第37章 散歩
アレクセイは街に一人残った。
彼はアリーナにメッセージを送った。
二人は会って、ただ散歩する約束をした。
傭兵のことは抜きで。
ポータルのことも抜きで。
戦いの話もなしで。
最初の数分は、すべてが彼の望んだ通りだった。
二人は街を歩く。
会話は軽く、穏やかだった。
「学校のこと、覚えてる?」
アリーナが少し微笑みながら聞いた。
「あの頃はもっと簡単だったよね。」
アレクセイはうなずいた。
だが、会話は自然と流れていく。
過去ではなく――
今へと。
「今はどうなの?」
アリーナが聞いた。
「ポータルは?」
アレクセイは少し息をついた。
「うん。」
「ほぼ毎日だ。」
「ディマは?」
彼女の声が少し真剣になる。
アレクセイは視線をそらした。
「相変わらず突っ込んでいくよ。」
「それが…好きなんだ。」
沈黙。
「最近、あなたたちのことよく話題になってる」
アリーナが言った。
「傭兵とか、ヒーローとか…ポータルから人を救う人たち。」
アレクセイは小さく笑った。
「ヒーロー、ね…」
「違うと思う?」
彼は少し考えた。
「ただの仕事だよ。」
アリーナは首を振った。
「そうでもないよ。」
「誰かがやらなきゃいけないでしょ。」
アリーナは一瞬立ち止まり、前を見つめた。
まるで彼の話している世界を想像しようとするかのように。
「私にはポータルに入るなんて無理」
彼女は静かに言った。
「どうやってそんなことできるの?いつでも死ぬかもしれないのに。」
アレクセイは少し肩をすくめ、視線を外した。
「正直、最初は行くつもりなかった」
彼は落ち着いて答えた。
「ヒーローになりたいとか、そういうのでもなかった。」
「ただ最初は偶然で…そこから流れで。」
「仲間の役に立てるって分かって、そのまま一緒にいるようになった。」
アリーナは眉をひそめた。
「それでも…毎回危ないでしょ。」
彼は一瞬黙った。
「偶然だよ。」
「たまたまそこにいただけ。」
彼は魔法のことは言わなかった。
そしてアリーナはそれに気づいた。
「何か隠してるでしょ」
彼女は落ち着いて言った。
アレクセイは答えなかった。
沈黙が長くなる。
彼はただ肩をすくめた。
「俺はただ、チームの役に立ってるだけだ。」
それ以上は何も言わなかった。
二人は再び歩き出した。
アレクセイは一瞬言い返そうとしたが、言葉がすぐには出てこなかった。
「じゃあさ」
彼は確認するように言った。
「俺たちが行くの、反対ってこと?」
アリーナはすぐに首を振った。
「もちろん反対だよ。」
「普通に生きてほしい、
ポータルとか、ああいうの全部なしで…」
彼女は手で払うような仕草をした。
「でも分かるでしょ、ディマにもやめてって言ったけど」
彼女は続けた。
「全然聞かないの。」
アレクセイは少し彼女の方を向いた。
「もし俺にやめてって言ったら…やめるよ。」
数秒、沈黙が流れた。
アリーナは最初信じられないという顔をして、それから少し笑った。
怒りではなく、どこか半信半疑のような。
「そんなこと言ってもね…」
彼女は首を振った。
「どうせまた一緒に行くでしょ。」
アレクセイは何か言い返そうとしたが、強くは出なかった。
ただ息を吐いた。
「かもな…」
彼は正直に認めた。
「でも、ずっとじゃないかもしれない。」
アリーナは少しだけ表情を和らげ、視線を落とした。
「ほらね…」
彼女は静かに言った。
「みんなそう言うの。」




