第123話 「海イベント前日、アキラは水着という装備に悩む」
海へ行く前日。
アキラはまた装備選択画面の前に立っていた。
前回の花火大会では、姉のマドカが服を選んでくれた。
今回は水着である。
正直、アキラには判断基準がない。
水着とは、海やプールで着るもの。
それ以上の情報を持っていない。
クローゼットの奥から、数年前に買った水着を取り出す。
黒い。
シンプル。
何の面白みもない。
アキラとしては十分だった。
マドカが覗きに来る。
「海の準備?」
「はい。水属性フィールド用装備を確認しています」
「その黒い水着、地味だね」
「水着に派手さは必要なのか?」
「まあ清潔感あればいいけど」
「また清潔感ステータス」
マドカはタオルや日焼け止めを鞄に入れながら言う。
「日焼け止め持っていきな」
「僕は日光耐性が低いから重要ですね」
「あと、会長に変な心配かけないように」
アキラは手を止めた。
「なぜミレイ先輩が出る」
「言ったんでしょ? 海行くって」
「はい」
「たぶん気にしてるよ」
アキラは少し考える。
ミレイからの返信は普通だった。
でも、少しだけいつもと違った気がした。
(ミレイ先輩、気にしていたのか? いや、気にする理由は……)
女子がいるから。
そこまで考えて、アキラは固まった。
もしかして、ミレイは自分が女子と海に行くことを気にしたのか。
いや、そんな都合のいい解釈をしていいのか。
でも、もし逆だったら。
ミレイがクラスの男子たちと海に行くと言ったら。
アキラはどう感じるだろう。
胸の奥が、すぐにざわついた。
(なるほど。これは、かなり落ち着かない)
アキラはスマホを開く。
ミレイに何か送ろうと思った。
明日の海、クラス行事みたいなものなので。
言い訳っぽい。
女子もいるらしいですが、僕はトオルの救援枠です。
さらに言い訳っぽい。
ミレイ先輩に変な心配をかけたくなくて。
重い。
結局、送れなかった。
(明日帰ったら、ちゃんと報告しよう)
そう決めた。
しかし、アキラは知らない。
明日、報告どころではない事態が起きることを。
◆オチ
夜、トオルからメッセージが来た。
明日、ユナたちめっちゃ楽しみにしてるぞ。
アキラは返信した。
僕は何を期待されている?
トオル。
面白さと顔。
アキラはスマホを伏せた。
「評価項目が雑すぎる」




