第20話:「会長、黒瀬くんを推し返す」
黒瀬くんに「尊い」と言われた。
意味はよくわからなかったが、リコによれば最大級の褒め言葉らしい。
ミレイは悩む。
(黒瀬くんは、私を尊いと思ってくれている……?)
嬉しい。
しかし、どう返せばいいのかわからない。
リコに聞く。
「尊いと言われたら、何と返せばいいの?」
リコはにやにやする。
「黒瀬くんも尊い、でいいんじゃないですか」
「それでいいの?」
「たぶん黒瀬くん、倒れます」
ミレイは真剣に心配する。
「倒れるのは困るわ」
「比喩です」
昼休み、ミレイは図書館で「尊い」の意味を調べようとする。
しかし説明を読めば読むほど混乱する。
好き。
ありがたい。
眩しい。
しんどい。
守りたい。
供給。
(供給……? 黒瀬くんは私から何かを補給しているのかしら)
放課後、アキラが生徒会室に来る。
ミレイは意を決して言う。
「黒瀬くん」
「はい」
「私も、黒瀬くんは尊いと思うわ」
アキラの動きが止まる。
完全停止だった。
持っていた書類が一枚、ひらりと落ちる。
「……僕が?」
「ええ」
「尊い?」
「ええ」
「生徒会長から?」
「ええ」
アキラは椅子に座る。
「すみません。処理が追いつきません」
ミレイは慌てる。
「大丈夫? リコ、黒瀬くんが倒れそうよ」
リコは笑いをこらえながら言う。
「会長、見事に倒しましたね」
ミレイはアキラを心配して近づく。
「黒瀬くん、無理しないで」
その距離の近さに、アキラはさらに赤くなる。
「追撃が強いです」
「追撃?」
「いえ、回復しているはずなのに追加ダメージが」
ミレイは意味がわからないが、アキラが赤くなっているのを見て、自分まで赤くなる。
リコが言う。
「この部屋、恋愛偏差値だけ小学生ですね」
◆オチ
その夜、ミレイは日誌に書く。
黒瀬くんに尊いと言ったら、黒瀬くんが固まった。
少し考えて追記する。
尊いは、攻撃力が高い言葉らしい。
リコが翌日読んで言う。
「会長、だいたい合ってます」




