第4章 最初の突入
アレクセイ・セロフはテレビ画面から目を離さなかった。
朝からずっと中継は続いていた。
今、ライブ映像には軍事特派員が映っていた。北方大国の歴史上初めて、特殊部隊と共に緑のポータルへ突入する様子だ。
カメラは封鎖された通りを映している。
緑の門は兵士たちの目の前に立っていた。
隊長が短く命令を出す。
そして部隊は中へ入った。
一秒。
そして映像が変わった。
通信は即座に途切れた。
画面にはノイズが走る。
特派員の声は消えた。
スタジオに沈黙が落ちる。
「……信号ロストだ」
司会者が静かに言った。
三十分も経たないうちに、それは起こった。
ポータルが消えた。
まるで最初から存在していなかったかのように。
そして数秒後、同じ場所から部隊が出てきた。
生存。
全員無事。
カメラ付きで。
スタジオの記者たちは一斉に質問を浴びせたが、現場の兵士たちはそれを制御できないほど囲まれていた。
「中で何があった!?」
「何を見た!?」
「死傷者は!?」
軍事特派員は手を上げ、静止を求めた。
そして語り始めた。
アレクセイは瞬きをせずテレビを見続けていた。
映像は彼らのカメラ記録へ切り替わる。
最初──突入。
急激な転換。
そして静寂。
そこにあったのは、機械でも都市でもなかった。
地下迷宮だった。
広い石造りの通路。湿った壁。薄暗い光。まるで空間そのものが湿気を帯びて呼吸しているようだった。
「これは……洞窟か?」兵士の声。
「前進」隊長が短く命じる。
部隊は進む。
そしてすぐに最初の敵が現れた。
暗闇の中から姿を現したのは──
低い。
緑色。
人型だが歪んだ存在。
ゴブリン。
身長は1メートルほど。錆びた粗末な剣と原始的な武器を持っている。
「接触!」通信に鋭い声が響く。
戦闘が始まった。
短い一斉射撃。
最初の群れはそのまま消し飛んだ。
複雑な戦術はない。
抵抗もない。
まるで現代兵器との衝突に耐えられない存在のように。
部隊は前進を続ける。
速く。
機械的に。
数秒ごとに敵の群れが銃火の中で崩れ落ちる。
長期戦はない。
ただ進行と排除だけがあった。
数分後、彼らは大きな空間へ出た。
ダンジョンの中心。
ボス部屋。
そこには一体の存在がいた。
他より大きく。
より強い。
だがそれでも武装した部隊には及ばない。
戦闘は短かった。
あまりにも短すぎた。
銃火、命令、閃光──そして敵は崩れ落ちた。
静寂。
部隊は装備を設置し、センサーでデータを記録していく。
その時、誰も予想していなかったことが起きた。
ボスの体から、何かが落ちた。
球体。
緑色。
ポータルと同じ色。
兵士がそれを拾う。
その瞬間、すべてが変わった。
ダンジョンが消え始めた。
壁が崩れるのではない。空間そのものが“解除”されていくように溶けていく。
一瞬後、部隊は再び街路に立っていた。
突入したその場所だ。
ポータルは消えていた。
カメラは揺れている。
周囲の人々が叫ぶ。
記者たちが兵士に駆け寄る。
しかし画面にはすでに決定的な映像が映っていた。
軍人の手の中の緑のコア。
アレクセイはスマートフォンを手に取った。
素早く文字を打つ。
アレクセイ:
「見たか?」
ドミトリーからの返信はすぐに来た。
ドミトリー:
「ああ」
少し間。
そして続けて。
「これ、ゲームみたいだな」
「ダンジョン」
「敵はダメージで消える」
「ボスから緑の球が落ちた」




