第85話 「期末テスト対策、今度は僕が教える番です」
期末テストが近づいてきた。
英語は相変わらず危険科目だが、前回よりは対策ができている。
一方で、ミレイが珍しく生徒会室で数学の問題集を見つめていた。
アキラは声をかける。
「ミレイ先輩、数学ですか?」
ミレイは少し困ったように笑う。
「ええ。苦手というほどではないのだけれど、この単元だけ少し引っかかっていて」
アキラは問題を見る。
数列。
アキラの得意分野だった。
(来た。支援返しイベント。前回英語を教わった恩を返すチャンス)
「よければ、僕が説明しましょうか」
言ってから、アキラは少し緊張した。
ミレイが目を丸くする。
「黒瀬くんが教えてくれるの?」
「はい。数列なら得意です」
リコが横から言う。
「お、今度は黒瀬先生ですね」
アキラは首を振る。
「先生職は責任が重いので、臨時チュートリアル担当でお願いします」
勉強会が始まる。
アキラは紙に数式を書く。
「ここはまず、規則性を見ます。数列は、イベントの伏線回収に似ています」
ミレイは真剣に聞く。
「伏線回収?」
「はい。最初の数個を見て、裏にある法則を見つけるんです」
ミレイは頷く。
「なるほど。物語みたいに考えればいいのね」
「そうです。初項が第一話、公差が毎話の変化です」
リコが遠くで言う。
「数学の説明なのに連載漫画みたいになってますね」
しかし、ミレイには意外と伝わった。
「わかりやすいわ」
アキラは少し嬉しくなる。
「本当ですか」
「ええ。黒瀬くんの説明、面白い」
面白い。
その言葉は、最初に出会った時にも言われた。
でも今は、少し違って聞こえる。
アキラは続けて説明する。
いつの間にか夢中になっていた。
好きなことを話す時のアキラは早口になるが、ミレイは置いていかれないように一生懸命聞いてくれる。
その姿が嬉しかった。
しばらくして、ミレイが問題を解き終える。
「できたわ」
「正解です」
ミレイの顔がぱっと明るくなる。
アキラはその笑顔を見て、胸が温かくなる。
(前に英語を教えてもらった時、白鳥先輩はこんな気持ちだったのかもしれない)
ミレイが言う。
「ありがとう、黒瀬くん。頼りになるわ」
アキラは静かにダメージを受けた。
「頼りになる」は、体育祭以降かなり強い言葉になっている。
◆オチ
帰宅後、アキラはトオルに言う。
「今日はミレイ先輩に数学を教えた」
トオルはにやにやする。
「お、家庭教師デート?」
「生徒会室学習支援だ」
「言い方だけ真面目にしても、顔が嬉しそうなんだよ」
アキラは慌てて顔を隠した。




