↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/73

第61話「次の土地へ」

いつもお読みいただきありがとうございます!

皆さまの応援のおかげで、ランキングに掲載していただくことができました!

少しずつ順位も上がっており、本当に嬉しく思っています。

毎日のPVやブックマーク、評価のひとつひとつが、続きを書く大きな励みになっています。

本当にありがとうございます!

ルークと魔物たちの物語は、まだまだここからです。

今回も楽しんでいただけたら嬉しいです!



地図の上に広がる色は、リューデン周辺とはまるで違っていた。


湿地を示す青や緑は南へ行くほど減り、代わりに茶色と薄い黄土色が増えていく。ギルド職員が指を置いた都市は、その乾いた土地の入口にあった。


「ここがラグナ?」


ルークが尋ねる。


「ああ。正確には砂漠そのものじゃない。乾燥地帯と交易路の境にある街だ」


職員は地図を指でなぞった。


「リューデンから南へ街道を使えば、普通の馬車で七日から八日。途中に二つ宿場がある」


「結構遠いですね」


「湿地を抜ければ道自体は悪くない。ただ、南へ行くほど水場が少なくなる」


水。


その言葉にプルが小さく揺れた。


ルークは足元を見る。


「プル、大丈夫?」


「ぷる?」


たぶん何を心配されたのか分かっていない。


レイが横から言う。


「こいつは飲まないだろ」


「そうなんだけど、乾燥が苦手だったりしないかなって」


「ぷるる」


プルが少し胸を張るように膨らんだ。


平気だと言いたいらしい。


「まだ行くと決めてないぞ」


レイが言った。


「あ」


ルークは地図から顔を上げる。


その通りだった。


薬瓶に使われていた砂が、乾燥地帯のものと似ている。


今分かっているのはそれだけだ。


研究側の拠点があるとは限らない。


黒幕がいるわけでもない。


「砂が付いてたから、そこへ行けば全部分かる……は早すぎるね」


「ようやく学んだな」


「その言い方やめてよ」


ギルド職員が苦笑する。


「俺も今すぐ向かえと言いに来たわけじゃない。情報として渡しておきたかっただけだ」


男は別の紙を一枚出した。


そこには薬瓶について分かったことが簡単にまとめられている。


瓶自体は珍しいものではない。


だが栓の隙間に入り込んでいた細かな砂に、赤い鉱物片が混じっていた。


同じ特徴の砂が多い地域。


その一つがラグナ周辺らしい。


「候補は他にも?」


「ある。だが街道で繋がっていて、薬品の取引も多いとなるとラグナが一番近い」


なるほど。


確定ではない。


だが次に調べる場所としては十分だった。


ルークは地図を見つめた。


リューデンへ来た時には想像もしなかった。


湿地。


黒い棘。


研究施設。


イズナ。


そして。


自分たちはもう、最初にいた村からかなり遠くまで来ている。


「行ってみたい」


口に出すと。


レイがこちらを見る。


「調査か?」


「それもあるけど」


ルークは地図の南側を見る。


「見たことない魔物がいそうだから」


数秒の沈黙。


レイがため息をついた。


「そっちが本音か」


「どっちも本音だよ」


ソラが肩の上で「ピィ」と鳴く。


少し楽しそうだった。




出発はすぐにはしなかった。


グランドマーシュタートルの状態を確認する必要があったし、南水路から救出した魔物たちもまだ治療中だ。


それに。


リューデンを出る前にやることは多かった。


翌日の昼。


ルークたちは再び治療所を訪れた。


最初に目に入ったのは、リードバードだった。


止まり木の上で身体を丸めている。


黒ずんでいた羽毛は、ほとんど元の色へ戻っていた。


【リードバード Lv13】


【状態:回復中】


【特殊状態:限界刺激・停止】


完全ではない。


だが。


明らかに良くなっている。


「もう飛べるそうだよ」


治療師が言う。


「長い距離はまだ駄目だけどね」


ルークが近づくと、リードバードが首を向けた。


以前のような怯え方はしない。


「よかった」


隣の囲いではマーシュラットが餌を食べていた。


その奥。


スワンプクラブは治療用の桶から勝手に出ようとして、助手に戻されている。


「元気になってる」


「元気すぎるのも困るけどね」


治療師は苦笑した。


「マッドリザードは?」


ルークが聞くと。


表情が少しだけ変わる。


「まだ時間が必要」


案内された奥の区画。


そこには大きな身体が横たわっていた。


【マッドリザード Lv31】


【状態:衰弱/筋損傷/骨格負荷】


【特殊状態:進化限界突破】


棘を抜いてから、悪化は止まっている。


だが。


異常に膨らんだ身体は戻らない。


高すぎるLv表示もそのままだ。


「生きてはいけると思う」


治療師が言った。


「ただし、この身体で長く動けるかは分からない」


ルークは黙った。


助けた。


でも。


全部を元に戻せたわけではない。


「主の方も同じ?」


「そこまでは酷くない。刺激を止めるのが早かったから」


それを聞いて、少しだけ肩の力が抜ける。


「今朝は自分で少し動いたよ」


「本当ですか?」


「うん。ただし当分は安静」


主は助かった。


完全ではない。


それでも。


南水路の魔物たちを見てきたからこそ、早く止められた。


無駄ではなかった。


失敗も。


遠回りも。


全部。




治療所を出ると。


プルがいつもよりゆっくり跳ねていた。


ルークは気づく。


「気になる?」


「ぷる……」


振り返っている。


治療所の奥を。


マッドリザードのいる方向。


「助けたのに、元に戻らなかったね」


「ぷる」


触手が一本、下がる。


ルークはしゃがんだ。


「でも、助けなかった方がよかったわけじゃない」


プルがこちらを見る。


「次はもっと早く見つける」


触手が僅かに上がる。


「それに、もっと治せる方法も探す」


今までは。


