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魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


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第15話 二匹で戦う

「共生契約なんてものは、俺は一度も聞いたことがない」


男の言葉に。


ルークは少し考えた。


「珍しい契約なんですか?」


「珍しいも何も、知らん」


男は即答した。


「少なくとも、このギルドで扱っている魔物使いの資料には載っていないはずだ」


「そうですか……」


やはり。


普通ではない。


プルとの契約。


レイとの契約。


そして。


自分にだけ見える進化情報。


何かがある。


だが。


「まあ、今考えても分からないか」


「……お前、気にならないのか?」


男が呆れた顔をする。


「気になります」


「ならもう少し驚け」


「でも、調べても分からないなら仕方ないので」


分からないことは。


試す。


調べる。


観察する。


前世からずっとそうだった。


「それより」


ルークは尋ねた。


「共生契約だから、従魔登録できないとかありますか?」


「いや」


男が首を振る。


「契約が成立していて、魔物がお前の指示を理解しているなら問題ない」


「よかった」


「ぷる!」


「…………」


レイも。


ほんの少し尻尾を動かした。


「ただし」


男の表情が真剣になる。


「何か分かったら報告しろ」


「分かりました」


「こっちでも古い資料を当たってみる」


「お願いします」


それで。


話は終わった。


今は。


それでいい。


ルークには。


もっと気になることがあった。


依頼掲示板。


「討伐依頼……」


昨日までは。


Fランク向けの採取依頼ばかり見ていた。


だが。


今日は違う。


プル。


そして。


レイ。


二匹いる。


なら。


できることも増える。


「これかな」


一枚の依頼書を取る。


【討伐依頼】


【対象:ゴブリン】


【討伐数:五体以上】


【場所:リーベル北東部森林】


【推奨ランク:F】


「ゴブリン……」


『魔物観察録』にも載っていた。


小柄な人型魔物。


知能は低い。


だが。


武器を使う。


そして。


群れる。


一体なら。


ホーンラビットより少し強い程度。


しかし。


複数になると危険度が跳ね上がる。


「これにしよう」


「ぷる!」


レイが。


依頼書を見上げる。


「レイ」


ルークはしゃがむ。


「今日は戦うよ」


「…………」


耳が立つ。


「怪我は?」


後ろ脚。


もう包帯は外している。


軽く歩かせる。


問題ない。


「無理はしないこと」


「…………」


「プルも」


「ぷる!」


「特にプル」


「ぷる!?」


「進化してから調子に乗ってるから」


「ぷるる!」


レイが。


プルを見る。


そして。


ふい。


顔を逸らした。


「今、笑った?」


「…………」


「狼って笑うのかな」


「ぷる!」


「プルは笑いすぎ」


北東部森林。


昼前。


ルークたちは。


森の中を歩いていた。


先頭。


レイ。


中央。


ルーク。


足元にプル。


自然と。


そんな並びになっていた。


「レイ、どう?」


「…………」


鼻を動かす。


地面。


木。


風。


【嗅覚 Lv.2】


それだけではない。


野生で生きてきた経験。


レイは。


プルより圧倒的に索敵が得意だった。


突然。


止まる。


「…………」


姿勢を低くする。


「いた?」


レイが。


右を見る。


ルークも見る。


何も見えない。


「プル、静かに」


「ぷる……」


三人で。


ゆっくり進む。


声。


「ギャッ」


「ギャギャッ」


「…………ゴブリン」


木々の向こう。


三体。


一体は棍棒。


一体は錆びた短剣。


もう一体は。


何も持っていない。


「三体か」


今までなら。


かなり危険だった。


でも。


「やってみよう」


ルークは二匹を見る。


「まずレイが回り込む」


レイの耳が動く。


「プルは僕と待つ」


「ぷる」


「レイが動いたら、一番近い奴を止める」


「…………」


レイが。


音もなく消えた。


「速い……」


森の中。


木から木へ。


低い姿勢で走る。


ほとんど音がしない。


「これが【疾走】か」


プルとは。


全く違う。


面白い。


同じ魔物でも。


戦い方が違う。


数秒後。


ゴブリンの背後。


灰色の影。


レイが。


飛び出した。


「ガウッ!」


「ギャッ!?」


最後尾のゴブリンへ。


爪。


【爪撃】


肩から血が飛ぶ。


「今!」


「ぷる!」


残り二体が振り返る。


その瞬間。


プルが伸びる。


二本。


左右。


「ギャ!?」


一体の足へ。


巻きつく。


転倒。


だが。


もう一体。


短剣を持ったゴブリンが。


ルークへ向かってきた。


「っ!」


速い。


「ギャァ!」


短剣。


ルークが棒で受ける。


ガッ!


「重っ……!」


人型。


武器。


今までとは違う。


二撃目。


「まず――」


横から。


灰色。


レイ。


ゴブリンの腕へ噛みつく。


「ギャアッ!」


短剣が落ちる。


「ありがとう!」


ルークが棒を振る。


頭。


ゴッ!


