第12話:「会長、パンを半分こしただけで動揺する」
ミレイは昨日のことを思い出していた。
黒瀬くんとパンを半分こした。
ただそれだけ。
ただそれだけなのに、妙に落ち着かない。
(パンを分け合っただけよ。生徒会活動の一環。購買調査。そう、購買調査よ)
だがリコは容赦ない。
「会長、昨日からパンの袋を見つめすぎです」
「購買の包装改善点を確認しているの」
「包装紙に黒瀬くんの名前は書いてありませんよ」
ミレイは黙る。
昼休み、購買部のおばちゃん田島さんに呼び止められる。
「会長、昨日は黒瀬くんと仲良くパン食べてたねえ」
ミレイは赤くなる。
「仲良くというか、購買の安全性確認を」
「青春メロンパンDX、恋愛成分多めだったかね」
「恋愛成分?」
田島さんはにやりと笑う。
「半分こはね、昔から青春の基本調味料だよ」
ミレイは真剣にメモしそうになる。
(半分こは青春の基本調味料……?)
そこへアキラが来る。
「生徒会長、昨日のパンの件ですが」
ミレイの心臓が跳ねる。
「な、何かしら」
「クリーム噴射角度から考えて、次回は開封時に注意が必要です」
ミレイは一瞬止まる。
(そうね。黒瀬くんはそういう子だったわ)
けれど、その真面目さに少し笑ってしまう。
ミレイは言う。
「また一緒に調査しましょう」
アキラは嬉しそうに頷く。
「はい。共同クエストですね」
リコが横でつぶやく。
「デートの言い換えが下手」
◆オチ
その日の生徒会日誌。
購買パンの半分こは、生徒間交流に有効。
リコが赤ペンで追記する。
ただし会長の心拍数が上がる。




