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魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


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第22話 山の魔物たち



グランゼルへ到着した翌朝。


ルークは朝食を済ませると、プルとレイを連れて冒険者ギルドへ向かった。


昨日のうちに宿を取って街を歩いてみたが、グランゼルはリーベルとはまるで違う。


通りを行き交う冒険者の数も多く、鎧や武器も様々だった。大剣を背負った者もいれば、巨大な盾を持った者、杖を携えた魔法使いらしき者もいる。


さらに目につくのが、荷車に積まれた大量の鉱石だった。


鉄鉱石。


銅鉱石。


見たことのない青い石。


赤黒い鉱石。


山から降りてくる荷車が絶え間なく街へ入り、逆に食料や道具を積んだ荷車が山へ向かっていく。


「本当に鉱山の街なんだな」


「ぷる!」


プルが荷車の鉱石を興味深そうに見ている。


昨日ロックリザードの鱗を吸収したことで、【硬化】に特殊な成長条件が発生した。


それを考えれば、鉱石が豊富なこの街はプルにとってかなり相性がいい可能性がある。


レイは鉱石よりも、街の外へ続く山道を気にしているようだった。


「レイは早く外に行きたい?」


レイの尻尾が一度動いた。


「僕も同じ」


昨日戦ったロックリザードだけでも、リーベル周辺とは魔物の性質が大きく違った。


ならば、山へ入ればさらに多くの魔物に出会えるはずだ。


ルークは自然と歩く速度を上げた。


グランゼルの冒険者ギルドは、リーベルのものより二回り以上大きかった。


朝から多くの冒険者が出入りしており、依頼板の前にも人が集まっている。


ルークはまず受付で冒険者証を提示した。


「リーベルから来ました。昨日グランゼルに着いたばかりです」


受付の女性が冒険者証を確認する。


「Eランクですね。従魔が二体……ハイスライムとハイウルフですか」


レイを見た女性の目が少しだけ大きくなった。


「ハイウルフを連れている魔物使いは、この辺りでも珍しいですよ」


「そうなんですか?」


「ウルフ系は気性が荒いですし、群れから離れた個体を契約まで持っていくのは簡単ではありませんから」


ルークはレイを見る。


レイは特に反応せず、静かに座っていた。


「プルの方もハイスライムですけど」


「そちらも珍しいですね。ただ、グランゼル周辺では進化したスライム自体は時々見つかります」


「本当ですか?」


思わず身を乗り出す。


「鉱山の中に住み着いている個体がいるんです。普通のスライムとは少し違う性質を持つものもいると聞きますよ」


「少し違う……」


すぐに興味が湧いた。


「鉱石を取り込んでいたりするんですか?」


「詳しいですね。その可能性が高いそうです。ただ、鉱山の奥はEランクだけでは入れない区域もあるので、最初から深入りしないでくださいね」


「分かりました」


やはり環境によって個体差がある。


祖先の記録とも一致する。


ますます楽しみになってきた。


受付を終えたルークは依頼板へ向かった。


Eランクになったことで、選べる依頼はかなり増えている。


【ロックリザード討伐】


【アイアンアント討伐】


【ケイブスパイダー討伐】


【山道周辺の魔物調査】


【オーガ出没地点確認】


名前を追うだけでも面白い。


「どれにしようかな……」


できれば一種類だけではなく、色々な魔物と戦いたい。


そう考えながら見ていると、一枚の依頼が目に入った。


【山岳外縁部 魔物間引き依頼】


【対象:指定なし】


【討伐証明を持つ山岳魔物を対象に報酬算定】


【危険度:E】


