第45話 「弁当を忘れたら会長に救われた」
その日、アキラは弁当を忘れた。
朝、恋かどうか判定ノートを姉に見られ、動揺したせいだった。
昼休み、鞄を開けて弁当がないことに気づく。
(食料アイテム未所持。昼休みの生存戦略に失敗)
購買へ行こうとするが、限定パンはすでに売り切れ。
青春メロンパンDXも、焼きそばパンも、カツサンドも消えている。
残っていたのは、なぜか「恋の予感パン」だけだった。
購買部の田島さんが言う。
「黒瀬くん、これにしとく?」
アキラは警戒する。
「名前に不穏なフラグが立っています」
「おいしいよ。食べるとちょっと素直になるかもね」
「危険アイテムでは?」
そこへミレイが通りかかる。
「黒瀬くん、お昼まだなの?」
「はい。弁当を忘れました」
ミレイは少し考えてから、弁当箱を差し出す。
「よかったら、少し食べる?」
アキラは固まる。
(手作り弁当分岐!? これは明らかに高火力イベント!)
ミレイは慌てる。
「もちろん、無理にとは言わないわ。今日は少し多めに作ってしまって」
リコが背後から言う。
「会長、朝から黒瀬くんに渡す可能性を想定して多めに作ってましたよね」
ミレイが真っ赤になる。
「リコ」
アキラはますます固まる。
(僕に渡す可能性……? それはどういう想定? 生徒会防災備蓄?)
結局、生徒会室でミレイの弁当を少し分けてもらう。
卵焼き。
小さなハンバーグ。
きんぴら。
彩りのいい野菜。
アキラは一口食べて、目を見開く。
「おいしいです」
ミレイは嬉しそうに笑う。
「よかった」
その笑顔を見た瞬間、アキラは思う。
(この笑顔を見るためなら、弁当を忘れる価値がある……いや、それはだめだ。人として)
ミレイが聞く。
「黒瀬くんは、好きなおかずはある?」
アキラは考える。
「卵焼きです。甘いタイプが好きです」
ミレイは小さく頷く。
「覚えておくわ」
その言葉で、アキラは箸を落としかける。
(覚えておく……次回フラグ!?)
◆オチ
翌日、アキラは弁当を忘れないように玄関に置く。
姉のマドカが言う。
「今日は忘れないんだ?」
アキラは真顔で答える。
「意図的に忘れたらイベントの価値が下がる」
マドカは笑う。
「もうだいぶ恋愛ゲーム脳じゃなくて、恋愛してる人の発想だよ」




