。

男の声、それもかなり低い声だった。

言うとおりにするのも癪だがほかに方法もない。

自分の願い、それは兄さんにもう一度会うことだ。

  空間    接続

「Spatial connection」

私の周りに黄色のペンで書かれた歪んだ文字が浮かび上がり私の体に纏わりついてきた。

そして弾けて、私の体は光の中に消えていった……。


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