第135話 「烏丸先輩、黒瀬語を学び始める」
烏丸が変だった。
いや、以前から変なところはあった。
だが、今回は方向性が違う。
生徒会室で書類整理をしていると、烏丸が隣に立った。
「黒瀬くん」
「はい」
「君がよく使う言葉について、少し確認したい」
アキラは瞬きした。
「僕の言葉ですか」
「そうだ。会話中に意味がわからないことが多い。ライバルを理解するには、言語の理解が必要だ」
リコが小声で言う。
「友達になりたいだけですね」
烏丸は聞こえないふりをした。
ミレイは微笑んでいる。
アキラは少し考える。
「つまり、黒瀬語講座ですか?」
「その名称は不本意だが、内容はそれだ」
アキラは真剣に頷いた。
「では第一回、黒瀬語基礎講座を始めます」
リコが拍手する。
「ついに正式講座になった」
烏丸は椅子に座り、腕を組む。
「まず、君の言うクエストとは何だ」
「目的のある行動です」
「ならば、生徒会の書類整理もクエストか」
「はい。デイリークエストです」
烏丸はメモを取る。
「なるほど。日常的な任務をデイリークエストと呼ぶ」
ミレイが少し嬉しそうに言う。
「烏丸くん、真面目ね」
烏丸は少し照れる。
「白鳥さんにそう言われると、まあ」
リコがにやにやする。
次に、烏丸が聞く。
「バフとは?」
「能力や気分が上がることです」
「白鳥さんに褒められた時、君はバフがかかると言うな」
アキラは固まる。
「それは具体例として高精度ですが、今ここで言う必要は」
ミレイが赤くなる。
リコが笑う。
烏丸は真剣にメモする。
「白鳥さんの言葉は黒瀬くんに強力なバフを与える」
「メモしないでください」
「重要事項だ」
「重要ですが、公開情報ではありません」
講座は続く。
フラグ。
イベント。
ラスボス。
尊い。
処理落ち。
烏丸は意外なほど真剣に聞く。
そして最後に言った。
「つまり、君にとって白鳥さんは最高難度ヒロインで、同時に強力なバフ発生源ということか」
アキラは完全に止まった。
ミレイも完全に止まった。
リコが机を叩いて笑った。
「烏丸先輩、理解度高すぎます」
烏丸は満足げに頷いた。
「僕は学習能力が高い」
アキラは顔を覆った。
「よりによってそこを理解しないでください」
◆オチ
講座終了後、烏丸が言った。
「黒瀬くん、今日の講座は有意義だった。経験値が入った気がする」
アキラは驚いた。
「烏丸先輩、今、黒瀬語を使いましたね」
烏丸は固まった。
リコが即座に言う。
「感染しましたね」
ミレイは笑顔で言った。
「烏丸くんも、少し黒瀬くんに染まってきたのね」
烏丸は真っ赤になった。
「染まってない!」




