第43話 「席替えでなぜか女子に囲まれる」
1年B組で席替えが行われた。
アキラは席替えを甘く見ていなかった。
(席替え。それは学園生活における環境変更イベント。隣席によって日常ルートが大きく変動する)
くじを引いた結果、アキラの席は窓際後方。
アニメなら主人公席に近い。
アキラは戦慄する。
(これは危険だ。主人公席はイベント吸引力が高い)
そして予感は的中した。
右隣は明るい女子。
前の席も女子。
斜め前は桜庭ユナ。
後ろはトオルだが、トオルは笑いをこらえている。
女子たちが気軽に話しかけてくる。
「黒瀬くん、ノート見せて」
「消しゴム貸して」
「ここの問題わかる?」
「今日、髪いい感じだね」
アキラは処理落ちする。
(周囲六マスがほぼ女子。これは陣形として強い)
トオルが後ろから小声で言う。
「モテ配置だな」
「配置に悪意がある」
「神の采配だろ」
昼休み、ユナが言う。
「黒瀬くん、生徒会長とは最近どうなの?」
アキラは飲んでいたお茶を吹きそうになる。
「どう、とは?」
「仲良いじゃん」
「生徒会協力関係です」
ユナはにやにやする。
「ふーん。じゃあ私が黒瀬くん誘っても問題ない?」
アキラは固まる。
(誘う? 何に? クエスト? 放課後? 人生?)
そこへ、廊下を通りかかったミレイが教室の中を見る。
アキラが女子に囲まれている。
ミレイの表情が一瞬止まる。
アキラはそれに気づく。
(今、生徒会長の顔が……曇った?)
放課後、生徒会室へ行くと、ミレイはいつも通りに見える。
しかし、いつもより少しだけ静かだった。
「席替え、あったのね」
「はい。なぜか女子エンカウント密度が上がりました」
ミレイは書類を揃えながら言う。
「楽しそうだったわ」
アキラは違和感を覚える。
(楽しそう? 僕はほぼパニック状態だったが)
「いえ、正直かなり混乱しています」
ミレイが少しだけこちらを見る。
「そうなの?」
「はい。生徒会室の方が落ち着きます」
ミレイの表情が柔らかくなる。
「そう」
アキラは、その変化に胸が温かくなる。
(なるほど。生徒会長が安心すると、僕も安心するらしい)
◆オチ
帰宅後、アキラは席替えの座席表を見て呟く。
「これは恋愛シミュレーションならイベント過密配置だ」
姉のマドカが覗いて言う。
「真ん中にあんたがいるハーレム陣形じゃん」
アキラは青ざめる。
「やめろ。ジャンルを勝手に変えるな」




