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魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


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第45話「消える仲間」

いつもお読みいただきありがとうございます!

おかげさまで日間ランキングに入ることができました。

読んでくださる皆さまのおかげです。本当にありがとうございます!

これからもルークと魔物たちの物語を楽しんでいただけるよう、更新を続けていきます。

今回もよろしくお願いします!


翌朝、ルークたちは再びリューデンの西門を出た。


昨日と違い、今日は戦うためではない。


捕獲者の男が話した石箱。その場所を事前に確認し、周囲の地形と逃げ道だけ調べておくことになっていた。


「明日が依頼書の置かれる日だから、今日は近づきすぎない。見るだけね」


「ぷる!」


プルが元気よく跳ねる。


レイは当然理解している。


ソラも一声鳴いて上空へ。


残るイズナは、ルークの横で灰白色の耳を動かした。


「あと、せっかくだから昨日話したことも試そう」


イズナがこちらを見る。


「気配遮断」


尾が僅かに持ち上がった。


どうやら覚えていたらしい。


昨日は幻惑を仲間との連携に組み込んだ。


今日はもう一つのスキル。


【気配遮断 Lv.1】


イズナが元々得意としていた、「見つからないため」の力だ。


ただしルークが考えている使い方は、隠れるだけではない。


「偵察に使えたら、かなり強いと思うんだ」


イズナは一度ソラを見上げた。


空から探すソラ。


地上で消えるイズナ。


二つが揃えば、探索の幅が一気に広がる。


ソラもその視線に気づいたのか、上空から一度旋回した。


「張り合うなよ」


レイが言う。


「まだ何もしてないよ」


「鳥の顔を見れば分かる」


言われて見上げる。


確かにソラはいつもより翼を大きく広げていた。


「……ちょっと張り合ってるかも」


短い鳴き声が返ってくる。


否定しているようには聞こえなかった。




西門から半日ほど南。


男から聞いた通り、枯れた柳が三本並ぶ場所は分かりやすかった。


ただし一行は、そこからかなり離れた茂みで止まった。


「ここから先は僕たち全員で行かない方がいい」


石箱を使う相手が周辺を確認している可能性もある。


五人で近づけば目立つ。


レイが鼻を動かした。


「人の匂いはない」


「最近のも?」


「ここからじゃ分からん」


ソラを飛ばせば上空から見える。


だが今のソラはゲイルホーク。


湿地ではかなり目立つ。


ルークはイズナを見る。


「やってみる?」


灰白色の耳が立った。


「無理そうならすぐ戻って。石箱には触らない。近くまで行って、匂いと足跡を見るだけ」


イズナはすぐ歩き出そうとした。


「待って」


止まる。


「僕も途中まで行く」


レイがルークを見る。


「必要ない」


「イズナ一匹で全部任せたら訓練にならないよ」


「足手まといになったらどうする」


痛いところだった。


「……ならないようにする」


「希望じゃなく方法を言え」


最近のレイは本当に厳しい。


ルークは少し考える。


「僕は柳から百歩くらい手前まで。そこで止まる。イズナだけ先に行く。何かあったらソラに合図してもらう」


レイは黙った。


数秒。


「それならいい」


許可をもらったようで少し悔しいが、正しい。


ルークは杖を持ち直した。


「行こう、イズナ」


二人で茂みを離れる。




最初のうち、イズナの姿は普通に見えていた。


灰白色の毛。


細い脚。


一本の尾。


だが数十歩進んだところで、イズナの輪郭が薄くなる。


【気配遮断 Lv.1】


透明になるわけではない。


見えている。


それなのに視線が滑る。


別の場所を確認してから戻すと、どこにいたのか一瞬分からなくなる。


「すごいな……」


声を落とす。


イズナの耳だけがこちらへ向いた。


さらに進む。


ルークは試しに一度目を閉じた。


三秒。


開く。


いない。


「……イズナ?」


返事はない。


左。


右。


前。


いない。


背後で草が小さく揺れた。


振り向く。


イズナが座っている。


「いつ後ろに?」


尾が一度動く。


少し得意そうだ。


「これ、敵にやられたら嫌だな」


レイがいれば匂いで追えるだろう。


ソラなら空から動きを見られるかもしれない。


だがルーク一人では、まだ難しい。


共生契約を結んだから居場所が分かる――というほど便利ではなかった。


ただ。


完全に分からないわけでもない。


ルークはもう一度イズナから目を離した。


今度は視覚に頼らない。


何となく。


右ではない。


前でもない。


左後ろ。


振り向く。


イズナがいた。


「……今のは分かった」


耳が立つ。


共生契約による意思疎通。


言葉ではない。


場所が頭に浮かんだわけでもない。


ただ、「そこにいる」という感覚が僅かに伝わった。


レイと契約した直後にも似た感覚があった。


それが一緒に戦ううちに強くなり、今では人の言葉まで話せる。


ルークはイズナを見る。


「君とも、いつかもっと話せるようになるのかな」


イズナが首を傾げる。


「レイみたいに」


今度は露骨に嫌そうな顔をした。


「何だ、その顔は」