強くする方法ばかり考えてきた。


進化条件。


スキル。


素材。


戦い方。


でも。


強くなることが正しいとは限らない。


強すぎる力で。


壊れることもある。


「育てるって、強くするだけじゃないんだね」


レイが横を歩きながら答える。


「今さらか」


「今日は辛辣だね」


「いつもだ」


プルが小さく跳ねた。


今度は少し元気だった。




街の外へ出たのは、その翌日だった。


出発ではない。


身体を動かすための軽い訓練。


湿地編の間は戦闘続きで、まともに自分たちの変化を確認できていなかった。


街から少し離れた草地。


湿地に近い場所には、低級魔物が何体か生息している。


ルークは杖を持って歩いていた。


「今日は無理しないよ」


レイが前を向いたまま言う。


「誰に言ってる」


「全員」


「お前自身にも言え」


「……はい」


レイの耳が動いた。


次の瞬間。


「三体」


「どこ?」


「右」


葦が揺れる。


現れたのはポイズンフロッグだった。


三体。


どれも大きい。


以前なら。


まず毒を警戒し。


跳躍距離を見て。


一体ずつ動きを止めていた。


ルークは杖を構える。


だが。


「ソラ」


呼んだだけだった。


「ピィ!」


ゲイルホークが飛ぶ。


一体目のポイズンフロッグが跳ねる。


ソラはそれより高い。


翼が振られる。


風刃。


地面の泥が切れる。


直接身体を切らず、跳躍直前の足場だけを抉った。


蛙が体勢を崩す。


二体目が口を膨らませる。


毒液を吐く前に。


ソラが視界から消えた。


急降下。


翼が頭上を掠める。


強い風。


蛙が転がる。


三体目が逃げようとする。


その正面。


何もいなかった場所にレイが立っていた。


「グァッ!」


ポイズンフロッグが方向を変える。


そこには。


もう一匹のレイ。


イズナの幻。


本物は右。


幻は左。


蛙は真ん中で止まった。


その足元から。


青い触手が伸びる。


「ぷる」


プルが一体。


二体。


三体。


まとめて脚を取った。


持ち上げる。


毒液を吐けないよう顔を外へ向ける。


終了。


ルークは杖を構えたまま立っていた。


「……何もしてない」


「する必要がなかった」


レイが言う。


プルが三体の蛙を地面へ下ろす。


拘束を解く。


ポイズンフロッグたちは一瞬動かなかった。


そして。


三方向へ逃げていった。


誰も追わない。


「前は結構大変だったのにな」


ルークは投石紐にすら触れていない。


ソラが肩へ戻る。


羽を整える。


明らかに得意そうだ。


「ピィ」


「はいはい。すごかったよ」


胸がさらに張る。


イズナは少し離れたところに座っている。


自分は何もしていないような顔をしているが。


あのレイの幻がなければ、三体目は逃げていた。


「イズナもありがとう」


耳が少しだけ横へ向いた。


褒められるのにはまだ慣れていないらしい。


レイは周囲を見ながら呟く。


「こんな奴ら相手に全員で動く必要もなかったな」


「それは僕も思った」


四匹がこちらを見る。


ルークは苦笑した。


「次からは、もっと少人数でやろう」


強くなったからこそ。


戦う必要のない相手へ。


全力を出さない。


それも。


今までとは違う強さだった。




その日の午後。


ルークはギルドで南への旅程を確認した。


必要な水。


食料。


砂避けの布。


夜の冷え込みへの備え。


湿地とは必要な物がかなり違う。


「これ、全部持てるかな……」


荷物の山を前にして呟くと。


プルが触手を伸ばす。


一つ。


二つ。


三つ。


荷物をまとめて身体へ取り込もうとする。


「待って待って。吸収しちゃ駄目なやつあるから!」


「ぷる?」


「食べ物とか地図とか」


プルは触手を止めた。


少し考える。


今度は身体の一部を袋の形に変えた。


「それならありかも」


荷物を包む。


落ちない。


「便利だな」


レイが言う。


「プル、旅道具まで担当できるようになってきたね」


「ぷるる」


得意げだ。


成長は。


戦闘だけではない。




出発予定日は二日後に決まった。


夜。


宿へ戻る途中。


ルークはイズナを見る。


進化候補はまだ消えていない。


【双尾狐】


【妖狐】


どちらも選べる。


でも。


イズナは一本尾のまま歩いている。


急がない。


それでいい。


ルークも急かさない。


その時。


イズナが突然立ち止まった。


南を向く。


耳が立つ。


「どうしたの?」


風が吹いた。


湿った匂いではない。


街道の向こうから来る。


乾いた土の匂い。


ルークにはまだ、それくらいしか分からない。


イズナはしばらく南を見ていた。


やがて。


一歩。


そちらへ進む。


振り返る。


ルークを見る。


「……行きたい?」


尾が一度動いた。


ルークは笑う。


「僕も」


レイがその横を通り過ぎる。


「なら準備しろ」


ソラが空を見上げる。


プルが跳ねる。


次の土地。


次の魔物。


次の進化。


今度は何が待っているのか。


ルークは少しだけ足を速めた。


二日後。


四匹と一人は。


湿地都市リューデンを発つ。

最後までお読みいただきありがとうございます!

皆さまの応援のおかげでランキングにも掲載され、たくさんの方にルークたちの物語を読んでいただけるようになりました。

本当にありがとうございます!

ですが、ルークと魔物たちの成長はまだまだこれから。

さらなる進化、新たな出会い、そして強敵との戦いも待っています。

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマーク・評価で応援していただけると嬉しいです!

次回もぜひお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。