ゴブリンが倒れる。


「プル!」


「ぷる!」


残る二体。


一体はプルが拘束。


もう一体は。


レイと対峙している。


「レイ、右!」


レイが動く。


ゴブリンの棍棒。


空振り。


その隙に。


プル。


硬化。


尖った身体。


「ぷるっ!」


突く。


腹。


「ギャッ!」


浅い。


でも。


十分。


ゴブリンの注意がプルへ。


レイが背後。


【爪撃】。


倒れる。


「残り!」


拘束されていた一体。


プルが身体を伸ばす。


硬化。


レイが反対側へ回る。


ゴブリンが。


左右を見る。


逃げようとする。


「行け!」


プルと。


レイ。


同時。


青と灰色。


二匹の攻撃が。


同時に入った。


静かになる。


「…………」


ルークは息を吐いた。


「勝った」


「ぷる!」


レイは。


すぐ周囲を見る。


「…………」


「警戒してるの?」


レイの耳が。


別方向へ向く。


「まだいる?」


鼻を動かす。


そして。


歩き始めた。


「待って」


ルークも追う。


少し先。


ゴブリン。


二体。


「依頼は五体以上……」


ちょうど。


合計五体。


「やれる?」


「ぷる!」


レイは。


すでに構えている。


「よし」


ルークも棒を握る。


「行こう」


二体なら。


さっきより楽だった。


レイが一体を引きつける。


プルがもう一体を拘束。


ルークも。


孤立した方へ加わる。


三対一。


先に倒す。


残り。


囲む。


逃がさない。


「プル!」


「ぷる!」


「レイ!」


「ガウッ!」


最後のゴブリンが。


倒れた。


【ゴブリンを討伐しました】


【経験値を獲得しました】


表示。


そして。


【プルのレベルが上昇しました】


【Lv:4 → Lv:5】


「よし!」


「ぷる!」


さらに。


別の表示。


【レイのレベルが上昇しました】


【Lv:3 → Lv:4】


「レイも!」


レイが。


自分の身体を見る。


もちろん。


表示はレイには見えていない。


「レベル上がったよ」


「…………」


「強くなった」


耳が立つ。


「分かった?」


尻尾。


一度。


振る。


「分かりやすいなあ」


「…………」


顔を逸らす。


「ぷる!」


プルがレイへ体当たり。


ぽよん。


レイが。


前脚で押し返す。


ころん。


「ぷる!?」


「仲良いね」


二匹が同時にルークを見る。


「……違うの?」


討伐証明になる部分を回収する。


その途中。


ルークは気づいた。


「レイ」


進化情報。


【進化候補:7】


そして。


【ハイウルフ】


【条件】


昨日まで。


全て。


【???】


だった。


だが。


一つだけ。


変わっている。


【ハイウルフ】


【Lv:???】


【戦闘経験:1/10】


【???】


「出た……!」


ルークの目が輝く。


「ぷる?」


「レイの進化条件!」


レイが振り返る。


「一つ分かった!」


【戦闘経験:1/10】


「戦闘を経験すること」


ただし。


五体倒したのに。


一。


「討伐数じゃない」


一回の戦闘。


それを一として数えている。


「あと九回」


でも。


まだ他にも条件がある。


レベル。


そして。


不明条件。


「よし」


ルークは笑う。


「しばらく戦おう」


「ぷる!」


レイの耳も立つ。


「レベルを上げる」


一。


「スキルも鍛える」


二。


「レイの進化条件を探す」


三。


そして。


プル。


こちらも。


次の進化が待っている。


【キングスライム】


【アーマースライム】


【ポイズンスライム】


そして。


金色に光る。


【???】


「忙しくなってきた」


でも。


楽しい。


この感覚。


前世で。


新しい育成ゲームを始めた時。


何も分からない状態で。


ひたすら試していた頃と同じ。


いや。


それ以上だ。


目の前にいるのは。


データではない。


「プル」


「ぷる?」


「レイ」


「…………」


一緒に戦い。


一緒に成長する。


仲間だ。


「もっと強くなろう」


「ぷる!」


レイが。


一度。


強く尻尾を振った。


その日。


ルークたちは。


依頼達成後も。


森に残った。


無理のない範囲で。


魔物を探す。


一戦。


二戦。


三戦。


フォレストラット。


ホーンラビット。


ゴブリン。


戦うたびに。


二匹の動きが変わる。


最初は。


ルークが全て指示していた。


「レイ、右!」


「プル、止めて!」


それが。


少しずつ。


減っていく。


レイが敵を誘導する。


その先へ。


プルが先回りする。


プルが拘束する。


レイが。


最も危険な敵を狙う。


「…………」


三戦目。


ルークは。


ほとんど指示を出さなかった。


それでも。


勝った。


「すごいな」


「ぷる!」


レイが。


プルを見る。


プルも。


レイを見る。


言葉はない。


それでも。


少しずつ。


互いの動きを理解し始めている。


【戦闘経験:4/10】


「あと六回」


ルークは。


拳を握った。


この調子なら。


遠くない。


レイの。


初めての進化。


そして。


プルの。


二度目の進化。


まだ。


三匹目はいらない。


今は。


この二匹と。


どこまで強くなれるのか。


それを。


試してみたかった。

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