↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの進化論 ~最弱スライムから始める神話級魔物育成~  作者: 庵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/73

第14話 新しい仲間

「名前、か……」


ルークは腕を組んだ。


目の前には。


一匹の灰色の狼。


昨日までなら。


こうして真正面から見つめるだけでも警戒されていた。


だが今は違う。


「…………」


狼も。


静かにルークを見返している。


共生契約。


それを結んでから。


まだほとんど時間は経っていない。


それでも。


確かに。


何かが変わっていた。


言葉が通じるわけではない。


プルと同じだ。


だが。


なんとなく。


以前より感情が分かる。


警戒している。


気になっている。


嫌がっている。


そんな曖昧なものが。


契約を通じて伝わってくる。


「プルの時は簡単だったんだけどな」


「ぷる!」


「青くて、ぷるぷるしてたから」


「ぷる」


プルが得意げに揺れる。


「でも、この子は……」


ルークは狼を見る。


灰色の毛。


鋭い目。


まだ若い。


身体も成体ほど大きくない。


それでも。


戦っている時の姿は。


速く。


冷静で。


無駄がなかった。


「…………レイ」


狼の耳が動いた。


「どうかな」


「…………」


「レイ」


もう一度。


呼んでみる。


短く。


呼びやすい。


戦闘中でも。


すぐに届く。


「君の名前」


ルークは狼の目を見る。


「レイっていうのはどう?」


「…………」


狼が。


ゆっくり近づく。


そして。


ルークの手へ。


鼻先を触れた。


共生契約から。


微かな感情が流れてくる。


拒絶ではない。


むしろ。


少しだけ。


温かい。


「気に入った?」


尻尾が。


ほんの少し動いた。


「決まりだね」


ルークは笑った。


「今日から君はレイだ」


「ぷる!」


プルが勢いよく跳ねる。


レイがそちらを見る。


「プルもよろしくって」


「ぷる!」


プルが近づく。


レイは逃げない。


プルが。


ぺた。


レイの前脚へ触れる。


「…………」


レイが前脚を上げる。


プルの頭へ。


ぽす。


「ぷる?」


もう一度。


ぽす。


「ぷる!」


プルが嬉しそうに跳ねた。


「仲良くなったなあ」


そう言った瞬間。


プルがレイへ体当たりした。


ぽよん。


「…………」


レイが固まる。


「プル?」


「ぷる!」


もう一度。


ぽよん。


「…………」


レイの目が細くなった。


「待って。それ怒ってるかもしれない」


「ぷる?」


レイが。


前脚で。


プルを押した。


ころん。


「ぷる!?」


プルが転がる。


起き上がる。


「ぷるる!」


体当たり。


レイが避ける。


プルが通り過ぎる。


「ぷる!?」


レイが追いかける。


「ちょっと待って!」


二匹が走り回る。


「仲良くなったんだよね!?」


「ぷるるるる!」


「…………!」


レイの尻尾が。


大きく動いていた。


「……遊んでるのか」


ルークは笑った。


あの森で。


親の身体の間に丸くなっていた狼。


人間に牙を剥き。


誰も近づけなかった狼。


その狼が。


今は。


プルを追いかけている。


それだけの光景が。


ルークには。


少し嬉しかった。


しばらくして。


二匹が戻ってくる。


「満足した?」


「ぷる!」


レイは。


何事もなかったような顔で座る。


「レイも楽しかったでしょ」


「…………」


顔を逸らす。


「絶対楽しかったよね」


「…………」


「尻尾すごかったけど」


「…………」


さらに顔を逸らした。


「分かりやすくなってきたなあ」


ルークは改めて。


レイの情報を確認した。


【個体名:レイ】


【種族:ウルフ】


【Lv:3】


【スキル】


【嗅覚 Lv.2】


【爪撃 Lv.1】


【疾走 Lv.1】


「名前も反映されてる」


プルの時と同じ。


そして。


進化。


【進化候補:7】


【ハイウルフ】


【条件:???】


【グレイハウンド】


【条件:???】


【ナイトウルフ】


【条件:???】


【???】


【条件:???】


【???】


【条件:???】


【???】


【条件:???】


【???】


【条件:???】


「七つ……」


ルークは考える。


プルは最初。


十二だった。


そして。


ハイスライムへ進化したことで。


八つに減った。


進化するたび。


選択肢が変わる。


おそらく。


レイも同じ。


「ハイウルフが一番普通の進化かな」


「…………」


レイが首を傾げる。


「プルでいうハイスライムみたいなもの」


「ぷる!」


「レイも進化したい?」


「…………」


当然。


意味は分からない。


でも。


共生契約を通じて。


わずかに。


何かが伝わってきた。


強く。


なりたい。


「…………」


ルークの表情が変わる。


もう一度。


同じ感情。


強く。


もっと。


強く。


あの時。


契約した瞬間にも感じた。


守れなかった。


二度と。


同じ思いをしたくない。


「…………そっか」


ルークはしゃがむ。


レイと目線を合わせる。


「強くなろう」


レイの耳が立つ。


「でも」


ルークは続ける。


「急がなくていい」


「…………」


「強くなる方法は、一つじゃないから」


レイの進化候補。


七つ。


どれを選ぶかで。


未来は変わる。


「ちゃんと調べよう」


前世でもそうだった。


目の前の進化先へ。


何も考えず進ませる。


そんな育て方は。


ルークの性格には合わない。


