第90話 ファイナル・エクスキュージョン、スタンバイ!
「ここは通さない。通りたいなら、俺を倒してからにしろ。」
フォー・ナインは武器を構えながら、俺とヘイフゥ、オードリーの間に割って入るような形で立ち塞がっている。意地でもこの橋には立ち入らせない、という明確な意思が背中を通じて伝わってくるほどだった。何故か一人称まで変化している。さっきは素朴な田舎の青年風だったが、今は戦士、覚悟を持った”男”を感じさせた。
「お退きなさい! 貴方のような愚図にはようなはないのですわ。退かなければまとめて惨殺して差し上げますわよ!!」
「退かない。オードリー・ヒートバーンズ、お前だけは絶対に俺が倒してみせる!!」
オードリーはボロボロになった身体でじりじりと橋の近くまでにじり寄ってきていた。それを通すまいとフォー・ナインは武器の切っ先を相手に向け牽制している。それを見ていて俺はある事に気が付いた。フォー・ナインが持っている武器、特に切っ先の部分、水晶の杭のような部分が青白い光を放っている! あれは一体……?
「むうう! その武器はやはりデーモン・コア! やはり貴方は魔王の手先、邪悪なる者の眷属なのですわね! ワタクシが思っていた通りですわ!!」
オードリーもフォー・ナインの武器の輝きに気付いたのか、まるでデーモン・コアのようだと評した。確かにあの輝きは闇の力に似ているが、色その物が違う。本物の魔王やエルといったように本人の気質によって色調のイメージは全く異なるが、フォー・ナインのそれは全くそれらとは似て非なる物のように思えた。
「俺が魔族なものか! 俺はれっきとした異形狩りだ! 中でも最高位と恐れられるエクスキューショナー1stの一人なんだ!!」
「は? 何をおっしゃっているのかしら? 聞いたことありませんわ、そんな役職。やはり貴方は気でも狂っておいでなんでしょうね!」
フォー・ナインの口から聞き慣れない単語が多数飛び出てきた。イレギュラー・ハンター? エクスキューショナーって何? しかもファーストやらファーイーストなんだか、理解が追い付かない。一体、アイツは何者なんだ? 誰も知らない文化圏からやってきたのではないかというくらいにぶっ飛んだ話の内容だった。ただ聞いただけでは、アイツ自身の頭がおかしいのだと判定されるレベルだろう。
「お前のような異形は生かしておくわけにはいかない! 世界の破滅を食い止めるためにお前をこの世から抹殺してみせる!!」
「きぃぃっ! それはワタクシの台詞でしてよ! 貴方が成敗するのではなく、ワタクシが成敗、粛正を行うのです!」
先に動いたのはオードリーだった。体中の棘をフォー・ナインに向け、ありとあらゆる方向から襲わせたのだ。このままではヤツが穴だらけ、毒に身体を蝕まれて死んでしまうと思ったのも束の間、棘は一つもヤツの身体に掠りもしなかった! 何も動いていない……と最初は思ったが、微妙に足下だけがわずかに動いているのが確認できた。アイツはフットワーク、足捌きだけであの無数の槍を回避しているのだ!
「何故? なぜ!? あたらないぃぃっ!!??」
「これが回避パターンNo.3、幻影の陽炎だ。お前の動きはすでに見切った。みんなが戦っている様子を見て全て行動パターンの解析は完了している。全ての攻撃に対策も施した。後に待つのはお前の”死”だけだ!」
「馬鹿なことをいうなぁぁっ!!」
オードリーは完全に理性をなくしたかのように激しい攻撃を繰り返すだけだった。しかしそれをフォー・ナインは物ともせず、涼しい顔で見つめながら攻撃を躱しているようだった。アレがヤツの言う回避の技なのだろうか? 何という俊敏さなのだろう。ただ動きを見切ったと言うにはあまりにも完璧過ぎる動きだ。何か未来が見えているというのが前提でもない限りは不可能な異質な動きと言えた。
「そろそろ終わりにしよう。言い残すことはないか?」
「それはワタクシの台詞よぉぉぉっ!!!」
「ファイナル・エクスキュージョン、スタンバイ!」
(コォォォォォッ!!!!!!)
フォー・ナインはとどめの一撃を加える決心をしたようだ。謎のかけ声と共に何か聞いたことのない、それでいて何か異質な化け物がうなり声の様なけたたましい音があの謎の武器から発せられた! 同時に輝きも目映いレベルにまで増し、ただ事ではない雰囲気が周囲に漂ってさえいた! 何か世界が破滅してしまいそうな雰囲気が……。
「死んでおしまいなさぃぃぃっ!!!!!!!!」
「ターゲット・ロックオン! ゲット・レディ!!!」
(ズンッ!!!!)
フォー・ナインに襲いかかるオードリー。それを待ち構えていたように、フォー・ナインがあの武器の切っ先を向ける! 言うまでもなく、オードリーはそれを避ける事すら出来ずに串刺しとなった! これで決着が付いたか……と思った瞬間、彼らの間に凄まじい閃光が炸裂したのだった!
「スーパー・エクスキュージョン!!!!!!!!!!!!」
(ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
この瞬間、耳が壊れたかと思った。耳の中にあるという、膜が破れたかと思うくらいに凄まじい破裂音だった。こんな物を食らってはオードリーは生きてはいないだろう。徐々に閃光が収まりつつある中で見たのは何かの破片が徐々に粉々になって吹き飛んでいく様だった。いくら何でも……コイツは強力すぎる!