遠くからレイの声が聞こえた。


「聞こえてたの?」


「聞こえてる」


「耳良すぎない?」


返事はなかった。


イズナの尾が小さく揺れている。


笑っている気がした。




予定した位置でルークは止まった。


ここから先はイズナだけ。


「お願い」


イズナの姿が薄れる。


草の間へ入った。


今度は本当に見失った。


ルークは焦らず待つ。


遠くの空にはソラ。


何かあれば合図が来る。


一分。


二分。


三分。


時間が妙に長く感じる。


その間、ルークも周囲を確認した。


地面。


木。


湿地側。


何か痕跡がないか。


そこで気づく。


細い枝が一本、途中で折れている。


自然に折れた向きではない。


少し離れた場所には泥の跡。


靴。


「……誰か通ってる?」


しゃがむ。


乾ききっていない。


古くても一日程度。


男の話では、依頼書が置かれるのは明日。


なら早い。


ルークは周囲をさらに見る。


一つだけではない。


柳へ向かう足跡。


そして。


戻ってきた跡がない。


「イズナ」


小声で呼ぶ。


反応なし。


嫌な感じがした。


柳の向こう。


気配はない。


だが誰もいないと決めつけるのは危険だ。


ルークは投石紐を腰から外した。


石を一つ入れる。


まだ回さない。


すぐ使える状態だけ作る。


杖も片手で持つ。


以前なら、この二つを同時に準備するだけで落ち着かなかった。


今は自然にできる。


少しずつ。


本当に少しずつだが、身体が戦い方を覚えている。


その時。


ソラが上空で二度鳴いた。


警告ではない。


合図。


帰ってくる。


草が揺れる。


イズナの輪郭が現れた。


「どうだった?」


イズナはすぐルークの足元へ来た。


そして地面へ鼻先を向ける。


人差し指ほどの黒いものを吐き出した。


ルークの顔が固まる。


「……これ」


黒い棘。


ただし以前に抜いた物より短い。


先端が折れている。


布を使って拾う。


中央の円。


そこから枝分かれする印。


同じだ。


「石箱の近くにあったの?」


イズナが一度頷くように頭を下げた。


さらに柳の方を見る。


そして前脚で土を二度掻く。


「足跡?」


また土を掻く。


その後、一度姿を消し、数歩先で現れた。


「誰かがいた?」


耳が立つ。


どうやら当たりらしい。


ルークは考える。


昨日捕まえた男の依頼主。


あるいは別の捕獲者。


予定より早くこの場所へ来ていた者がいる。


「何人?」


これは分からない。


イズナが黙る。


ルークもそれ以上質問しなかった。


言葉を話せない相手へ、無理に答えを求めても仕方がない。


「戻ろう。レイに匂いを見てもらう」


イズナが横へ並ぶ。


帰り道。


突然、姿が消えた。


「え?」


一瞬遅れて。


右肩に軽い衝撃。


灰白色の鼻先が触れる。


また離れる。


「……今の、わざと?」


イズナは何食わぬ顔で歩いている。


どうやら気配遮断を使って近づいたらしい。


「いたずらにも使えるんだ……」


尾が揺れた。


これは確信犯だった。




レイのところへ戻ると、すぐ黒い棘と足跡を確認させた。


レイは地面へ鼻を近づけ、柳の方向を見る。


しばらく動かない。


「一人じゃない」


「何人?」


「少なくとも二人」


ルークの表情が変わる。


「いつ?」


「新しい。昨日か、今日」


やはり早い。


依頼書が置かれる予定より前に、誰かが来ている。


「向こうは、もう捕獲者が戻らないって気づいてるのかな」


「可能性はある」


なら明日。


予定通り石箱へ現れるとは限らない。


逆にこちらを待っている可能性すらある。


ギルドへ報告する必要がある。


その時、イズナの身体が淡く光った。


ルークが振り返る。


表示が浮かぶ。


【気配遮断 Lv.1 → Lv.2】


「上がった」


昨日は幻惑。


今日は気配遮断。


ただ隠れていたからではない。


実際に敵の痕跡がある場所へ入り、見つからずに情報を持ち帰った。


スキルの使い方そのものを覚え始めている。


「これで二つともLv2か」


【ミストフォックス:イズナ】


【Lv:6】


【幻惑 Lv.2】


【気配遮断 Lv.2】


そして進化条件。


【Lv:6/20】


【幻惑 Lv.2/3】


【気配遮断 Lv.2/3】


【???】


【???】


あと一段。


二つのスキルだけなら、妖狐の条件へかなり近づいた。


だがルークはすぐ首を振る。


「焦らなくていいか」


イズナを見る。


進化はレベルだけでも、スキルだけでもない。


残る二つの条件。


そこに、この子が何を経験するかが関わっているはずだ。


「まず明日だね」


ルークは柳を見る。


依頼主へ繋がるはずだった石箱。


しかし相手は、すでに予定より早く動いている。


それでも今回は一つ違う。


空にはソラ。


匂いを追うレイ。


守るプル。


そして見つからずに近づけるイズナ。


さらにルーク自身も、少しずつ戦場に立てるようになっている。


五人で挑む最初の調査。


明日は、こちらが相手を探す番だった。

今回もありがとうございました!

皆さんは「スライムの進化先」と聞いて、どんな姿を想像しますか?

よければ感想で教えてください!

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