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魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


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67/73

第67話「砂嵐の中で」

いつもお読みいただきありがとうございます!

皆さまの応援のおかげで、ランキングに掲載していただくことができました!

少しずつ順位も上がっており、本当に嬉しく思っています。

毎日のPVやブックマーク、評価のひとつひとつが、続きを書く大きな励みになっています。

本当にありがとうございます!

ルークと魔物たちの物語は、まだまだここからです。

今回も楽しんでいただけたら嬉しいです!



異変に気づいたのは、昼を少し過ぎた頃だった。


空は晴れている。


雲もほとんどない。


それなのに。


ソラがいつもより低い位置まで降りてきた。


「ピィ!」


一度。


強い鳴き声。


ルークは足を止める。


「どうしたの?」


ソラは答える代わりに、進行方向のさらに南西へ身体を向けた。


遠く。


地平線の一部が。


ぼんやりと茶色く霞んでいる。


「……あれ何?」


レイが鼻を動かす。


「分からん。ただ風が変わった」


言われて。


ルークも気づく。


さっきまで背中側から吹いていた風が。


横から来ている。


しかも。


少しずつ強くなっていた。


イズナの一本尾が大きく揺れる。


プルも跳ねるのを止めた。


「砂嵐?」


旅の準備をしている時。


宿場の店主から聞いていた。


この辺りから先では。


天候が変わると、短時間で大量の砂が吹きつけることがある。


街道上で巻き込まれれば。


方向を見失う。


目を開けられない。


場合によっては。


呼吸すら難しくなる。


「まだ距離はありそうだけど……」


ルークが地平線を見る。


その時。


足元近くにいたサンドスネークが、急に向きを変えた。


南ではない。


街道の右側。


岩場の方。


少し進んで。


振り返る。


「また?」


サンドスネークが進む。


止まる。


こちらを見る。


「案内してる」


「たぶんな」


レイも今回は否定しなかった。


ルークは地図を開く。


この先。


街道沿いに宿場はない。


次の休憩所までも距離がある。


「行こう」


迷う時間はなかった。




サンドスネークは速かった。


普段はルークたちから一定の距離を取っているのに。


今は違う。


何度も振り返りながら。


岩と岩の間を進んでいく。


「ソラ、上から砂嵐を見てて!」


「ピィ!」


ソラが上昇する。


レイは先頭近く。


イズナはいつの間にかルークのすぐ横へ来ていた。


風がさらに強くなる。


細かな砂が頬へ当たる。


痛い。


「プル、水袋を中へ!」


「ぷる!」


外へ出していた荷物を、プルが身体の中へ包み込む。


吸収ではない。


変形した身体の内側に空間を作り。


水袋。


食料。


地図。


薬。


濡らしたくない物まで次々と収めていく。


「まだ持てる?」


「ぷるる!」


二本の触手が上がる。


余裕らしい。


以前なら。


荷物を守るためにルークが一つずつ鞄へ戻していた。


今は。


歩きながら。


プル一匹で終わる。




前を行くサンドスネークが、一つの岩壁の前で止まった。


高い岩が斜めに重なっている。


外から見ると。


行き止まりだった。


「ここ?」


蛇が消える。


「えっ」


岩の根元。


人間なら気づかないほど細い隙間。


そこへ潜り込んだ。


レイが近づく。


匂いを嗅ぐ。


「奥がある」


ルークはしゃがんだ。


確かに。


隙間の向こうから。


僅かに冷たい空気が来ている。


「でも僕たちは入れない」


蛇なら入れる。


イズナでも厳しい。


人間のルークは絶対に無理だ。


「外れ?」


その瞬間。


地面の下から。


かさかさ。


音がした。


少し離れた場所。


サンドスネークの頭が出る。


「そっち?」


蛇がまた消える。


ルークたちは回り込む。


岩壁の裏。


砂に半分埋まった場所に。


人一人が屈めば通れそうな穴があった。


「……見つけられないよ、こんなの」


入口は低い。


だが。


その奥。


少し広くなっている。


天然の岩窟。


「入れる」


レイが先に奥へ進む。


すぐ戻ってきた。


「危険な臭いはない」


「よし。全員中へ!」


イズナ。


プル。


ルーク。


最後にソラ。


サンドスネークも。


いつの間にか中に入っていた。




数分後。


外が暗くなった。


夜ではない。


砂だった。


岩窟の入口から見えていた空が。


黄色。


茶色。


そして。


ほとんど何も見えない色へ変わる。


風の音が響く。


ごう。


ごう。


岩の外側を。


大量の砂が叩いている。


「……間に合った」


ルークは息を吐いた。


入口へ近づこうとする。


「行くな」


レイが止めた。


「ちょっと見るだけ」


「飛ばされたいなら行け」


「やめとく」


即座に諦める。


岩窟の奥は。


思ったより広かった。


五人ほどなら余裕で休める。


天井も高い。


外から砂は少し入ってくるが。


直撃はしない。


「この子、ここ知ってたんだ」


ルークがサンドスネークを見る。


蛇は。


岩の端。


小さなくぼみの中へ身体を丸めている。


ここで生まれたのか。


以前使ったことがあるのか。


それは分からない。


でも。


あのまま街道にいたら。


かなり危険だった。


「ありがとう」


サンドスネークが頭を上げる。


それだけ。


すぐまた丸くなる。


レイが隣へ伏せた。


「役に立ったな」


「役に立つとかじゃなくて」


