第11話:「購買パン争奪戦は恋愛イベントではない」
コンタクトと整えた髪型のせいで、アキラは購買へ行くだけでも女子に囲まれるようになっていた。
この日の目的は、限定三十個の青春メロンパンDX。
アキラにとっては、恋愛よりも重要な任務だった。
(限定パンは一期一会。ここで逃せば次回入荷は未定。つまり今この瞬間、僕は戦場にいる)
しかし購買に向かう途中で、女子たちに声をかけられる。
「黒瀬くん、一緒に並ぼうよ」
「何買うの?」
「おすすめ教えて?」
アキラは困惑する。
(なぜ購買列がパーティ募集掲示板になっているんだ)
そこへミレイが現れる。
「黒瀬くん、購買の混雑調査に協力してもらえるかしら」
アキラは救われた顔になる。
「生徒会長、これは救援イベントですね」
ミレイはきょとんとする。
「救援? 購買で遭難していたの?」
「精神的には」
ミレイはアキラを連れて購買へ向かうが、周囲からは完全に「生徒会長が黒瀬くんを独占している」と見られる。
ユナが遠くから言う。
「あれ、会長が黒瀬くん連れてった?」
ミレイは平静を装うが、内心では焦る。
アキラは青春メロンパンDXを無事購入。
だがミレイがじっとパンを見ていることに気づき、半分差し出す。
「生徒会長も食べますか?」
ミレイは少し驚く。
「いいの?」
「はい。共同戦利品です」
ミレイは嬉しそうに受け取る。
ただし、パンを割った瞬間、中のクリームが勢いよく飛び出して、アキラの頬につく。
ミレイはハンカチで拭こうとする。
アキラは固まる。
(至近距離イベント!? パンから始まるルートなんて聞いたことがない)
◆オチ
ミレイが真面目に言う。
「黒瀬くん、購買パンは危険ね」
アキラも真剣に頷く。
「はい。青春高校の青春は、クリーム弾を搭載しています」




