第136話 「会長、黒瀬語が広がる現場を見る」
烏丸くんが、黒瀬くんの言葉を学び始めた。
最初は驚いた。
烏丸くんは黒瀬くんをライバル視している。
だから、黒瀬語を理解しようとするのも、ライバル研究の一環なのかもしれない。
けれど、見ているうちにミレイはわかった。
烏丸くんは、たぶん黒瀬くんと話したいのだ。
ちゃんと。
今までのように一方的に挑発して、黒瀬くんが理解しないまま空回りするのではなく。
黒瀬くんの言葉を少しでも理解して、同じ場所で会話したいのだ。
そう思うと、少し微笑ましかった。
「クエストとは何だ」
烏丸くんが真剣に聞く。
黒瀬くんが真剣に答える。
「目的のある行動です」
二人とも真面目なのに、会話だけがどこかおかしい。
リコはずっと笑いをこらえている。
烏丸くんはメモまで取っている。
「デイリークエスト、バフ、フラグ、処理落ち……」
ミレイはその単語を見て、少し懐かしくなった。
自分も最初は何もわからなかった。
フラグを体育祭の旗だと思ったし、クエストを申請書が必要な活動だと思った。
今は、かなり理解できるようになっている。
それは、黒瀬くんと一緒にいる時間が増えたからだ。
烏丸くんが言う。
「白鳥さんの言葉は黒瀬くんに強力なバフを与える」
ミレイは顔が熱くなる。
黒瀬くんも真っ赤になっている。
リコは嬉しそうだ。
「烏丸先輩、理解度高いですね」
烏丸くんはさらに言う。
「つまり、君にとって白鳥さんは最高難度ヒロインで、同時に強力なバフ発生源ということか」
ミレイの思考が止まった。
最高難度ヒロイン。
黒瀬くんが以前、そんなことを言った気がする。
あの時も恥ずかしかった。
けれど今は、その言葉の意味が少し違って聞こえる。
黒瀬くんにとって、自分は特別な存在なのかもしれない。
そう思ってしまう。
黒瀬くんは顔を覆っている。
「よりによってそこを理解しないでください」
烏丸くんは堂々としている。
「重要事項だ」
ミレイは少し笑ってしまった。
烏丸くんは不器用だ。
黒瀬くんも不器用だ。
けれど、その不器用さが少しずつ噛み合っている。
生徒会室の空気が、前より賑やかになった気がした。
◆オチ
その日の生徒会日誌。
烏丸くん、黒瀬語を学習開始。理解度は高いが、余計なところまで理解する。
追記。
黒瀬語が生徒会室内に広がりつつある。
さらに追記。
私もかなり理解している。
リコが読んで言った。
「会長、黒瀬語検定二級くらいありますよ」
ミレイは少し考えた。
「一級は難しいのかしら」
リコは笑った。
「一級はたぶん、黒瀬くんと付き合わないと取れません」
ミレイは日誌を閉じて真っ赤になった。