「分かってる」


「まだ何も言ってないよ」


「顔で分かる」


少し悔しい。




砂嵐はすぐには終わらなかった。


三十分。


一時間。


風の音は。


弱くなるどころか。


さらに強くなった。


「今日、このままここで泊まる可能性あるね」


「その方がいいかもしれん」


レイが答える。


ルークは荷物を確認する。


食料はある。


水もある。


問題ない。


むしろ。


無理に進む理由がない。


「じゃあ少し休もう」


ソラが翼を畳む。


イズナも壁際へ座った。


プルは身体の中から必要な荷物だけを出していく。


その時。


入口から。


強い風が吹き込んだ。


「うわっ!」


砂が大量に入ってくる。


ルークが腕で顔を覆う。


プルが反応した。


二本の触手を入口両脇の岩へ。


身体を一気に横へ広げる。


【変形 Lv.4】


薄い膜。


だが。


全部を塞がない。


上部に細い隙間を残す。


空気は通る。


砂だけを受け止める。


「それいい!」


「ぷる!」


プルの表面へ砂が溜まる。


一定量になると。


外側へ流す。


また受ける。


「もう完全に扉だね」


「ぷるる!」


嬉しそうだ。


レイがそれを見る。


「前より器用になったな」


プルの身体が止まった。


一瞬。


それから。


大きく跳ねた。


「褒められたの分かったんだ」


「余計なことを言うな」


「照れてる?」


「違う」


絶対に違わない顔だった。




ルークは壁へ背を預けた。


少し離れた場所。


サンドスネークもいる。


普段なら。


ルークたちが休み始めても。


必ず距離を取る。


今日は。


逃げ場所が同じだからか。


近い。


三歩ほど。


それでも。


蛇は落ち着いていた。


「今なら薬、塗れるかな」


口にして。


すぐ首を振る。


横腹の傷は。


既にかなり乾いている。


急いで触る必要はない。


「やめた」


レイが片目を開く。


「成長したな」


「何でみんな僕を子供扱いするの」


返事はなかった。




しばらくして。


イズナが立ち上がった。


サンドスネークを見る。


蛇も頭を上げる。


二匹の視線が合う。


イズナが一歩。


近づく。


蛇は動かない。


もう一歩。


蛇の身体が僅かに縮む。


警戒。


イズナはそこで止まった。


伏せる。


それだけ。


襲わない。


触らない。


ただ。


同じ場所にいる。


ルークは黙って見ていた。


最初に共生契約を結ぶ前のイズナも。


こうだった。


距離を測る。


相手を見る。


自分で近づく。


だから。


ルークは何も言わない。


数分後。


サンドスネークの身体から。


少しだけ力が抜けた。


頭が下がる。


イズナも目を閉じた。


三歩ほどの距離。


それだけ。


でも。


昨日までならなかった光景だった。




夕方近く。


風の音が少しずつ弱くなった。


プルが入口を塞いでいた身体を戻す。


外。


景色が変わっていた。


街道の一部は砂に埋まり。


岩の根元には新しい砂丘ができている。


「こんなに変わるんだ……」


ルークが外へ出る。


自分たちが歩いてきた跡。


全部。


消えていた。


「道分かる?」


ルークがレイを見る。


レイは少し考える。


鼻を動かす。


「臭いは残ってる。ただ、街道は埋まってる」


上空へソラが飛ぶ。


高く。


何度も旋回する。


「ピィ!」


南東。


どうやら街道は見えるらしい。


「なら戻れそうだね」


荷物を整える。


野営する必要はなさそうだ。


あと数時間歩けば。


次の宿場まで届く。




出発しようとした時。


サンドスネークが。


岩窟の奥へ戻った。


ルークは止まる。


「ここに残る?」


蛇は奥へ進む。


この場所を知っている。


ここなら生きられる。


水場も。


隠れ場所も。


あるのかもしれない。


ルークは少しだけ寂しくなった。


でも。


呼ばない。


「じゃあね」


手を振る。


蛇は返さない。


当たり前だ。


ルークたちは岩窟を出る。




十歩。


二十歩。


後ろから音はない。


「行こう」


前を向く。


レイ。


プル。


イズナ。


ソラ。


四匹と一緒に。


砂へ埋まりかけた街道を進む。


それでいい。


そう思った。




しばらくして。


プルが振り返った。


「ぷる?」


ルークも見る。


岩窟の入口。


小さな頭。


サンドスネーク。


こちらを見ている。


でも。


出てこない。


「……来ないよね」


ルークは笑う。


また前を向く。


その瞬間。


砂を擦る音。


するする。


近づく。


レイの耳が動く。


「来たぞ」


「え?」


振り返る。


サンドスネークが。


今までより速く。


こちらへ向かっていた。


五歩。


四歩。


三歩。


二歩。


そして。


ルークのすぐ横を通り過ぎる。


止まった場所は。


先頭近く。


レイより少し後ろ。


蛇は。


初めて。


ルークたちの後ろではなく。


同じ方向を向いた。


「……一緒に来るの?」


返事はない。


そのまま。


進み始める。


ルークは追い越さないように歩いた。


名前もない。


契約もない。


まだ触れられもしない。


それでも。


小さなサンドスネークは。


自分の隠れ家へ残る道ではなく。


ルークたちと進む道を。


自分で選んだ。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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次回もよろしくお願いします!

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