第128話 「会長、ユナに試される」
ユナさんは、明るくて鋭い。
それは前からわかっていた。
けれど海では、その鋭さがさらに増している気がした。
「会長、せっかくだし一緒に遊びません?」
断る理由はなかった。
むしろ、黒瀬くんと同じ場所にいられるなら嬉しい。
けれど、ユナさんは楽しそうに言った。
「じゃあ、黒瀬くんと会長は別チームね」
その時点で、何かを察した。
ユナさんは、完全に面白がっている。
ビーチボールが始まる。
黒瀬くんは、こちらを見ないようにしているようで、でも時々見ている。
それがわかる。
ミレイも、つい黒瀬くんを見てしまう。
海の光の中で見る彼は、いつもと違う。
ラッシュガード姿で、少し戸惑いながらも、トオルくんたちに混ざっている。
以前の黒瀬くんなら、きっとこういう場所には来なかったのだろう。
でも今、彼はここにいる。
そして、自分もここに来てしまった。
(私、かなり黒瀬くんを追いかけているわ)
そう思って、顔が熱くなる。
試合中、足元の砂で少しバランスを崩した。
すぐにリコが支えてくれる。
「会長、砂浜でもプール事件再演しないでください」
プール事件。
その単語だけで、ミレイは真っ赤になる。
黒瀬くんも真っ赤だった。
ユナさんが目を輝かせる。
「プール事件って何ですか?」
リコが言いかける。
ミレイと黒瀬くんは同時に止めた。
「言わなくていいわ!」
「言わなくていいです!」
声が重なる。
その瞬間、ユナさんがにやりと笑った。
「息ぴったりですね」
ミレイは何も言えない。
休憩中、ユナさんがミレイの隣に来た。
「会長って、黒瀬くんのこと好きですよね?」
ミレイは麦茶を吹きそうになった。
「な、何を」
「違います?」
ユナさんは意地悪というより、楽しそうだった。
でも、目はちゃんと本気だった。
ミレイはごまかそうとする。
「黒瀬くんは、生徒会を手伝ってくれている大切な後輩で」
「それ、いつものやつですね」
「いつもの?」
「会長の言い訳って、すごく丁寧なんですけど、長いんですよ」
ミレイは言葉に詰まる。
ユナさんは海の方を見ながら言った。
「黒瀬くん、面白いし、見た目もいいし、最近ちょっと人気あるんですよ」
ミレイの胸がざわつく。
「そうね」
「でも、会長が来た瞬間、黒瀬くんの顔、全然違いました」
ミレイは驚いてユナを見る。
「違った?」
「はい。完全に嬉しそうでした」
ミレイの胸が、ふわっと温かくなる。
ユナさんは笑った。
「だから、会長もちゃんと頑張った方がいいですよ」
ミレイは少しだけ考えた。
そして、小さく頷いた。
「……頑張るわ」
ユナさんは満足そうに笑った。
◆オチ
その後、リコが戻ってきて言った。
「会長、ユナちゃんに何か言われました?」
ミレイは少し赤くなりながら答えた。
「頑張った方がいいと言われたわ」
リコは頷いた。
「正論ですね」
「リコまで」
「私も前から言ってます」
ミレイは海を見ながら小さく呟いた。
「今日は、少し頑張るわ」




