第30話 「会長、黒瀬くんらしさに弱い」
烏丸くんと黒瀬くんの執事勝負は、なぜか生徒会室で行われた。
烏丸くんは完璧だった。
姿勢も綺麗で、台詞も自然。
まるで本物の執事のようだった。
一方、黒瀬くんは緊張していた。
台詞にはクエストが混ざり、紅茶にはバフが付与され、接客というより冒険の受付だった。
普通に考えれば、烏丸くんの勝ちだ。
けれどミレイは、黒瀬くんの方を見てしまった。
不器用で、真面目で、自分の言葉で一生懸命やろうとしている。
その姿が、黒瀬くんらしかった。
そしてミレイは、その黒瀬くんらしさに弱い。
リコに言われる。
「会長、もう完全に黒瀬くん贔屓ですね」
ミレイは反論しようとする。
「違うわ。個性を評価したの」
「恋は個性評価から始まるんですよ」
「そうなの?」
「適当に言いました」
ミレイは少し怒る。
放課後、黒瀬くんと二人で文化祭の資料をまとめる。
ミレイは思い切って聞く。
「黒瀬くんは、どうしてそんなに一生懸命なの?」
アキラは少し考える。
「生徒会長が、頼りにしてくれるからです」
ミレイの胸が大きく跳ねる。
「私が?」
「はい。僕は自分に自信がないので。でも、生徒会長が頼ってくれると、少しだけ頑張れる気がします」
その言葉は、ミレイの胸にまっすぐ届いた。
いつも変なことばかり言う黒瀬くん。
けれど時々、驚くほど素直な言葉をくれる。
ミレイは小さく言う。
「私も、黒瀬くんがいてくれると頑張れるわ」
アキラが固まる。
「それは……相互バフですね」
ミレイは笑う。
「そうね。相互バフね」
意味は少し違うかもしれない。
でも、今はそれでいいと思った。
◆オチ
リコが戻ってきて、二人を見る。
「何の話してたんですか?」
ミレイは答える。
「相互バフの話よ」
リコは一瞬黙る。
「……もうそれ、付き合ってる人たちの会話じゃないですか?」
アキラとミレイは同時に赤くなる。
「違います」
リコはため息をつく。
「否定だけは息ぴったりですね」




