第94話 メインシステム、地蔵モードを起動します。
「んまい!! うんまい!!」
「うまいのはわかるが、凄い食べっぷりだなぁ。」
「センベイ君にも負けないくらいでヤンスなあ!」
フォー・ナイン改めウィンダムとヘイフゥの修行タイムは終わり、晩飯の時間となった。ヤツは食事の時間になった途端にがっつき始めたのだ。修行タイム終了後はグッタリとして倒れ込んでいたんだが、急によみがえったように動き始めて食べることに全力を尽くし始めたのだ。記憶が全部戻ったわけではないのに、食べることは本能的に身体が憶えているらしい。
「もしかして早食いする技も伝授されちゃったりしてる?」
「ハハハ、そのような技はないよ。私は食事の作法は知っていても、効率よく早く食べる方法なんて知らないからね。」
ヘイフゥ……ではなく、今は仮面を外してレンファさんに戻っている。流石に仮面を付けたままだと食事は出来ない。食事の時と寝るときは外しているらしい。俺としてはなんか変な感じがする。なんか場面によって二人の人間が入れ替わっている様にも感じるのだ。だから脳内がとても混乱する! 今がヘイフゥで、今はレンファさんでって、対応の仕方も変わるからこんがらがる時があるのだ。
「でも、キツネさんの正体が女の人だとおもわなかったな♪ なんか全然別人みたいになっちゃうんだもん。」
「仮面の有無で私自身も気分を切り替えているのよ。仮面を付けている時は養父になりきっているから完全に男の人になっているのと同じ。流派内でもちゃんとした役割を持っているから、こうしていた方が便利なのよ。仕事と生活は切り離して考えるという風にね。」
あれは仕事モードとプライベートモードの切り替えでもあったのね……。確かに職場と家では別人みたいな人がいるという話は聞いたことがあるが、レンファさんもそういう質の人だとは思わなかった。
あくまで切っ掛けは梁山泊は基本的に女人禁制だからというのもあったからなんだが、この人が切っ掛けでその風潮も変わったのかもしれない。今の剣覇は宗家パイロンの実の娘が務めていることだしな。というか、そもそも初代刀覇に当たる人物が女性だったのだから、原点に戻りつつあると考えても良いのかも?
「良いなぁ! 憧れるなぁ! 自分もそうなりたいなぁ!」
「お前と、この姐さんじゃ、キャラが違いすぎるだろ!」
「私も使い分けるもん! 人間モードとタヌキモードで!」
人間モードとタヌキモード? 収容所に来たときの姿はやっぱりこの娘の術だったようだ。確かに見た目は完全に騙せているので相当な実力なんだと思うが、レンファさんみたいに使い分けるとなると……? 見た目とは対照的にやってることや性格自体は今のタヌキモードと大して変わらないような気がするんだが? 何かこう、人格まで変わるくらいの差別化は必要なんじゃないだろうか?
「お前じゃ精々、|タヌキモードと地蔵モード《※スーパーマ〇オ3》しか出来んだろ。」
「なんでお地蔵さんなの! おかしいよ!」
「お前はいっつも追っ手から逃げるときに、馬鹿の一つ覚えみたいに多用してるだろうが! 結局、余計に不自然で目を引くだけだから、すぐにバレる所まで込みだ。」
「お地蔵さんに化けるのはかくれんぼの時でも重宝する秘密兵器なんだよ! 実用性は子供の時から実証されてるんだからね?」
「それが通じるのはお前の故郷の極東の国だけだろうが!」
レンファさんに憧れるキョウナとそれに対してツッコミを入れるイツキ。しかし、地蔵とはなんだ? 聞いたことのない単語だ。それはそうとして、あのキョウナって娘は極東の出身なんだな。見た目がなんか珍しい感じがするのはそのためなんだろう。なんか色々、服装とか魔法とか他では見かけない感じがする理由がハッキリした。
「まあまあ、イツキ、いじめるのはそれぐらいにしておいてやれよ。俺はその娘に食材の件で色々助けられたんだからな。植物を自由に操れるのは便利なんだなと思ったよ。」
「え? ああ、食べ物は持っていくよりもこうした方が荷物少なくて済むから。みんなはお肉がいいっていつも文句言うけど!」
「野菜とかあった方が色々バリエーションが増えるのになぁ? 肉だけで差別化する方が色々としんどいんだぞ、お前ら! レシピとか考えるのむずかしいんだぞ?」
「俺達コボルトは肉だけで良いんだよ!」
うーん、偏食気味だな、コイツらは。まあ、そもそも犬とかオオカミみたいな見た目してるから、人間とは体質的に違うところがあるんだろう。とはいえ、タニシは割となんでも食べてた様な気がするし、今日のメニューも普通に食べている。というか、あの太いセンベイとか言うヤツも凄い勢いで食ってたから、イツキとその他二名が偏食なだけなのかもしれない。
「それにしても、勇者さんって、お料理上手なんですね? それも勇者になるための条件に入ってるんですか?」
「これは勇者になってからって言うより、梁山泊の嗜みみたいなもんです!」
「えぇ……? それはあなたに限った話じゃないかしら……。」
単純に料理について褒めてもらえたのは嬉しい。しかし、その実態は……長年下っ端として修行してたから色々雑用やってただけなんだよなぁ……。まあ、一応梁山泊の嗜み、ということにしておいた。レンファさんに何か突っ込まれたが、笑ってごまかしておこう。ワハハ……。




