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生徒会長はオタク男子を攻略できない  作者: naomikoryo


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112/150

第112話 「会長、ついに花火大会に誘われる」

その朝、ミレイは生徒会室に少し早く来ていた。


理由は自分でもわかっていた。


黒瀬くんが来るかもしれない。


そして、もしかしたら、花火大会の話をしてくれるかもしれない。


親戚の予定はなくなった。


花火大会には行ける。


けれど、自分から言う勇気はまだ出ていなかった。


(もし黒瀬くんが誘おうとしてくれているなら、ちゃんと答えたい)


そう思いながら、机の上に掲示物を並べる。


でも、作業はまったく進まない。


紙の位置を整えているだけで、十分経っていた。


廊下から足音が聞こえる。


ドアが開く。


黒瀬くんが入ってきた。


「お、おはようございます、ミレイ先輩」


いつもより声が硬い。


ミレイの胸も高鳴る。


「おはよう、黒瀬くん」


二人で向かい合う。


静かな生徒会室。


リコはいない。


窓の外では蝉が鳴いている。


黒瀬くんはしばらく落ち着かない様子だった。


手元の紙を揃えたり、ペンを持ったり置いたり、何度も息を整えている。


(もしかして、本当に……)


ミレイは待った。


黒瀬くんが頑張って言おうとしているのがわかったから。


やがて、彼がこちらを見た。


「ミレイ先輩」


「何かしら」


「明日の花火大会なんですが」


来た。


心臓が大きく鳴る。


「ええ」


「その……予定がなければ」


黒瀬くんは一度言葉を止めた。


でも、逃げなかった。


「僕と一緒に、行ってくれませんか」


言われた。


黒瀬くんに。


花火大会に。


一緒に行こうと。


ミレイは嬉しさで言葉がすぐに出なかった。


(誘ってくれた)


本当に、誘ってくれた。


顔が熱い。


でも、今はちゃんと答えなければならない。


「……はい」


黒瀬くんが固まる。


「はい?」


ミレイは少し笑いそうになる。


けれど、自分もかなり緊張していた。


「予定、空いたの。だから……私でよければ、一緒に行きたいわ」


言えた。


今度は、自分も逃げなかった。


黒瀬くんは完全に動きを止めていた。


まるで、ゲームの読み込み中みたいだった。


「黒瀬くん?」


「あ、はい。ありがとうございます。同行申請、承認されました」


同行申請。


黒瀬くんらしすぎて、ミレイは思わず笑った。


「申請だったの?」


彼は真剣に言った。


「心の中では、かなり重要な申請でした」


その言葉に、ミレイはまた固まる。


重要。


自分を誘うことが、黒瀬くんにとって重要だった。


嬉しい。


恥ずかしい。


胸がいっぱいになる。


その時、ドアが開いた。


リコが入ってきた。


「おはようございまーす……あ、成立しました?」


ミレイは慌てる。


「何がかしら」


リコはにっこりした。


「花火大会です。会長、顔が打ち上がってます」


ミレイは両手で頬を押さえた。


たしかに、熱い。



◆オチ


その日の個人メモ。


黒瀬くんに花火大会へ誘われた。行くことになった。


追記。


嬉しい。とても。


さらに追記。


同行申請、承認。


夜、リコに見せると笑われた。


「会長、黒瀬語が日記に侵食してます」


ミレイは少し考えて言った。


「でも、なんだか気に入ってしまったの」


リコは肩をすくめた。


「もうだいぶ攻略されてますね」

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