第97話 「夏休み初日、送るメッセージが決まらない」
夏休み初日。
アキラは朝七時に起きた。
本来なら、夏休み初日は昼まで寝る予定だった。
しかし今日は違った。
ミレイにメッセージを送っていいと言われている。
それだけで、朝からスマホが気になる。
(連絡許可は出た。だが初日から送るべきか? 早すぎるか? いや、許可が出た翌日に送らないと逆に不自然か?)
アキラはベッドの上で悩む。
候補一。
夏休み始まりましたね。
普通すぎる。
候補二。
長期ログアウト一日目です。
意味不明寄り。
候補三。
今日も暑いので気をつけてください。
無難だが、少し心配が強い。
候補四。
ミレイ先輩、おはようございます。
名前呼び込み。高火力。
アキラは一時間悩んだ。
姉のマドカが部屋に来る。
「何してんの?」
「夏休み初回メッセージの文面調整」
「恋する高校生って朝から忙しいね」
「恋と確定したわけでは」
マドカは無言でアキラのスマホを見る。
候補文面を見て、即座に言う。
「普通に『おはようございます。今日も暑いですね』でいいじゃん」
「普通が一番難しい」
「その台詞、何回目?」
結局、アキラは送る。
ミレイ先輩、おはようございます。今日も暑いので、体調に気をつけてください。
送った。
名前呼び入り。
送った瞬間、アキラはスマホを机に置いて部屋の隅まで下がった。
(送信後のスマホは爆発物に近い)
数分後、返信が来る。
おはよう、黒瀬くん。ありがとう。黒瀬くんも水分を取ってね。
アキラはスマホを見つめる。
おはよう。
夏休みなのに、ミレイから朝の挨拶が来た。
それだけで、学校が休みでも少しつながっている気がした。
アキラは返信する。
はい。水分補給クエスト、忘れずに実行します。
すぐに返事。
クエストなら、きっと達成してね。
アキラは布団に倒れた。
(夏休み初日から、供給が多い)
◆オチ
マドカが部屋を覗く。
「返信来た?」
アキラは天井を見たまま答える。
「水分補給クエストを受注した」
マドカは笑う。
「健康管理まで恋愛イベントになるんだね」