「これだ」


特定の魔物だけを狙う必要がない。


山岳地帯を歩きながら、遭遇した魔物を倒せる。


新しい魔物を見たいルークには最適だった。


「これを受けます」


受付へ依頼書を持っていく。


女性が内容を確認した。


「外縁部とはいえ、リーベル周辺より魔物は強いです。ロックリザードはもちろん、アイアンアントやストーンボアが複数で出ることもあります」


「昨日、ここへ来る途中にロックリザードを三体倒しました」


「ああ、それなら大丈夫そうですね。ただしオーガを見つけた場合は、無理に戦わず位置を報告してください」


「オーガはそんなに強いんですか?」


「単体ならE上位、個体によってはD相当です。特に山岳部のオーガは身体が大きいですから」


D。


今までより一段上。


ルークは少しだけ口元を緩めた。


「気をつけます」


受付の女性は、その表情を見て少し不安そうな顔をした。


グランゼルの北門を出ると、すぐに景色が変わった。


平地は長く続かない。


少し進むだけで道には岩が増え、緩やかな坂が山へ向かって伸びている。


左右には低い木々が生えているが、リーベル周辺の森ほど密集していない。


その分、遠くまで見渡せた。


「レイ、索敵お願い」


レイがすぐに前へ出る。


【気配察知 Lv.2】。


以前より明らかに索敵範囲が広がっていた。


ルークたちより少し前を歩きながら、時折耳を動かしている。


プルもその後ろを跳ねる。


「今日はできるだけ色々な相手と戦ってみよう。ただし、無理そうなら逃げるからね」


「ぷる!」


レイも振り返り、尻尾を一度振った。


進み始めて二十分ほど。


レイが止まる。


視線は前方の岩場。


「いる?」


レイが顔を少し下げた。


近い。


ルークも棒を構える。


岩陰から現れたのは、昨日見たロックリザードだった。


ただし。


「五体……」


昨日より多い。


「ちょうどいいか」


昨日は三体で戦い方を覚えた。


今日は五体。


同じ方法が通用するか試せる。


「プル、前。レイは回り込んで。僕はプルの近くで動く!」


二匹がすぐに動いた。


五体のロックリザードが一斉に迫ってくる。


プルから三本の触手が伸びた。


一体目の脚。


二体目の尾。


三本目は地面を這う。


以前なら、一本ずつ動かすだけでも集中が必要だった。


だが今は違う。


三本の触手が、それぞれ別の動きをしている。


「プル、二体同時にいける?」


「ぷるっ!」


一体目の前脚を引きながら、別の触手を二体目の腹の下へ潜り込ませる。


【変形 Lv.2】。


【硬化 Lv.2】。


腹の下へ入った触手が硬くなる。


「上げて!」


ロックリザードの身体が浮く。


そこへレイが走り込んだ。


【疾走 Lv.2】。


腹へ【爪撃 Lv.2】。


一体を切り裂き、そのまま着地する。


だが、別のロックリザードがレイへ噛みつこうとした。


「レイ、後ろ!」


ルークが叫ぶより早く、レイは横へ跳んでいた。


【気配察知 Lv.2】。


敵を見ていなくても動きを捉えている。


そのまま反転。


【爪撃】。


今度は脚の付け根を狙った。


ロックリザードが体勢を崩す。


「そこ!」


ルークも前へ出た。


棒で頭を殴っても効かない。


なら。


脚。


関節。


昨日の戦闘で学んでいる。


棒を横から振り、前脚を強く叩く。


ロックリザードがよろめいた。


そこへプルの触手が巻きつく。


「倒して!」


プルが横へ強く引く。


体勢の崩れていたロックリザードが地面へ転がった。


腹が見える。


レイが駆け込む。


二体目。


だが、まだ三体いる。


一体がプルへ尾を振る。


プルは身体の一部を【硬化】して受け止める。


バンッ!


