第139話 「烏丸先輩、本登録される」
烏丸のフレンド仮登録は、思ったより早く進展した。
きっかけは、生徒会の掲示物作業だった。
二学期最初の掲示物は量が多い。
生徒総会のお知らせ。
部活動連絡。
図書委員からの案内。
購買部の新商品ポスター。
謎の「青春高校俳句大会」の募集。
アキラとミレイだけでは手が足りない。
そこへ烏丸が来た。
「手伝おう」
ミレイが微笑む。
「ありがとう、烏丸くん」
烏丸は少し得意げになる。
アキラは素直に言った。
「助かります、烏丸先輩」
烏丸が少し驚いた顔をした。
「君が素直に礼を言うと、妙に調子が狂うな」
「では、クエスト協力ありがとうございます」
「それはそれで調子が狂う」
三人で掲示物を貼る。
アキラは高さを測り、ミレイは位置を確認し、烏丸は綺麗に貼る。
烏丸は意外と細かい作業が得意だった。
角がぴったり揃っている。
アキラは感心する。
「烏丸先輩、掲示物貼りスキルが高いですね」
「当然だ。美しく貼るのは基本だ」
「美意識バフがかかっています」
烏丸は少し考えて言った。
「今の使い方は合っているか?」
アキラは驚いた。
「合っています」
烏丸は少し満足そうだった。
作業中、購買部の新商品ポスターを貼ることになった。
タイトルは、
青春クリームパン 二学期限定味
アキラが反応する。
「限定味……」
ミレイが笑う。
「黒瀬くん、気になるのね」
烏丸がポスターを見て言う。
「これは限定クエストか?」
アキラは固まる。
「烏丸先輩、完璧です」
「完璧?」
「黒瀬語の使い方が自然でした」
烏丸は嬉しそうにしたが、すぐに咳払いした。
「べ、別に嬉しくはない」
リコが通りかかって言う。
「烏丸先輩、もう本登録でいいんじゃないですか?」
烏丸が反応する。
「本登録?」
アキラは少し考えた。
「確かに。黒瀬語の基礎理解、協力クエスト参加、夏休み報告完了。条件は満たしています」
烏丸は緊張した顔になる。
「そ、そうか」
アキラは手を差し出した。
「烏丸先輩、フレンド本登録でお願いします」
烏丸はその手を見た。
一瞬迷う。
それから、握った。
「仕方ない。登録されてやろう」
リコが小声で言う。
「めちゃくちゃ嬉しそう」
ミレイは優しく笑っている。
アキラは握手しながら思った。
(夏休み前には想像できなかった展開だ)
◆オチ
握手の直後、烏丸が言った。
「ただし、白鳥さんをめぐるライバル関係は継続だ」
アキラは真顔で答えた。
「それは別枠なんですね」
烏丸は頷く。
「友情と勝負は両立する」
リコが言った。
「少年漫画みたいになってきた」
ミレイは少し赤くなって呟いた。
「私、勝負の賞品ではないのだけれど」
アキラと烏丸は同時に謝った。




