第36話 「会長、黒瀬家に認識される」
文化祭午後。
ミレイは巡回中に、黒瀬くんの家族と出会った。
姉のマドカさん。
お母様。
二人とも明るく、黒瀬くんのことをとても大切に思っているのが伝わってきた。
そして、黒瀬くんはとても慌てていた。
普段、彼は変わった言葉を使うけれど、どこか落ち着いている。
しかし家族の前では、完全に年相応の男の子だった。
それが少し新鮮で、可愛らしく見えた。
マドカさんは言った。
「うちのアキラ、鈍いけど悪い子じゃないので、よかったら攻略してやってください」
攻略。
ミレイはその言葉に固まった。
(攻略とは、つまり……両想いになるということ?)
以前リコが言っていた言葉が頭をよぎる。
両想い。
ミレイは顔が熱くなる。
黒瀬くんは全力で止めていた。
「姉さん、身内がメインストーリーに干渉するな!」
マドカさんは笑う。
「干渉しないと進まないでしょ、あんたの場合」
ミレイは思わず笑ってしまう。
確かに、黒瀬くんは自分の気持ちに気づくまで時間がかかりそうだ。
生徒会室に戻った後、リコに報告する。
「黒瀬くんのお姉さんに会ったわ」
リコは興味津々で聞く。
「どうでした?」
「黒瀬くんを攻略してほしいと言われたわ」
リコは机を叩いて笑う。
「身内公認じゃないですか」
「公認?」
「会長、外堀が埋まってきましたね」
「外堀……? 私は城なの?」
「恋愛城です」
ミレイは真剣に考える。
(恋愛城……落城するとどうなるのかしら)
放課後、黒瀬くんが謝りに来る。
「すみません。姉が変なことを言って」
ミレイは首を振る。
「楽しいお姉さんね」
「楽しいというより、イベント荒らしです」
「でも、黒瀬くんのことをよく見ている人だと思ったわ」
アキラは少し照れたように目をそらす。
その表情を見て、ミレイは自然に微笑んでしまう。
「黒瀬くんのこと、少し知れて嬉しかった」
アキラは完全に固まる。
ミレイも、自分で言ってから赤くなる。
◆オチ
リコが横から言う。
「会長、黒瀬家イベント攻略おめでとうございます」
ミレイは慌てる。
「攻略したわけではないわ」
アキラは真顔で言う。
「黒瀬家イベントは難易度が高いので、僕でも未攻略です」
リコが呆れる。
「自分の家族イベントくらい攻略してください」




