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生徒会長はオタク男子を攻略できない  作者: naomikoryo


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第9話 「急に女子のエンカウント率が上がった」

コンタクト生活二日目。

アキラは異変に気づいていた。


女子と遭遇する回数が明らかに増えている。


廊下を歩けば、

「黒瀬くん、おはよう」

と言われる。


購買に並べば、

「黒瀬くん、何買うの?」

と聞かれる。


階段を上れば、

「黒瀬くん、ノート落としたよ」

と言われる。

ちなみにノートは落としていない。

相手のノートだった。


アキラは深刻に考える。


(これはエンカウント率上昇イベント。原因は不明。もしかしてコンタクトに呪いの効果があるのか?)


トオルは呆れる。


「違う。お前がイケメン化したからだ」


「イケメン化?」


「そう」


「僕が?」


「そう」


「それは何の比喩?」


「現実」


アキラは首を振る。


「現実はそんな雑なアップデートをしない」


「したんだよ。お前の顔面に」


昼休み、ユナがやってくる。

さらに別の女子も数人ついてくる。


「黒瀬くん、一緒に購買行かない?」

「放課後、時間ある?」

「連絡先交換しよ」


アキラは完全に固まる。


(複数同時イベント!? 選択肢は!? 選択肢が表示されない!)


トオルが横から小声で言う。


「普通に返事しろ」


アキラは震えながら答える。


「すみません、僕はまだ個別ルートを選択できる段階ではなく……」


女子たちは一瞬黙る。


ユナだけが爆笑する。


「黒瀬くん、ほんと面白い」


アキラはわからない。


なぜ笑われたのか。

なぜ女子が増えたのか。

なぜトオルがずっと頭を抱えているのか。


放課後、生徒会室に逃げ込むように向かう。

そこは最近のアキラにとって、少し落ち着く場所になっていた。


ミレイが顔を上げる。


「黒瀬くん、今日は少し疲れている?」


アキラは驚く。


「わかりますか」


「ええ。いつもより眼鏡を押し上げる動作が少ないから」


「今、眼鏡してません」


「そうだったわ」


ミレイは少し恥ずかしそうに笑う。

その笑顔を見て、アキラの肩の力が抜ける。


彼は今日の出来事を話す。


「なぜか女子のエンカウント率が上がっています」


ミレイの表情がわずかに変わる。


「……女子が?」


「はい。廊下でも購買でも階段でも。これは何かの前兆でしょうか」


ミレイは真剣に考え込む。


「廊下の混雑問題ね」


リコが横から即座に言う。


「違います」


ミレイはアキラに向き直る。


「黒瀬くんは、その……誰かと一緒に帰ったりするの?」


アキラは固まる。


(帰宅同行イベント!? これは質問の意図が読めない)


「基本的にはソロプレイです」


ミレイは少し安心したような顔をする。


「そう」


その表情を見て、アキラは不思議に思う。


(今、生徒会長の表情が少し柔らかくなった。なぜだろう)


帰り際、ミレイが言う。


「黒瀬くん、女子に囲まれて困ったら、生徒会室に来てもいいわ」


アキラは胸が温かくなる。


「避難所ですか」


「ええ。生徒会室は、困っている生徒のためにもあるから」


アキラは深く頷く。


「ありがとうございます。セーブポイントにします」


ミレイは嬉しそうに笑う。


「それは、少し光栄ね」


その笑顔を見た時、アキラは思う。


(生徒会室が落ち着くんじゃない。たぶん、生徒会長がいるから落ち着くんだ)


だが、その考えをすぐに打ち消す。


(いや待て。これはまだ恋愛判定ではない。安心できるNPCに懐いているだけかもしれない)



◆オチ


帰宅後、姉のマドカに相談する。


「女子のエンカウント率が上がった」


マドカは即答する。


「モテ期だね」


アキラは青ざめる。


「モテ期って実在するのか。都市伝説じゃなくて?」


マドカは真顔で言う。


「実在するよ。あんたの場合、本人確認ができてないだけ」

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