第56話 「会長、黒瀬くんの点数で自分のことのように喜ぶ」
黒瀬くんが、英語で七十八点を取った。
ミレイはその答案用紙を見た瞬間、自分のテスト結果よりも嬉しくなった。
「すごいわ、黒瀬くん!」
気づけば声が弾んでいた。
黒瀬くんは少し驚いたようにして、それから照れた顔をした。
その顔を見て、ミレイはさらに嬉しくなる。
(黒瀬くんが頑張って、結果が出た。こんなに嬉しいのね)
リコが横で言う。
「会長、自分の満点より嬉しそうですね」
「そんなことは……」
言いかけて、ミレイは止まる。
本当に、そうかもしれない。
自分が良い点を取るのは、嬉しいけれど当たり前に近い。
でも黒瀬くんが苦手な英語を頑張って、点数を伸ばしたことは、特別に嬉しかった。
黒瀬くんが言う。
「白鳥先輩のおかげです」
ミレイは首を振る。
「私は少し手伝っただけよ。頑張ったのは黒瀬くんでしょう?」
これは本心だった。
黒瀬くんは、自分に自信がない。
でも、ちゃんと努力できる人だ。
そこを自分で認めてほしいと思った。
彼は少し黙ってから言う。
「白鳥先輩に教えてもらえて、本当によかったです。ありがとうございます」
その言葉が、胸にまっすぐ届いた。
ミレイは照れながら答える。
「どういたしまして」
それだけなのに、十分だった。
放課後の生徒会室。
夕日が窓から入り、机の上の答案用紙を薄く照らしていた。
ミレイはその光景を、なぜか忘れたくないと思った。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
黒瀬くん、英語七十八点。よく頑張った。
追記。
とても嬉しかった。
さらに追記。
次は八十点を目指せるかもしれない。
リコが読んで言う。
「会長、完全に彼氏の成績を見守る彼女です」
ミレイは真っ赤になる。
「生徒会長としてよ」
リコは即答する。
「その言い訳、もう赤点です」




