第21話 「尊いと言われた後輩、翌日から挙動不審」
昨日、白鳥ミレイ生徒会長に言われた。
「私も、黒瀬くんは尊いと思うわ」
その言葉は、アキラの脳内に深く刻まれていた。
朝起きても思い出す。
歯を磨いても思い出す。
制服に着替えても思い出す。
推しアニメのオープニングを見ても、なぜかミレイの顔が浮かぶ。
アキラは鏡の前で真剣に呟く。
「これは……強力な状態異常」
姉のマドカが後ろから言う。
「恋だよ」
「違う。尊い返しによる精神デバフだ」
「恋だよ」
登校後、アキラはミレイと目を合わせられない。
生徒会室に行っても、書類を渡す時に手が震える。
ミレイが「黒瀬くん」と呼ぶだけで、アキラの姿勢が急に良くなる。
ミレイは心配する。
「黒瀬くん、体調が悪いの?」
アキラは首を振る。
「いえ。昨日の言葉の継続ダメージが残っているだけです」
「継続ダメージ……? 私、何か傷つけたかしら」
「逆です。回復魔法が強すぎて最大HPが足りません」
ミレイは真面目に考え込む。
「回復なのに、足りない……?」
リコが横で言う。
「会長、照れてるだけです」
アキラは即座に否定する。
「照れていません。処理落ちです」
「同じです」
その日、アキラは作業中に何度もミスをする。
プリントを三回数え直す。
ホチキスを逆向きに持つ。
なぜか空の封筒に深々と礼をする。
ミレイはますます心配する。
「黒瀬くん、今日は早く帰った方がいいわ」
アキラは真剣に答える。
「いえ、生徒会長の近くにいると状態異常が悪化する気もしますが、同時に回復もします」
ミレイは赤くなる。
「それは……どういう意味かしら」
アキラも赤くなる。
「僕にもわかりません」
リコが机に突っ伏す。
「この二人、自覚の手前で反復横跳びしてる」
◆オチ
帰宅後、アキラはノートに書く。
白鳥先輩からの『尊い』は威力が高い。対策必須。
翌日、トオルに見られる。
「対策って何する気だよ」
アキラは真顔で答える。
「心に防具を装備する」