以前と同じ攻撃。


しかし今回は、ほとんど弾き飛ばされなかった。


「昨日より硬くなってる?」


ロックリザードの鱗を吸収した影響。


すでに出始めているのかもしれない。


プル自身も驚いたように身体を揺らした。


「もう一回!」


次の一体が尾を振る。


プルは身体を広げた。


【硬化 Lv.2】。


今度は正面。


尾が直撃する。


鈍い音。


それでも。


耐えた。


直後。


表示が現れる。


【硬質素材吸収による適応を確認しました】


【硬化性能が上昇しました】


「やっぱり!」


スキルレベルそのものは変わっていない。


だが。


同じLv2でも。


性能が上がっている。


これなら。


もっと色々な素材を吸収させれば。


さらに強くできる。


「プル、そのまま前を任せる!」


「ぷる!」


ルークはレイを見る。


「レイ、僕と一緒に一体を崩そう!」


レイがルークの横へ来る。


残り三体。


一体がこちらへ突進してきた。


ルークは正面に立つ。


噛みつき。


避ける。


尾。


【危険察知:微弱】。


来る前に分かる。


しゃがむ。


尾が頭上を通る。


「今!」


ルークが棒を脚へ叩き込む。


ロックリザードがわずかに体勢を崩した。


その瞬間。


レイが横から入る。


【疾走】。


【爪撃】。


同じ脚。


二つの攻撃が重なり、ロックリザードの身体が大きく傾いた。


「もう一回!」


ルークが反対側の脚を打つ。


レイも逆から。


完全に体勢が崩れる。


倒れた。


腹。


「レイ!」


【爪撃 Lv.2】。


深く切り裂く。


三体目。


残り二体は、プルが一人で相手をしていた。


一体の噛みつきを硬化した触手で防ぎながら、もう一体の脚を別の触手で拘束している。


「プル、すごいな……」


以前なら。


二体同時に相手をする余裕はなかった。


今は違う。


攻撃。


防御。


拘束。


複数の触手を別々に使える。


ルークとレイが合流すると、戦況はすぐに傾いた。


一体をプルが浮かせる。


レイが腹へ。


最後の一体は、三人で囲む。


逃げようとしたロックリザードの前へレイ。


後ろへプル。


ルークは横。


「終わり!」


プルが脚を持ち上げ、レイの爪が腹を切り裂いた。


五体。


討伐。


【経験値を獲得しました】


【プル Lv:15 → Lv:16】


【レイ Lv:9 → Lv:10】


「もう上がった!」


山岳部の魔物は強い。


その分。


経験も多い。


さらに。


レイの前に表示。


【スキル熟練度が一定値に到達しました】


【爪撃 Lv.2 → Lv.3】


「レイ、【爪撃】がLv3になった!」


レイが自分の前脚を見る。


試すように。


近くの岩へ。


軽く。


爪を振る。


ガリッ。


岩に。


深い傷。


「……強い」


ロックリザードの鱗を切るにはまだ足りないかもしれない。


でも。


確実に。


攻撃力は上がっている。


「この山、かなり成長できる」


ルークは。


嬉しくなった。


さらに山を進む。


次に出会ったのは。


黒い甲殻。


六本の脚。


一匹の大きさは。


人間の膝ほど。


「アイアンアント……!」


五匹。


岩陰から。


次々に出てくる。


「今度は虫か」


甲殻。


硬そう。


でも。


ロックリザードとは違う。


動き。


速い。


さらに。


連携している。


一匹が正面。


二匹が左右。


残る二匹が後方。


「囲もうとしてる?」


レイも気づいている。


「プル、僕たちの後ろ!」


プルが移動。


背後。


二本の触手を広げる。


簡易的な壁。


「レイ、前の一体!」


レイが飛び出す。


アイアンアントが顎を開く。


レイは横へ。


【爪撃 Lv.3】。


ガキッ!


甲殻に爪が食い込む。


「通った!」


Lv3。


効いている。


レイが。


一気に一体を倒す。


その間。


左右から二体。


ルークへ。


「来い!」


一体の顎を棒で押さえる。


力が強い。


もう一体。


危険察知。


横。


避ける。


そのまま。


棒を背中へ。


ゴンッ!


