第74話 素手の殴り合い、喧嘩上等!
「素手の殴り合いか。こんなシンプルな喧嘩は久しぶりだぜ。」
「素手同士……なのか? 明らかに第二の必殺武器がまだ残ってるのに?」
互いの武器が壊れ、徒手空拳での戦いを続行する羽目になった。普通ならここで止めても良いはずだが、ブレンダンはやる気満々である。どっちかが死ぬまでは決して戦いを止めるつもりはないのだろう。今まで数多くの戦いを生き延びてきたヤツらしいやり方だと言える。止めるには意識を失わせるか、あの義手を破壊しないといけないのかもしれない。
「第二の武器だと? 冗談じゃねえ。これはあくまで右腕だ。第二の武器なんてもんは別に存在してるんだよ!」
「そんなこと言われても、俺は知らないから! 爪はともかく、杭打ち機が付いてるのは武器な証拠じゃん?」
「これは隠し武器の範疇だ。メインの武器じゃねえから主体的に使う物じゃねえよ。」
それもこれも武器とは見なさない判定ですか? いまいちブレンダンの基準がよくわからない! 義手自体は”ただの腕”だと言うし、それに付属した杭打ち機は”隠し”武器だからとか言うし……。なんなら、アンタのガチムチボディ自体も”武器”判定してやってもいいんだぞ? 俺の貧弱ボデーに比べれば、凶悪殺人兵器扱いでいいと思うんです?
「お前も人のことを言えるのか? 大体なんだ? その義手の伸縮機構は? 使った瞬間の破裂音はどう考えても”爆薬”を使ったとしか思えん! 魔術のせいで埋もれた技術、”爆薬”の技術を何処で知って手に入れた?」
「は? ば、バクヤク? そんな技術は仕込んだ覚えはないぞ? これは機械カラクリというよりもナマモノに近い代物なんで、技術的な物は仕込んでません!」
「しらばっくれやがって!!」
爆薬? 何を言い出すんだ? 爆薬と言えば、鉱山とかで岩盤を一気に砕いたり、鉄製の弾丸を飛ばす兵器に使われている、アレか? 俺の国では普通に使われてはいたが、この国では確かに見かけない技術だな? 魔法に敵わんから廃れていたのかもしれない。とはいえそんな物仕込んでたら俺まで爆発に巻き込まれるじゃないか! そんな危険なモノを仕込めるかっつーの!
「まあいい。お前を倒してから、その義手を工房の連中に引き渡せば狂喜乱舞するだろうな。お前の首は俺がもらい受けるが、腕にも利用価値があるのがわかったな!」
「頭だけじゃなくて、腕までもぎ取るつもりかよ!」
早速俺の腕をもぎ取ろうと猛然とブレンダンは襲いかかってきた! 鉤爪が口を開け掴み引きちぎろうとせんと縦横無尽に振るわれてくる。俺は捕まるまいと必死に避けまくった。それはヤツが持っていた剣と同じ、真正面から受け止めようものならあっさりと無慈悲に粉砕されてしまうのがオチだからだ!
「ハッハ! 今度は更に逃げ腰一辺倒じゃねえか! お前の流派は素手の技もあるんだろう? そいつを俺に見せて見ろ!!」
「無茶言うな! 徒手空拳は専門外なんだよ! 使えるのは素人相手にしか通じない護身術程度の技だけだ!」
素手、徒手空拳で戦う術は貴ジイから手解きしてもらっているが、まだ鍛錬や実戦経験が足りなすぎるせいで護身術程度の腕前でしかない。魔術師達と戦う時は重宝したが、奴らは俺以下の武術経験だったおかげで通じただけである。本格的に本職の格闘術を使う相手には手も足も出ない。
剣があってようやくまともに戦える程度なのだ。素手同士でもその有様なのだから、殺人凶器な義手を付けた相手とまともにやり合えるわけがないのだ。伸びる義手のギミックにしたって、もうタネがバレているんだ。隠し武器扱いとはいえ二度も同じ手は通じない!
「そうか! 使わねえんだな? だったらもう終わりにしてやるぜ! 勝つことを諦めたバカとやり合うのは死ぬほどつまらねえからな!!」
(ガチンッ!!!)
「な……!?」
(ビシャッ!!)
「うわあっ!?」
ブレンダンは鉤爪を大きく開き後ろへ後退させたかと思うと、爪の根元辺りのカバーが開いて筒の様な物が露出した。そのギミックに驚いていたら、目の前が真っ暗になった! 目に何かを吹き付けられたのだ! 目がしみる! これでは目が開けられない。前を見ることすら出来なくなってしまった!
「何を……したんだ?」
「闇抑制のコーティング剤を吹き付けてやったのさ! 本来の目的とは違う使い方だが、間抜けの目潰しくらいには使えると思ったんでな。」
「なんでお前がこんな事を……?」
「卑怯と思うなら、そう思ってくれても構わん! こんな汚いマネをしたのは逃げ腰になった間抜けを早々に刈り取ってやる為だ! もうお前と真剣勝負をする価値はなくなった。俺を失望させたヤツは万死に値する!」
俺があまりにも逃げ腰なせいで愛想を尽かされてしまったらしい。即ち、俺はもう用済みと判断されてしまったわけだ。視界を奪って楽に処理して終わらせるという寸法か? しかし、何か引っ掛かるような感じはした。あれだけ真剣勝負というかフェアな戦い方を望んでいた相手が今更こんな事を……?




