第3話 「生徒会室は上位クエスト受注場所」
アキラは生徒会室に呼ばれる。
内容は、新入生歓迎会で使うアンケート集計の手伝い。
だがアキラにとって、生徒会室に呼ばれるというだけで大事件だった。
(生徒会長からの呼び出し。これは通常ならメインストーリー進行イベント。だが油断するな。現実は選択肢が表示されないタイプの高難度ゲームだ)
生徒会室に入ると、ミレイがにこやかに迎えてくれる。
「来てくれてありがとう、黒瀬くん」
「はい。召喚に応じました」
ミレイは困ったように微笑む。
「召喚……? ごめんなさい、私、魔法は使えないの」
アキラは真顔で感動する。
(天然返しが強すぎる)
アンケートの内容は、新入生が入りたい部活や学校生活への希望を書くものだった。
アキラは黙々と集計するが、途中で妙な回答を発見する。
学校に地下迷宮があるか知りたいです。
アキラは震える。
「同士がいる……!」
ミレイは驚く。
「地下迷宮? この学校に地下はないと思うけれど」
アキラは眼鏡を押し上げる。
「生徒会長、それはまだ確認されていないだけです」
「確認……するべきかしら」
「いえ、危険です。序盤で地下に行くとだいたい強敵が出ます」
ミレイは真剣にメモを取る。
「地下は序盤では危険、と」
リコが横から言う。
「会長、メモしないでください。学校案内に載せませんよ」
その後も、アキラとミレイの会話は微妙に噛み合わない。
ミレイが、
「黒瀬くんは、どんな高校生活にしたいの?」
と聞く。
アキラは考え込む。
「平穏な日常回を希望します」
「日常回?」
「はい。水着回や修学旅行回はまだ早いので」
ミレイは真剣に言う。
「水泳の授業は夏にあるわ。修学旅行は2年生よ」
アキラは頷く。
「なるほど。公式スケジュール確認済み、と」
リコが頭を抱える。
「誰か翻訳アプリ持ってきて」
作業の途中、ミレイが紅茶を淹れてくれる。
アキラはカップを受け取る時、指が少し触れてしまう。
その瞬間、アキラの脳内は大混乱する。
(接触イベント!? いや待て、これは事故判定。好感度が上がるとは限らない。むしろ不審者ゲージが上がった可能性がある)
ミレイは何も気にしていない様子で、
「熱いから気をつけてね」
と言う。
アキラは紅茶を見つめる。
(やさしい。これは回復アイテム)
だが口に出してしまう。
「ありがとうございます。HPが回復します」
ミレイは嬉しそうに笑う。
「よかった。疲れていたのね」
アキラは言葉に詰まる。
普通なら笑われるところなのに、ミレイは自分の言葉を否定しない。
理解しているかは別として、真面目に受け止めてくれる。
そのことが、少しだけ嬉しかった。
作業が終わった後、ミレイは言う。
「黒瀬くんがいてくれて助かったわ。またお願いしてもいい?」
アキラは一瞬固まる。
(継続クエスト解放!?)
「もちろんです。僕でよければ」
ミレイは満足そうに頷く。
「ありがとう。頼りにしているわ」
頼りにしている。
その言葉が、アキラの胸の中で何度も反響する。
帰り道、トオルに報告すると、彼は言う。
「それ、完全に会長に気に入られてるだろ」
アキラは首を振る。
「違う。僕は便利なサポートキャラとして認識されただけだ」
「そのサポートキャラ、今めちゃくちゃ嬉しそうだけど?」
アキラは慌てて顔を隠す。
「違う。これは達成報酬の余韻」
◆オチ
翌日、アキラは生徒会室用に自分専用の筆記用具を持参する。
トオルが聞く。
「なんで羽ペン?」
アキラは真顔で答える。
「上位クエストには雰囲気が必要だ」




