第71話 ネック・クラッシュ
「あぶない!!」
(ドガッ!!!)
「うぐおっ!!??」
誰かがブレンダンに体当たりをして、俺の首が落とされるのを阻止した。体当たりの衝撃で首から剣が外れ、そのまま地面に落下するだけで終わった。身動きが出来るようになったので受け身を取ることは出来たが、痛いのには変わりない。でも、助かったのだ。助けてくれた事に感謝しよう。
「なっ!? お、お前は!?」
「どこのどいつだ! 俺の邪魔をしやがったのは!!」
「ろあ? ヨカッタ。タスカッタ!」
最初は状況的にタンブルが助けてくれたのだと思っていた。しかし、助けてくれたのは黒い毛の獣人ではなく、囚人服を来た男だった! そう、あの記憶喪失の男……俺がフォー・ナインという仮名を授けた男が助けに来てくれたのだ。
「お前、喋れるところまで回復したのか!」
「ろあ、コノママ、ヤラレル、オモッタ。ダカラ、タスケニキタ!」
「一対一の勝負を邪魔してくれやがって! どこの馬の骨とも知れないヤツに!」
喋れるようになった。何故か片言でぎこちないしゃべり方ではあるが、返答どころか反応すらしなかった時とは違い明らかに表情も変化している。なにか嬉しそうな顔をしている。邪魔をされたブレンダンとは対照的に……。助けられたのはいいが、やってはいけない事をしでかしたのには変わりない。
「なんだ、テメエ? まさか噂の謎の武器を持って彷徨っていた野郎か? 俺の邪魔をするとは大した根性じゃねえか? わかってんだろうな? それが何を意味しているのかを?」
「待て、ブレンダン! そいつは録に記憶が戻ってないんだ! まずは俺を倒してからにしてくれ。それからでもいいだろう? それまでにはそいつも本調子に戻ってるかもしれないし……。」
「大層な武器を持ってやがる。まるで俺の狂乱の鈎爪みたいじゃないか? むしろ俺のよりも高度な技術で作られてるんじゃ? それをどこで手に入れた?」
「う、う……ワカラナイ。オモイダセナイ! ああ……!?」
持っている、例の謎の武器について問われ、急に頭を抱えて呻き始めた。やはり何かが邪魔をして思い出せないようになっているのかも知れない。牢の中でもたまに頭を抱えて苦しんでいる時があった。思い出そうとすると頭に痛みが走るのかもしれない……。
「この通りだ。勘弁してやってくれ。こいつは記憶を失うようなショックを頭に受けたことがあるのかもしれない。今はそっとしてやってくれないか?」
「ケッ! 病み上がりの廃人かよ。こんなんじゃまともに俺とはやり合えそうにないな。面白い武器を持ってやがるから、以外と楽しめると思ったんだが。だが、次に邪魔をすれば問答無用で殺すからな? 覚えておけ!!」
頭を抱えてうめいているフォー・ナインをドンッと突き飛ばして端の方に追いやった。乱暴な措置ではあったが今はそれだけで許しておいてやる、ということなのだろう。止めの瞬間を邪魔されたのが余程、頭に来ているのだと言える。
「あんな形で処刑技を邪魔されたのは初めてだ。今までしくじった事のない技に傷が付いちまったぜ。文字通り必殺の技だったのによ!」
「俺の技も破られたんだし、おあいこってことで……、」
「何がおあいこだ! 俺のは余所から邪魔されたんだよ! ノーカンだ!」
宥めようとしたら怒られた。お互いにとっておきの”必殺”技を阻止されたのは同じだが、破られた経緯があまりにも違う。相手の自力で破られたか、外から妨害を受けて失敗したかの違い。それを一緒くたにされたら堪ったもんじゃないな? とっさに出た言葉だったとはいえ、ちょっと反省しないといけない。
「まあいい。あのまま決まっていれば、確実に俺の勝ちだった。あっけなさすぎる。それじゃつまらんからな。それだけは感謝してやる。まだまだ楽しみたいしな。」
「まだまだご満足いただけてないと?」
「当然だ! もっと俺を楽しませて見せろよ!」
ブレンダンの激しい攻撃が再び始まった! しかも怒りに任せているのか、勢いが今までよりも一段と激しい。少しだけ洗脳状態の時の傾向に近くなった。本人もそれを気にすることもなく、フェイントとかの技巧のない当たり障りのない攻撃だけを繰り出してきている。あくまで怒りが収まるまでのクールダウンの意味を兼ねているのかもしれない。
「どうした? いつまでも俺の攻撃を受け流すだけか? たまにはお前の方から仕掛けて来いよ!」
「仕掛けるタイミングが掴めないんだってば!」
タイミングが見えない。攻撃が激しすぎるせいで受け流すだけで精一杯。少しだけでも挟めればいいのだが、半端な攻撃なら、間違いなく攻撃ごと潰されて終わりになる。でも、狙うなら今しかないのではとも思う。相手も単純な攻撃しかしてこない今だからこそ……、
「お前の底力を見せてみろ!!」
底力……か。今一度あの技を試してみるチャンスかもしれない。しかし、二度も同じ手が通じるのか? でも、あの時は相手だって闘争本能だけで戦っていたようなもの。記憶としては残っていないかもしれない。別人みたいになっていたと思うしか……。




