第77話 「放課後の買い出しはデートではないはず」
生徒会の備品が足りなくなった。
封筒。
クリップ。
付箋。
ホワイトボードマーカー。
いつもならリコが買い出しに行くところだったが、その日は用事があるらしい。
ミレイが言う。
「黒瀬くん、よかったら一緒に買い出しへ行ってくれる?」
アキラは固まる。
(一緒に買い出し。放課後。学校外。これはデート判定に近いが、名目は業務。つまり業務系デート風イベント)
リコがすぐに言う。
「放課後デートですね」
ミレイが赤くなる。
「違うわ。買い出しよ」
アキラも慌てる。
「はい。備品調達クエストです」
リコは笑う。
「言い換えただけでデート感消えてませんよ」
二人は駅前の文房具店へ向かう。
学校の外でミレイと並んで歩くのは、相合傘以来だった。
制服姿なのに、校内とは少し違って見える。
アキラは妙に緊張する。
(校外フィールドはイベント発生範囲が広い。警戒しろ)
文房具店では、ミレイが真剣に備品を選ぶ。
「付箋は何色が使いやすいかしら」
「用途別なら三色あると便利です。重要度で分類できます」
「黒瀬くん、整理が得意ね」
「推しグッズ管理で鍛えました」
「推しグッズは分類が必要なのね」
「はい。保管方法を誤ると後悔します」
ミレイは真剣に頷く。
会話はいつも通り少しずれているのに、アキラは楽しかった。
買い物を終えると、店の外に小さなクレープ屋が出ていた。
ミレイが少しだけ足を止める。
アキラはそれに気づく。
「食べたいんですか?」
ミレイは少し照れる。
「少しだけ。でも、買い出し中だし」
アキラは考える。
(ここは選択肢。買う、買わない、逃げる。正解は……)
「少し休憩しませんか。備品調達クエストの途中回復です」
ミレイは嬉しそうに笑う。
「そうね。途中回復ね」
二人でクレープを買う。
ミレイは苺クリーム。
アキラはチョコバナナ。
ベンチに座って食べる。
アキラはふと思う。
(これは、かなりデートに近いのでは)
その瞬間、ミレイが言う。
「黒瀬くんとこうしていると、普通の放課後も楽しいわね」
アキラはクレープを落としかける。
◆オチ
帰り道、ミレイが言う。
「今日はありがとう。買い出し、助かったわ」
アキラは真剣に答える。
「はい。デート……ではなく、調達任務として有意義でした」
ミレイが真っ赤になる。
アキラも真っ赤になる。
その場にいないはずのリコの声が、二人の脳内で響く。
「今、デートって言いましたね」




