第129話 「海辺の休憩、ミレイ先輩が隣に来る」
海で遊ぶという行為は、思った以上に体力を使った。
ビーチボール。
水辺での移動。
砂浜の歩行。
女子たちのテンションへの対応。
アキラはパラソルの下で休んでいた。
(海イベント、継続ダメージが大きい。日光、砂、コミュニケーション。三重攻撃)
トオルは他の男子と飲み物を買いに行った。
ユナたちは少し離れたところで写真を撮っている。
リコは日陰で涼しそうにしている。
そして、ミレイがこちらへ歩いてきた。
アキラは思わず姿勢を正す。
「ミレイ先輩」
「隣、いいかしら」
アキラは一瞬で脳内会議を開催する。
(隣。隣に座る。海辺。パラソル下。水着姿のミレイ先輩。これは高密度イベント)
「もちろんです」
ミレイはアキラの隣に座った。
近い。
花火大会の土手ほどではない。
でも、海辺での距離感はまた違った破壊力がある。
しばらく、波の音だけが聞こえる。
ミレイが言った。
「今日は、来て驚いた?」
アキラは正直に答えた。
「はい。かなり」
「ごめんなさい。偶然みたいに言ったけれど……実は、黒瀬くんが来ることを知っていたの」
アキラは少しだけ目を見開いた。
ミレイは続ける。
「あなたが海に行くって聞いて、少し気になってしまって。リコに相談したら、一緒に行こうって」
ミレイの頬は赤かった。
でも、目をそらさなかった。
アキラは言葉を失った。
ミレイが、気にしてくれた。
自分が海に行くことを。
女子もいるかもしれない海に行くことを。
それが、どういう意味なのか。
アキラにも、もうわかり始めていた。
「迷惑だった?」
ミレイが小さく聞いた。
アキラはすぐに首を振った。
「迷惑じゃないです」
これは、すぐに言えた。
「むしろ……来てくれて嬉しかったです」
言えた。
花火大会の時より、少しだけ自然に。
ミレイの表情が柔らかくなる。
「本当?」
「はい。海フィールドの難易度が下がりました」
ミレイは小さく笑った。
「それはよかったわ」
アキラは少し迷ってから言った。
「僕も、もしミレイ先輩が男子もいる海に行くって聞いたら、かなり気になると思います」
言ってから、顔が熱くなった。
これは、かなり踏み込んだ。
ミレイも赤くなる。
でも、嬉しそうだった。
「そうなの?」
「はい。たぶん、落ち着きません」
ミレイは少しうつむいて、でも笑った。
「私も、落ち着かなかったの」
その一言で、アキラの胸がいっぱいになった。
◆オチ
そこへトオルが飲み物を持って戻ってきた。
二人の空気を見て、足を止める。
「……俺、戻るタイミング間違えた?」
アキラは真顔で答えた。
「水分補給タイミングとしては正しい」
トオルは笑った。
「恋愛タイミングとしては最悪だったな」
ミレイは顔を赤くして麦茶を受け取った。




