第138話 「会長、三人で帰るのも悪くないと思う」
黒瀬くんと一緒に帰ることになった。
夏休みを経て、そういう時間が前より自然になった気がする。
けれど今日は、烏丸くんもいた。
「僕も帰る方向が同じだ」
そう言った烏丸くんは、明らかに少し無理をしているように見えた。
でも、ミレイは何も言わなかった。
烏丸くんも、一緒にいたいのだと思ったから。
三人で歩く帰り道は、不思議だった。
黒瀬くんと二人で歩く時とは違う。
少し賑やかで、少しぎこちなくて、会話があちこちに飛ぶ。
けれど、悪くなかった。
烏丸くんが生徒総会の話をする。
黒瀬くんがそれを大型会議イベントと言い換える。
烏丸くんが、全校規模のクエストと理解する。
ミレイは思わず笑った。
「二人とも、会話が通じてきたわね」
烏丸くんは否定する。
けれど、少し嬉しそうだった。
黒瀬くんも、烏丸くんの反応を面白がっているように見える。
二人は不思議な関係だ。
恋のライバル。
のはずなのに。
どこか、友達になりかけている。
ミレイはそれを見て、少し安心した。
烏丸くんは夏休みの話をたくさんしてくれた。
夏期講習。
家の用事。
ピアノの発表会。
親戚の集まり。
偶然を装った花火大会付近の散歩。
最後の話は少し怪しかった。
「偶然を装った散歩?」
ミレイが聞くと、烏丸くんは慌てた。
「いや、偶然だ」
黒瀬くんが言う。
「偶然補助システムですね」
烏丸くんは否定しなかった。
だいぶ黒瀬語に慣れている。
帰り道の途中、烏丸くんはどんどん話す。
きっと、本当に誰かに聞いてほしかったのだ。
ミレイは思った。
烏丸くんは、いつも堂々としている。
けれど、本当は寂しがりなのかもしれない。
そして、黒瀬くんは不器用だけれど、人のそういう部分を真っ直ぐ突く。
「かまってほしい時はそう言ってください」
黒瀬くんがそう言った時、ミレイは少し焦った。
でも、烏丸くんは真っ赤になって否定しただけだった。
怒っているようで、どこか嬉しそうにも見えた。
その様子に、ミレイは笑ってしまった。
三人でいると、二人きりの時のような甘さはない。
でも、これはこれで大切な時間かもしれない。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
黒瀬くん、烏丸くんと三人で途中まで帰宅。烏丸くんの夏休み報告を聞いた。
追記。
烏丸くんは、かまってほしかった可能性あり。
さらに追記。
三人で帰るのも楽しかった。
リコが翌日読んで言った。
「会長、恋愛ルートに友情ルートが追加されてますね」
ミレイは少し笑った。
「それも悪くないわ」
リコは頷いた。
「ただし、烏丸先輩は面倒です」
ミレイは否定できなかった。