硬い。


でも。


ロックリザードほどではない。


「プル!」


触手。


上から。


【硬化】。


槍。


甲殻の隙間。


突き刺さる。


「ギィッ!」


「そこが弱い!」


脚の付け根。


甲殻の継ぎ目。


「レイ、関節!」


レイが理解する。


【疾走】。


一体の横。


【爪撃 Lv.3】。


脚。


切断。


動きが止まる。


「いい!」


倒し方。


分かれば。


速い。


五体のアイアンアントを倒すまで。


それほど時間はかからなかった。


【経験値を獲得しました】


【プル Lv:16 → Lv:17】


【レイ Lv:10 → Lv:11】


そして。


プル。


【変形 Lv.2】


【スキル熟練度上昇】


【変形 Lv.3への進化条件を一部達成しました】


「変形も来た……!」


さらに。


アイアンアントの甲殻。


ルークは一部を採取する。


「プル、これも吸収してみよう」


「ぷる!」


黒い甲殻が。


プルの中へ消える。


【アイアンアントの甲殻を吸収しました】


【硬質素材を確認しました】


【硬化経験を獲得しました】


続けて。


【硬化 Lv.2】


【成長条件:2/3】


「二つ目!」


ロックリザード。


アイアンアント。


異なる硬い素材を。


吸収。


あと一つ。


「もしかして三種類の硬質素材?」


ハイスライムへの進化も。


三種類。


あり得る。


「あと一種類探そう」


「ぷる!」


プルが。


やる気満々で跳ねた。


その後も。


止まらなかった。


ストーンラット。


三体。


ロックリザード。


二体。


アイアンアント。


七体。


途中。


少し休憩を挟みながら。


山を進む。


戦うたび。


動きが良くなる。


プルは。


複数の触手を扱う速度が上がった。


レイは。


爪撃Lv3を使いこなし始める。


ルークも。


二匹の動きへ合わせる。


夕方。


最後の戦闘を終えた時。


表示。


【プル Lv:17 → Lv:18】


【レイ Lv:11 → Lv:13】


「一日で……」


レイ。


四レベル。


プル。


三レベル。


「リーベルとは全然違う」


相手が強い。


種類も多い。


そして。


新しい戦い方を。


毎回覚えられる。


プルのキングスライム。


確認。


【キングスライム】


【進化条件】


【Lv:18/20】


【統率行動:???】


【スキル条件】


【硬化 Lv.2:達成】


【変形 Lv.2:達成】


【吸収 Lv.2:達成】


【特殊条件:???】


「あと二レベル」


かなり近い。


ただ。


まだ。


二つ分からない。


【統率行動】。


【特殊条件】。


「レベル二十になったら、何か見えるかもしれない」


それに。


プルの【硬化】も。


あと一種類の素材。


レイも。


ハイウルフになってから。


すでにLv13。


「このまま行こう」


ルークは。


山のさらに奥を見る。


今日は。


外縁部。


まだ。


グランゼルの。


入口に過ぎない。


奥には。


もっと。


強い魔物がいる。


「明日は、もう少し奥まで行ってみよう」


プルが跳ねる。


レイも。


山を見る。


三人とも。


同じ気持ちだった。


もっと。


戦いたい。


もっと。


強くなりたい。


帰ろうとした。


その時。


レイが。


突然止まった。


耳。


山の上。


【気配察知 Lv.2】。


何か。


いる。


「敵?」


レイは。


動かない。


少し。


迷う。


そして。


山の上を見る。


ルークも。


そちらへ目を向けた。


遠い。


高い場所。


岩壁。


その上を。


何かが。


飛んだ。


一瞬。


影。


大きな翼。


「……鳥?」


すぐに。


見えなくなる。


「ハーピーかな?」


分からない。


でも。


この山には。


空を飛ぶ魔物もいる。


「明日、もう少し上まで行ってみよう」


「ぷる!」


レイも。


静かに山を見つめていた。


ルークたちはまだ知らない。


この山で。


これまでとは少し違う。


新しい出会いが。


待っていることを。

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