第38章 すべてを変える動画
アレクセイは夜遅くに家へ戻った。アリーナとの散歩のあとだった。
彼はジャケットを椅子に投げ、ベッドに倒れ込み、その日初めて何もせずに過ごす時間を自分に許した。
「せめて少しは静かに…」
彼はつぶやき、スマートフォンを手に取った。
人気の動画サイトを開く。
フィードにはいつものように短い動画、騒がしいタイトル、派手なサムネイルが流れていく。
ほとんど興味もなくスクロールしていたが、ある動画に目が止まった。
鮮やかなサムネイル。
マントを着た人物、その周囲には炎。
タイトル:
「現実世界で偶然魔法を手に入れた…そして制御不能になった(真似するな)」
アレクセイは動画を再生した。自動翻訳がかかっている。
画面には25歳くらいの男が現れた。
落ち着いた顔、普通の服装、特に目立たない外見。
彼は自己紹介した。
「My name is Jason Carter…」
音声が自動で翻訳される。
「私の名前はジェイソン・カーターです。」
彼はカメラをまっすぐ見て言った。
「私はこの世界で魔法使いになった。そして今からそれを証明する。」
アレクセイはわずかに身を起こし、目を離さなかった。
男が手を上げると――その手のひらに一瞬で炎の球が現れた。
ジェイソンはそれを、あらかじめ置かれていた人形に投げつける。
閃光。
人形は瞬時に燃え上がった。
普通の火とは違う――速すぎる、明るすぎる燃え方だった。
動画は続く。
ジェイソンは軽く笑った。
「これだけじゃない。」
彼が手を振ると、目の前に炎の壁が立ち上がり、カメラを覆った。
一瞬映像が消え、パチパチと燃える音だけが響く。
そして――炎の爆発。
再び映像が映ると、彼は同じ場所に立っていた。
まるで何も起きなかったかのように、落ち着いたまま。
「分かったか?」
彼は言った。
「俺は炎を操れる。」
続けて両手を合わせる。
炎が指の間に集まり、圧縮され、形を変えていく。
数秒後、炎から一羽の鳥が生まれた。
輝く翼を持つ、炎の鳥。
それは空へ飛び上がり、円を描き、急降下して彼の背後の標的に突っ込んだ。
閃光。
ジェイソンは手を下ろした。
「俺は魔法使いになった。」
彼は静かに言った。
「そしてこれは始まりにすぎない。」
動画はそこで終わった。
アレクセイは動かずに座っていた。
そしてすぐにコメント欄を開く。
何百ものコメント。
「グラフィックはすごいけど編集だろ」
「これはAI確定」
「もし本物なら…終わりだな」
「ランク2のポータルで似たの見たことある…」
アレクセイはゆっくりスクロールしていく。
読み進めるほどに感じた。
冗談で書いている者もいる。
だが――
本気で“偽物じゃないかもしれない”と思っている者もいる。




