第133話 「烏丸先輩、夏休みの偶然を自白する」
烏丸が新学期早々、生徒会室に乗り込んできた翌日。
アキラはなぜか、烏丸に呼び出された。
場所は中庭。
昼休みの中庭は生徒が多く、わざわざここを指定する意味がわからない。
(これはライバルイベントなのか、友情イベントなのか、まだジャンルが判明していない)
烏丸はベンチの前に立っていた。
いつも通り髪型は完璧。
ただし、表情は少し気まずそうだった。
「黒瀬くん」
「はい」
「昨日のことだが」
「存在確認イベントですね」
「その言い方をやめたまえ」
烏丸は咳払いする。
「僕は、夏休み中に君たちを追いかけていたわけではない」
「はい」
「偶然だ」
「はい」
「ただし、少しだけ、行き先を予測したことはある」
アキラは首を傾げた。
「それは偶然の範囲に入りますか?」
烏丸は目を逸らした。
「偶然を補助しただけだ」
アキラは真剣に頷く。
「偶然補助システム」
「妙な名前をつけるな」
烏丸は少し黙った後、言った。
「花火大会の日、君たちが一緒にいるのを見た」
アキラの心臓が跳ねた。
「見ていたんですか」
「ああ。楽しそうだった」
烏丸の声は、少しだけ拗ねていた。
「白鳥さんが楽しそうなのは、もちろんよかった。だが……」
そこで烏丸は言葉に詰まる。
アキラは待った。
烏丸は顔を逸らしながら言った。
「君も楽しそうだった」
「僕が?」
「そうだ。君は普段、妙な言葉ばかり使って、何を考えているかわかりにくい。だが、あの日はわかりやすかった」
アキラは戸惑う。
「僕はそんなにわかりやすかったですか」
「かなり」
烏丸に言われると、なぜか重い。
烏丸は続ける。
「それで、少し……置いていかれた気がした」
アキラは驚いた。
烏丸はミレイを気にしている。
それはわかっていた。
でも、今の言い方は少し違った。
アキラとミレイが進んでいることに対する焦りだけではない。
自分だけ輪の外にいるような、そんな拗ね方だった。
「烏丸先輩も、誘われたかったんですか?」
アキラは素直に聞いた。
烏丸は大きく動揺した。
「そ、そんなわけでは!」
「違うんですか」
「違う……わけではないが!」
アキラは理解した。
「なるほど。誘われたかったんですね」
烏丸は真っ赤になった。
「君は時々、妙に真っ直ぐ刺してくるな!」
「ミレイ先輩にもよく言われます」
「それは褒めてない!」
アキラは少し考えてから言った。
「次に何かある時は、烏丸先輩も誘いますか?」
烏丸は固まった。
「……僕を?」
「はい。フレンド仮登録中なので」
烏丸はしばらく黙る。
それから、わずかに口元を緩めた。
「仮登録から、本登録に進むかは、今後の君の対応次第だ」
アキラは頷いた。
「審査が続くんですね」
「そうだ」
でも烏丸は、明らかに少し嬉しそうだった。
◆オチ
昼休みの終わり。
トオルが二人を見つけた。
「何してんの?」
アキラは答えた。
「烏丸先輩のフレンド審査です」
トオルは烏丸を見る。
烏丸は腕を組んで言った。
「まだ仮登録だ」
トオルは笑った。
「めんどくさい先輩だな」
烏丸は叫んだ。
「めんどくさくない!」
アキラは真顔で言った。
「いえ、少しめんどくさいです」
烏丸は二重に傷ついた。




