第5章 決断
緊急軍事会議は休むことなく続いていた。
スクリーンには、ポータルへの初突入映像が何度も繰り返し再生されていた。
短い戦闘。
ダンジョン。
モンスター。
ボス。
そして無傷での帰還。
会議室には緊張した沈黙が漂っていた。
その沈黙を、ついに一人の将校が破る。
「もしこれが繰り返し可能な構造だとしたら……制御できるということだ」
「あるいは封鎖できる」別の将校が続けた。「完全にな」
テーブルの上に新しい分析データが並べられる。
短い議論の後、結論は明白になった。
「確認されたすべてのポータルを調査せよ」
司令官が命じる。
「同じシナリオなら、殲滅し封鎖する」
命令は全軍に送られた。
最初の作戦はすぐに開始された。
軍は次々とポータルへ突入していく。
結果は同じだった。
ダンジョン。
世界から切り離されたような閉鎖空間。
薄暗い通路。
内部に存在する生物──ゴブリン、スライム、その他の歪んだ弱い生命体。
それらは訓練された部隊にとって大きな脅威ではなかった。
戦闘は短く、体系的だった。
前進。
掃討。
抵抗の迅速な制圧。
いくつかのケースでは、観察のためにあえてボスを生かしたまま残すこともあった。
後に報告書が司令部へ提出される。
科学者たちが分析結果を読み上げた。
「ダンジョン内部の空間は既知の物理法則に従っていません」
研究者の一人が言った。
「それは閉鎖的かつ自律的な構造です。外部座標は一切検出されません」
彼は少し間を置く。
「つまり、“場所”という概念では説明できません」
「ではこれは何だ?」将校が鋭く問う。
科学者は首を振った。
「分かりません。既存のどのモデルでも、この空間の起源は説明できません。これは別の構造です。別の性質を持っています」
室内に再び沈黙が落ちる。
それでも作戦は続行された。
世界規模の命令が発令される。
「発見されたすべてのポータルを閉鎖せよ」
司令官が言った。
「例外はない。リスクも許さない」
「民間人が入る可能性がある場合、ポータルは破壊せよ」
各国も同様の措置を取った。
世界は同時に動き出していた。
並行して、“コア”の研究も始まった。
ボスからドロップする球体は研究機関へ送られた。
そしてすぐに明らかになる。
それは既知の物理法則に従っていない。
あらゆる既知の物質よりも硬い。
ほとんど“完璧”と呼べる構造。
しかし計測機器は正常なデータを返さなかった。
安定した構造を一切検出できない。
ただそこにあるのは、奇妙なエネルギーの感覚。
科学者たちはそれを数値ではなく、言葉で表現するしかなかった。




