第96話 「会長、夏休み中も連絡していいと言われる」
終業式の日。
ミレイは朝から少し落ち着かなかった。
今日が終われば、夏休みが始まる。
もちろん、生徒会の仕事で登校する日もある。
けれど、毎日黒瀬くんに会えるわけではない。
それが寂しい。
寂しいと、もう認めるしかなかった。
リコに言うと、彼女は満足そうに頷いた。
「会長、だいぶ素直になりましたね」
「そうかしら」
「前なら『生徒会協力者との接触頻度低下が業務効率に影響する』とか言ってました」
「言いそうね」
「言ってましたよ」
放課後、黒瀬くんが生徒会室に来た。
夏休み中の作業日を確認する。
彼はすぐに言った。
「その日は来られます」
嬉しかった。
黒瀬くんが、当然のように来ると言ってくれたことが。
けれど、その後。
黒瀬くんは少し緊張した顔で言った。
「ミレイ先輩」
名前で呼ばれるたび、まだ胸が跳ねる。
「何かしら」
彼は深呼吸した。
「夏休み中も、連絡していいですか」
その言葉に、ミレイは息を止めた。
連絡していいか。
それはつまり、夏休み中もつながっていたいと思ってくれているということだろうか。
そう受け取ってしまうのは、自分に都合がよすぎるだろうか。
でも、嬉しかった。
「もちろん。私も、黒瀬くんに連絡していい?」
黒瀬くんは少し驚いた後、真剣に頷いた。
「はい。通知、常時許可です」
ミレイは笑う。
「通知設定みたいね」
すると黒瀬くんが言った。
「実際、最優先通知です」
ミレイは固まった。
最優先。
自分からの連絡が、黒瀬くんにとって最優先。
顔が熱くなる。
黒瀬くんも、自分の言葉に気づいて真っ赤になっている。
いつもならリコがツッコむところだが、今はいない。
そのせいで、甘い沈黙がそのまま残ってしまう。
ミレイは小さく言う。
「ありがとう。私も、黒瀬くんからの連絡は……嬉しいわ」
黒瀬くんは完全に停止した。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
終業式。夏休み中の生徒会作業日を確認。黒瀬くんと連絡を取り合うことになった。
追記。
黒瀬くんに最優先通知と言われた。
さらに追記。
私も、黒瀬くんからの連絡は嬉しい。
翌日、リコが日誌を見て言う。
「会長、これもう夏休み前の告白準備号ですよ」
ミレイは赤くなった。
「準備号って何かしら」




