第35話 「姉、文化祭に襲来」
文化祭午後。
アキラは午前のミレイ来店イベントから、まだ完全には復帰していなかった。
(黒瀬くんの接客、好きよ)
言葉の破壊力が高すぎる。
接客が好き。
そういう意味なのはわかっている。
だが、脳内の一部が勝手に別解釈を始める。
(いや、違う。期待するな。これは文化祭補正。文化祭では言葉の糖度が上がるだけだ)
その時、教室の入り口から聞き慣れた声がした。
「アキラー! 来たよー!」
アキラは凍りつく。
姉、黒瀬マドカ襲来。
大学生の姉は、にこにこと手を振っている。
その隣には、なぜか母までいる。
「お母さんまで!?」
母は嬉しそうに言う。
「アキラの学校、見たかったのよ」
アキラは膝から崩れそうになる。
(身内イベント発生。逃走不可。公開羞恥刑)
マドカは執事服のアキラを見るなり、満面の笑みになる。
「うわ、似合ってる! やっぱり素材いいじゃん!」
母は涙ぐむ。
「アキラが接客してる……。昔は親戚に挨拶するだけでカーテンの裏に隠れてたのに」
トオルが爆笑する。
「黒瀬、カーテン裏属性あったのか」
「過去編を勝手に公開するな!」
マドカはさらに爆弾を落とす。
「この子ね、小さい頃は好きなアニメのヒロインと結婚するって言ってたの」
クラス中が笑う。
アキラは顔を覆う。
「それは幼少期限定イベントだ!」
そこへ、校内巡回中のミレイが再びやってくる。
最悪のタイミングだった。
マドカはミレイを見るなり、目を輝かせる。
「あ、もしかして白鳥先輩?」
アキラは青ざめる。
「姉さん、なぜ知っている」
「最近あんたの会話に白鳥先輩出現率高いから」
ミレイは少し赤くなる。
「黒瀬くんが、私の話を?」
アキラは脳内で緊急会議を始める。
(否定しろ。しかし否定しすぎると失礼。肯定すると自爆。選択肢が全部罠)
マドカは笑って言う。
「アキラがお世話になってます。この子、現実世界の操作が下手なので」
ミレイは真面目に頷く。
「いえ。黒瀬くんには、私の方こそ助けられています」
その言葉に、母が感動する。
「アキラ、お友達できたのね……」
「母さん、その反応はやめて」
◆オチ
マドカがミレイにこっそり言う。
「うちのアキラ、鈍いけど悪い子じゃないので、よかったら攻略してやってください」
ミレイは真っ赤になる。
「攻略……?」
アキラは叫ぶ。
「姉さん、身内がメインストーリーに干渉するな!」




