第140話 「会長、友情と恋の間で少し笑う」
烏丸くんが、黒瀬くんのフレンド本登録になった。
本人たちがそう言っているので、たぶんそうなのだろう。
ミレイは掲示物作業をしながら、その様子を見ていた。
黒瀬くんと烏丸くん。
最初は、まったく噛み合わない二人だった。
烏丸くんは黒瀬くんをライバル視し、黒瀬くんはそれをほとんど理解できていなかった。
挑発は空振りし、宣戦布告はクエスト告知になり、勝負はいつの間にか書類整理になった。
けれど、今は少し違う。
烏丸くんは黒瀬語を覚え始めた。
黒瀬くんは烏丸くんの拗ね方を理解し始めた。
二人の間に、妙な友情が生まれつつある。
掲示物を貼る二人を見ながら、ミレイは笑ってしまった。
「限定クエストか?」
烏丸くんが言う。
黒瀬くんが真剣に褒める。
「烏丸先輩、完璧です」
烏丸くんは嬉しそうなのに、嬉しくないふりをする。
本当にわかりやすい。
リコが言う。
「会長、嬉しそうですね」
「ええ。何だか、楽しいわ」
「好きな人と、そのライバルが仲良くなってるんですよ?」
ミレイは少し赤くなる。
「好きな人……」
まだ、その言葉に反応してしまう。
でも、否定はしなかった。
リコが目を細める。
「お、否定しませんでしたね」
ミレイは掲示物を押さえながら言う。
「……否定する理由が、少しずつ減ってきたの」
言ってから、自分でも驚いた。
リコも少し驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。
「会長、かなり進歩しましたね」
ミレイは黒瀬くんの方を見る。
彼は烏丸くんに手を差し出していた。
「フレンド本登録でお願いします」
烏丸くんがその手を握る。
「仕方ない。登録されてやろう」
その光景は、少しおかしくて、少し温かかった。
けれど最後に、烏丸くんが言った。
「ただし、白鳥さんをめぐるライバル関係は継続だ」
ミレイは真っ赤になる。
自分をめぐる、という言い方はやめてほしい。
黒瀬くんも真面目に言う。
「それは別枠なんですね」
別枠にしないでほしい。
リコが笑う。
「少年漫画みたいですね」
ミレイは小さく言った。
「私、勝負の賞品ではないのだけれど」
すると、黒瀬くんと烏丸くんが同時に謝った。
「すみません」
「すまない」
その息の合い方が少し可笑しくて、ミレイは笑ってしまった。
二学期が始まった。
夏休みで進んだ気持ちは、まだ完全に言葉にはなっていない。
でも、黒瀬くんとの距離は確かに近づいた。
そして、その周りの人たちとの関係も変わり始めている。
恋だけではなく、友情も、少しずつ育っている。
それが何だか、とても青春らしいと思った。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
烏丸くん、黒瀬くんのフレンド本登録となる。ライバル関係は継続らしい。
追記。
私は賞品ではない。
さらに追記。
でも、二人が仲良くなったのは少し嬉しい。
リコが読んで言った。
「会長、二学期は恋愛パートと友情パートが同時進行ですね」
ミレイは微笑んだ。
「忙しくなりそうね」
リコはにやりと笑った。
「生徒会より忙しいですよ、たぶん」