「レイに一番合う進化を探す」


「…………」


「僕が決めるんじゃなくて」


少し笑う。


「一緒に決めよう」


レイは。


静かにルークを見る。


そして。


一度だけ。


尻尾を振った。


「さて」


ルークが立ち上がる。


「町に入れるか試そう」


「ぷる!」


レイの身体が。


わずかに強張った。


町。


大勢の人間。


まだ怖い。


それが伝わってくる。


「大丈夫」


ルークはレイを見た。


「今度は契約してる」


冒険者証を取り出す。


「僕の仲間だって説明できるから」


仲間。


その言葉に。


レイの耳が動いた。


再び。


リーベルの門。


昨日と同じ門番がいた。


「あ」


門番もルークに気づく。


「昨日の魔物使いじゃないか」


「こんにちは」


「また来たのか」


視線が。


レイへ。


「…………って、まだいるじゃねえか」


「はい」


「だから野生のウルフは――」


「契約しました」


「何?」


ルークが冒険者証を見せる。


「昨日の夜に」


「…………」


門番がレイを見る。


「従属契約か?」


「共生契約です」


「きょうせい?」


「はい」


「……聞いたことないな」


やはり。


ルークは思った。


プルの時から。


少し気になっていた。


共生契約。


少なくとも。


一般的な契約ではない。


「まあ、契約済みならギルドで確認してもらえ」


門番がレイを見る。


「町の中で暴れさせるなよ」


「大丈夫です」


「本当か?」


「たぶん」


「たぶんって言うな」


ルークは笑った。


「行こう」


「ぷる!」


レイが。


町の門を見る。


人。


馬車。


騒音。


一歩。


足が止まる。


ルークは急かさない。


プルも。


レイの横で止まった。


「…………」


レイが。


ルークを見る。


「大丈夫」


それだけ。


レイが一歩。


町へ入った。


人の多さに。


レイはずっと周囲を見ていた。


誰かが近づけば。


身体が強張る。


武器を持つ冒険者とすれ違えば。


視線がそちらへ向く。


だが。


唸らない。


牙も剥かない。


ルークの横を。


静かに歩く。


「偉いね」


「…………」


「ぷる!」


「プルも偉いよ」


「ぷる!」


「なんでプルまで褒められたがるの」


冒険者ギルド。


扉を開く。


ざわざわとした声。


レイが止まる。


「…………」


冒険者。


武器。


酒の匂い。


笑い声。


「レイ」


ルークが呼ぶ。


狼の耳が動く。


「行こう」


一歩。


ルークが入る。


プルが続く。


そして。


レイも。


中へ入った。


「あら」


受付嬢が気づいた。


「ルークさん」


「こんにちは」


「昨日、戻ってこられなかったので心配していたんですよ」


「すみません」


「薬草採取の依頼は?」


「あ」


完全に忘れていた。


「採ってあります」


「よかったです」


鞄から薬草を取り出す。


十束。


受付嬢が確認する。


「問題ありません」


【依頼達成】


初めて。


冒険者として依頼を完了した。


「これが報酬です」


硬貨を受け取る。


「ありがとうございます」


前世のゲームなら。


何度も見た。


依頼達成。


報酬。


でも。


実際に自分で森へ行き。


採取し。


持ち帰り。


金を受け取る。


「…………」


不思議な感覚だった。


「冒険者になったんだな」


小さく呟く。


「ぷる!」


受付嬢が。


レイを見る。


「それで……」


「はい」


「昨日はいませんでしたよね?」


「森で出会いました」


「ウルフ……ですよね?」


「はい。レイです」


レイの耳が動く。


「契約したので、従魔として登録したいです」


「分かりました」


受付嬢が書類を取り出す。


「契約方式は従属契約ですか?」


「共生契約です」


「…………」


受付嬢の手が止まる。


「共生契約?」


「はい」


「少々お待ちください」


奥へ消える。


「…………」


ルークはプルを見る。


「やっぱり珍しいみたいだね」


「ぷる」


しばらくして。


受付嬢が戻ってきた。


一人ではない。


隣に。


四十代ほどの男。


短い黒髪。


左頬に古い傷。


体格もいい。


腰には剣。


どう見ても。


受付係ではない。


男が。


ルークを見る。


次に。


プル。


そして。


レイ。


「お前がルークか」


「はい」


「職業は魔物使い」


「はい」


「そっちのスライムとウルフが契約魔物」


「そうです」


男の目が細くなる。


「二匹とも?」


「え?」


「二匹とも共生契約なのか?」


「はい」


「…………」


男が黙る。


受付嬢も。


少し緊張している。


「何か問題がありますか?」


ルークが尋ねる。


男は。


しばらく答えなかった。


やがて。


口を開く。


「問題かどうかは、まだ分からん」


「…………?」


「だが」


男の視線が。


プルへ。


「共生契約なんてものは」


次に。


レイへ。


「俺は二十年以上冒険者をやってきたが」


最後に。


ルークへ戻る。


「一度も聞いたことがない」


「…………」


ルークの胸が。


わずかに高鳴った。


やはり。


普通ではない。


プルとの契約。


レイとの契約。


そして。


十二の進化先。


見える進化条件。


分からないことばかり。


男が。


腕を組む。


「少し話を聞かせてもらえるか」


ルークは。


プルとレイを見る。


「ぷる?」


「…………」


どうやら。


冒険者としての生活は。


思っていたより早く。


普通ではなくなり始めたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。